宵山万華鏡
評判
宵山万華鏡の評価:
4.17/5点 レビュー 78件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全122件 101〜120 6/7ページ
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宵山万華鏡の評価:
4.17/5点 レビュー 78件。 C ランク
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それぞれの物語は、宵山の祭りの喧騒のなか、しかしひっそりと現実と妖しの世界が入り乱れる不思議な空間に陥ったひとびと、あるいは同じ刻、同じ場所で宵山の祭りを楽しむ人々の物語を描く。ふと気づくと、あちらの世界に足を踏み入れ、帰れなくなってしまうひと、帰れなくなりそうになる少女。その横では馬鹿馬鹿しくも祭りを楽しむ。不思議な魅力、そしてふと横にある恐怖がそっと孕まれた、静かな喧騒の世界。祭の夜は何かが起こる。
連作最初の「宵山姉妹」を小学校三年生、四年生の姉妹の妹の視点、最後の「宵山万華鏡」が姉の視点、それぞれの視点から書く物語を最初と最後に置くことで一冊の作品としてうまく纏め上げた。ふたつの短編それぞれの最後の場面の叙述は、「彼女は姉と一緒に夢中で走って」と「妹の手を引いて走り」と、最初の一文が違うだけで以降はまったく同じ文章であることも見事。そしてまた二話と三話で祭りを楽しむ物語、四話と五話は宵山に閉じ込められる物語を、それぞれがまた連なる。
宵山の不思議な世界(あちらの世界)から、現実の世界(こちらの世界)に無事戻ってきた二人の幼い姉妹が「帰ろ」と堅く手を握り合ったまま、家というまさに安心な空間に、何事もなかったかのように戻る姿で始まり、終わる物語はまさにファンタジーであろう。対して四話「宵山回廊」で明かされる、従妹の手を離したことで起こる怪異はうすら怖い。ゆめゆめ大事なひとの手は離すべからず。
本書表題が、あるいはその一篇に「万華鏡」が名づけられてはいるが、昨今流行の西洋のきらきら煌く万華鏡とはちょっと違う。どちらかというと日本のお祭りが今でも持つ、提灯で照らされたほの明る暗い(ってどっちなんだ?)煌きに近いものだろう。五話の「宵山迷宮」で乙川の探す水晶玉は、その万華鏡の一部。人ならざる者の持ち物で、宵山の夜は、この世界の外側にある万華鏡に覗かれた世界であると物語は語る。陳腐な物言いが我ながら情けないが、おそらくジブリアニメで描くことが似合いそうな風景。
黄昏時から夜の闇までの、まさに逢魔ヶ刻(おうまがとき)ならばこその風景であり、そして物語。万華鏡のようにきらめき、くるくる繰り返され、そして閉じ込められた物語たち。携帯電話さえ登場する現代という時代においてさえ、京都という街、その祭りの夜には、いまだ幻想的な世界が繰り広げられることに違和感を覚えない。
前作「おっぱい万歳」もとい、「恋文の技術」はオモチロイ物語であったが、本書は不可思議できらめく世界の物語。同じようで、同じでない作風の作品を書き、発表しつづける森見登美彦は、やはり巷でモリミーなぞと騒がれるほどにスゴイ作家なのかもしれない。
蛇足:本書カバーのカラーインクで描かれたイラスト(さやか)と、そして特殊処理された煌くコーティングは、まさに本書の軽ろみをも含む世界を表現している。ただ背景の、夜を表現する紺と、夕焼けの朱はもう少し深く濃く滲んだもののほうがふさわしいような気がする。ちょっと明るすぎるかな?
蛇足2:古道具屋の乙川なる人物の印象が、物語が進むに連れ、変わっていくことに、少しだけ違和感を覚えた。