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新しい人よ眼ざめよ



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新しい人よ眼ざめよの評価: 4.10/5点 レビュー 20件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

新しい人は目ざめたのか?

数ある大江健三郎の作品の中でも、面白いのか面白くないのかよくわからない作品の一つのように思う。ブレイクの高踏的な引用と障害児のトンチンカンな(と思える)セリフとなかば自嘲的な語り手による三つ巴のアンチクライマクス。暴力や死(の予感)といったものがテーマにあるようだが、ブレイクの詩と物語との対応の屈折さが、その屈折度合いがかなり強い。

大江健三郎は創作の手法について意識的な作家だが、この作品はかなり実験的なものだと思う。『個人的な体験』への批判を受けてなのかわからないが、本作辺りからアンチクライマクスの手法を確立していくように思うが、この作品の実験的な性質からか読み終わったというような感覚に乏しい。あるいはこの作品は(近代)小説ではないのかもしれない。

その文体は『レインツリーを聴く女たち』と同様に、時に冗長かつ緩慢かつ説明的な擬似私小説風のもので、『取り替え子』や『憂い顔の童子』などの晩年の作品に通ずる。

ブレイクの預言詩とイーヨーによって啓示される「僕」。ここにもやはりグロテスク・リアリズムにおける転倒をみることができるだろう。そのように思うと、障害児との生活が悲劇と喜劇との限りない往復運動であるようにも感じられる(これは文学的創作とも通じるかもしれない)。あるいは若い人にとっては、この作品は陰鬱な小説だと感じられるかもしれない。しかし、作者は「小説のたくらみ」によって作為的な虚像を作り出してもいるだろう(部分的には実際に起こったことを用いているにせよ)。そのような現実と虚構との往復というのも、上のことと対応する。感動というよりも私は脱臼というか肩透かしというかモアレのようなものを感じた。所与のものでやりくりする(それでもって成功する)というのは、フランスというよりも鴎外的な価値観であるように思う。

2023年3月3日に作者大江健三郎は亡くなった。この作品では自分の死後の息子の状況に思いを馳せる場面が度々あり現実の生活を案じてしまうが、推敲を重ね不自然且つ読み難い文体を作り出し屈折し解決の不鮮明な物語を編み出し(これらは「現代音楽」に通じる)社会や家族といったものを相対化する視点を提示しているだろうことから、いわば直情的同情には抑制的であるべきだろうと教えられる点もあると思える。
新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)より
4061837540
No.2:
(3pt)

難解

ついていけない
新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)より
4061837540
No.1:
(3pt)

人物のリアリティ

「性的人間」「個人的な体験」と最近になって大江健三郎を続けて読んでいます。「個人的な体験」は主人公の周りの悪意のある人たちがいかにも作り物めいていて、被害妄想の肥大した産物という感じだったけれど、今回はそんな印象はなかったです。文化人類学者Yとか作曲家Tとか自決した作家Mさんとか実在の人物を思わせる人が登場して、大江家で実際にこんなことがありました、というふうに話が続き、それはそれは大変でしたね、という感想をこちらも抱きそうになるけれど、事件も人物も本当は想像力でできたものなのだろうなと思います。リアリティがすごい。
難点は、それが嫌なら大江健三郎を読むなといわれそうですが、ブレイクについてあまりに多くを語りすぎだと思います。
新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:新しい人よ眼ざめよ (講談社文庫)より
4061837540

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