八月十五日に吹く風
評判
八月十五日に吹く風の評価:
4.47/5点 レビュー 83件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全163件 81〜100 5/9ページ
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正直、戦争のことは教科書レベルしか知らず、軍国主義、全体主義、資本主義vs共産党主義、日独伊の同盟で突き進む、的なイメージがあるくらいでした。ましてや戦争責任の所在だとかは詳しくはわかりません(今も議論されていることと思われますが・・)。
この作品を読みはじめて、キスカの救出作戦終了あたりまでは、奇跡的で、熱い魂を感じさせる話だけど、事実とはいえ、戦争を全く知らない方が読まれたら、やや、バイアスがかかるだろうなあと思いました(素敵な話故・・)。
なので、この話の、日本の戦争の全体像のうちのパーセンテージが気になりました。割合というか・・。尤もそれは作家さん頼みではなく、自ら学ぶべきことなのでしょうけど・・。
勿論、木村昌福の、能ある鷹は爪隠す、といった感じは魅了されますし、ユダヤ人を救った樋口季一郎中将の存在は初めて知り、驚きました。駆逐艦等の偽装工作もいつもながらの作者テイストで楽しめました。さらにはキスカに、向かっては戻りの連続は、救出作戦の成功への期待を大いに煽り、事実とはいえ、とてもドラマチックでした。ディティールも細かく感じ(個人的には・・)、従軍記者菊池と、リーンが国こそ違えど、同じ方向性を持ち、そこを同時進行で描いているとこが立体的でした。サラウンドみたいな・・・。戦争という、ある種のトランス状態において、冷めていられる、というかこれは違うと感じられる人たち・・。
でも、戦争終結後の辺りになって、この作品の印象が変わりました。菊池のシーンで、キスカの出来事が話題にも登らなくなっていたところです。そこと、塩田に家族とともにいる木村の姿が、鮮烈に、人ととしての幸せのシンプルだが、深く重い姿、が立ち現われていました。それは国の違いを越えて、普遍的なものなのだと・・・。だから、この作品は、キスカの奇跡を描いていても、本当はこのシンプルさを表したいんだと思いました。故に、キスカの奇跡を描いたあとに、サラッと、この話は話題にさえの登らない、と作者自ら作品のなかで、敢えて一蹴してみせたのでしょう。それによって、塩田の光景だけが、そこにあったかのような感覚になります。そこには勿論、最初からこうであれば良かったのにという思い、はたまたそうは行かない人間のさがのようなものが感じられます。
今作は、アメリカ人が、日本人の国民性を誤解するがゆえに戦局すら影響される複雑な様を、リーンが必死に解きほぐすとこが奥深かったです。
実際に、トップダウンの組織のなかで、祖国を守るために身を呈した人びとのことをあらためて感じながら、塩田に象徴された幸せと、二人の邂逅に、この作品の重さを確認せずにはいられない、そんな作品です。