リトル・バイ・リトル
評判
リトル・バイ・リトルの評価:
3.69/5点 レビュー 48件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1〜10 1/1ページ
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リトル・バイ・リトルの評価:
3.69/5点 レビュー 48件。 B ランク
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フィクションに真実味を持たせるディテール、フィクションに面白さを与えるストーリー、フィクションに意味をもたらすテーマ。創作の三要素、全てにおいて不足を感じる話だった。
まずディテール。主人公一家は、結構な貧乏のはずである。大学への進学資金どころか、受験資金に困ってサラ金を検討するほどなのだから。すぐに次の仕事場を見つけられたものの、物語冒頭では母が失職。異父妹はまだ小学生。主人公のアルバイトは路上のティッシュ配りや看板持ちで、高収入とは思えない。かなりの節約をしないと苦しいだろう。しかしこの貧困気味母子家庭、どうにも貧しさの気配がない。母は平気で高そうな牛肉を買ってくるし、それに溜息を吐いた主人公も散歩中に水筒ではなく自動販売機で飲み物を買う。バイト中の昼食は弁当ではなく外食、格闘技観戦に行くとなれば図書館ではなく書店で専門雑誌を買う、習字教室に通うのも止めない、離婚した実父と義父が養育費を出している様子もない……読み進めるうちに、貧乏がファッションやパフォーマンスに思えてきた。お花畑の童話ではないのだ、もう少し設定を詰めて欲しい。真実味がないと物語に入り込みにくい。
大学受験を来年に見送った主人公の、向学心にも疑問を抱いた。高校在学中は行事や授業をサボっていたとのこと、現在もろくに勉強しているように見えない。せめて習字教室の授業料を予備校や模試代に使ってはどうか。貧困を理由にして、モラトリアムを楽しんではいまいか。
次にストーリー。今作には大きな筋、話の起伏がなかった。描かれる目立った変化は、恋の進展と実父への納得。どちらも心理面がメインで、目に見える激変に乏しい。また、主人公が自発的に動いて起こした変化でもない。終始淡い。
他にも多様なイベントや、身近な存在の死は体験している。しかしどの出来事も、後の展開に及ぼす影響は小さい。そのため小石の寄せ集め、ブログの記事をまとめた本のような印象を受けた。日記ブログの各見出しを取り払ってひとつにし、小説と名乗れば完成である。
最後にテーマ。今作に込められた意味は何なのか、私には未だ見出せない。著者のあとがきには「恵まれた境遇とは言いがたい主人公が、他者を通じて、家の中から外の世界へと踏み出していく小説」「理不尽も痛みも、「まあ、」という一言で静かに終わらせてきた主人公が、周に出会い、もっと自分を大事にしてくれる人々に触れる」とあるが、その様はあまり感じられなかった。もっと家庭環境への抵抗や、主人公が変わっていく姿が描けていれば何かしら解ったのだろうが……諦めの境地に生きる主人公の、なあなあな前進以上のものは見えてこなかった。
純文学という括りならばOK? エンタメじゃないんだ大目に見ろ?
そういった別枠甘口の態度が、この国の物語を腐らせているのではないだろうか。
心理描写に重きを置いてもいい。日常の何気ない風景を、一切書くなとは言わない。実験的な作品も大歓迎だ。繊細な文章の美しさはわかる。しかしそれらは、純文学の謳う「芸術性」とやらは、ディテールとストーリーとテーマの面白さの先にあるべきだ。
裸の王様にはまず服を着せろ。