とっぴんぱらりの風太郎
評判
とっぴんぱらりの風太郎の評価:
4.32/5点 レビュー 120件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全14件 1〜14 1/1ページ
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とっぴんぱらりの風太郎の評価:
4.32/5点 レビュー 120件。 A ランク
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今まで「鴨川ホルモー」「ホルモー六景」「偉大なるしゅららぼん」「プリンセス・トヨトミ」「鹿男あをによし」と読んできましたが、この「風太郎」は唯一、個人的には欠点の方が目に付いてしまった作品です。なので、ここでの評価が高いのにちょっとびっくりしました。
まず、上巻が冗長過ぎると感じました。万城目氏の小説は元々、話が膨らんで長く分厚くなる傾向がありましたが、今回はさらにさらに長くなってしまいました。長いお話は嫌いではないし、自分は読み出したら必ず最後まで読み切る方なのですが、途中で退屈してしまい、上巻の途中で挫折する人が結構いるのでは・・・?と思ってしまいました。下巻までたどりつくとテンポが速くなり、迫力も出てくるのですが。
小説にせよ、エッセイにせよ、万城目氏の文章は大阪人らしいというか、自分で突っ込んで、ボケて、しっかり笑いを取ろうとするサービス精神が旺盛で、それゆえに本筋にはあまり関係のないにぎやかしが多過ぎて、それも文章を長くしている原因かと思います。「しゅららぼん」も「トヨトミ」も長かったですが、このあたりが限界では・・・?「風太郎」は削れる部分が結構あったのではないでしょうか。
また、歴史小説としてはかなり軽いです。若い忍者たちが今時の若者と同じような話し方をするのは愛嬌ですが、風情や威厳はないので、歴史小説ファンには不満かと思います。今時の流されやすく、どちらかといえば優しく不器用でおとなしい若者をそのまま時代劇に放り込んだ感じです。最近よくあるスーパー歌舞伎的な若者が活躍するアクション時代劇と言えばいいでしょうか。ただ、若い読者にはとっつきやすいでしょうし、現在の就職難とか氷河期というキーワードが彼ら忍者にもぴったり当てはまりそうな状況が描かれていて、共感を感じる読者も多いかと思います。
また、格闘や刀戦も多く血みどろのシーンにかなり多くのページが割かれています。スポーツ好きの万城目氏らしく、アクション・シーンはなかなか迫力があるのですが、このあたりは好き嫌いがあるというか、格闘技に興味のない自分には延々と続く、殴ったら殴られて、切られそうになり、切って・・という場面はかなり退屈で、途中で飛ばし読みしてしまいました。元々この世のものではなかった因心居士が妖術で風太郎にからんでくる場面も多くありますが、ラストに向かって、もうあちらの世界へとっくに旅立ったはずの因心居士が、風太郎危機一髪の時には必ず何度も現れて彼を救う場面では、もう登場は終わったんじゃなかったの?そんなに都合よくいくのはちょっと・・と感じてしまいました。その種のご都合主義もいくつか見受けられ、いまひとつでした。
また、この作品の中では、ひょうたんが重要な役割を果たします。ちょうどエッセイの「ザ・万字固め」を読んでいたところで、万城目氏がひょんなことからひょうたん栽培にはまってしまい、子供のこともかまわなくなって「自分はひょうたん未亡人」だと奥さんに苦情を言われるほどだったことが描かれていました。なるほど、先にこれがあって、それでひょうたんが「風太郎」に取り入れられたんだなと、なんだかおかしかったです。この作品の中で、ひょうたん栽培や加工についてやけに詳しいのはそのためです。
ラストは、この作者にはめずらしくハッピーエンドとは言えません。戦いのむなしさや意味もなく死んでしまう多くの人たちが描かれます。ただ、はるかな未来に先を繋げていて、そのあたりはとてもうまいです。舞台は「プリンセス・トヨトミ」とほぼ同じ場所、そして1600年代のこの頃から、「プリンセス・トヨトミ」の現代まで、その間400年あまりの年月と、その中で生きて逝ったたくさんの人々、それら悠久の時間が感じられて感動的です。そう、大坂は人々の間で、脈々と継承されてきたのですね。
個人的には現代ものの方がうまいのではと思いました。まだ兵庫や和歌山も残ってますし、「しゅららぼん」や「トヨトミ」のような関西ものもまた書いてほしいです。「ホルモー」も続編がある的な終わり方をしていましたよね。期待しています。