シンセミア

評判

シンセミアの評価:

3.40/5点 レビュー 67件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.40pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全44件 1〜20 1/3ページ
No.44
(5pt)

面白い 漫画みたいな娯楽作品

オーディブルで聴取。
構成や最後がきれいにまとまりすぎているがフィクション作品としては問題なし。
面白かった。

ナレーターさんがうまかったこともあるが、青年誌あたりに掲載されている漫画を読んでいる感覚で最後までだらけずに聴けた。
各キャラが立っているというのもあるだろう。
悪い意味でよくある、ほのぼののほほんとした日本の田舎の歴史や日常をリアルに描いてくれている。

最後、〇〇さんは「自分は安全だ」的なことを言っていたが、あの意味はよくわからなかった。
続編への布石なのか、それとも純粋にそういう性格のひとなのか?

ゴミ問題がテーマの一つなので、光る物体は当然化学汚染物質的なものだというオチを想像していたが結局なんなのかわからなかったもの残念。

それら一部不明のまま終わった部分もあるが、それら抜きにしても面白い。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.43
(5pt)

困難の先に行きつくカタルシス

これは素晴らしい一大文学を立ち上げたな、というのが率直な感想です。

複雑な事件がきれいに結びを迎え、カタルシスを得られます。
しかしこの物語は、それ全体が一つの寓話となっており、いろいろな読み方が可能なのも大きな楽しみです。
シンセミア(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(下) (講談社文庫)より
4062775492
No.42
(5pt)

戦後日本の歪みを寓話化した傑作

アメリカがもたらした戦後日本の歪みを抱えて物語は始まります。
その歪みを背景に俗悪をきわめた登場人物たちが織り成す群像劇が、一つの大きな寓話になっている。
非常に優れた大傑作です。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.41
(5pt)

平成を代表する文学作品の一つ

近代文学臭さを消して、ある意味、神話的な枠組みで小説を描き続けてきた作者前期の集大成的な作品。
近代文学的な意味での人間の心が描かれている小説ではないので、そういうものを求めて読むと、非常に醜悪な人々ばかりが出てくる気持ち悪い物語、と感じるかも知れない。
(実際、ここのレビューで星1を付けている人たちはそうなのだろう。)
だが、そうではないのだ。
これは神話のシステムや物語論の中で動いている小説なのだ。
そしてやはり文学性を剥ぎ取られた批評的な文体が、ここでも正確に機能している。
純文学というジャンルにおいて平成を代表する作品の一つだろう。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.40
(5pt)

大きな構想

アメリカの存在が先ず最初に作品の根本背景として設定され、そこに戦後日本社会の社会状況と風潮が交差する形で作品描写が始まっている。今後の展開を期待させるシンセミア上巻を読み進めています。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.39
(5pt)

クセの強い田舎者たちが巻き起こす群像劇

単行本、朝日文庫、講談社文庫これらの間でアマゾンレビューの評価がかなりかけ離れているので、購入を迷っている方はそれぞれ目を通すとよいかと思います。
 本書の舞台のような田舎町の文化を知る者にとっては、本書に出てるような人物や人間関係にはリアリティがあります。町の中だけで威張っている議員やヤクザくずれ、土建屋など。変態もいるし男女問題も激しい。不良気取りの中高生が元気。
 そういう舞台を設定して、多くの人間のトラブルを絡み合わせ、クライマックスの大事件(派手なシーン)につなげていくプロットはうまいと思う。阿部の著作の中で私は大好きな作品です。
 ちなみに現実の神町の中心には木村屋というパン屋があって、阿部和重の生家です。その向かいにはあすなろ書店という本屋があります。お椀のような山、空港に近い橋、エスカレーターのあるショッピングセンター、ボウリング場、どれも近くに実在します。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.38
(5pt)

安易な地元礼賛作品への痛烈なフィストファック、これも一つのアマルコルドだ。

全ての小説から一作だけ選ぶとしたら俺は本作を選ぶ。初めて読んだときの衝撃ったらなかった。
この作品を読んでまず、強烈な既視感に襲われた。俺はこれを知っている。覚えている。というか生まれ育った。
住宅街の側にホテル街が立ち並び、家の隣の草むらはカーセックスのスポットになっていて、路上にはコンドーム
が飛散していて、頭のイカレタじいさんが自転車で徘徊している地方都市の風景を俺は肌で感じてきた。
ここ最近地元に回帰する事を良き事として描く作品が大衆に支持されているという。どういうことだろう?
田舎って素晴らしい。都会という砂漠から見るとオアシスのようだ。ということだろうか?
しかし俺は田舎のどっかしら狂っているところも知っている。おそらくは阿部氏も存じあげているのだろう。
まず登場人物のキャラクター造形が素晴らしい。おそらくはこのパン屋の長男も妻も警官もみんな「しあわせのトンボ」
を夢見て都会に飛びだしたはずなのだ。でもそんなものは現実にはなく、他に帰るところもない出戻り組の持つ哀愁と狂気、
標準語を口にする彼らに対して方言を喋る「居残り組」との対比の妙、カメラという間接的な媒体が無ければ情欲(リアリティ)
を感じられない長男の性癖は主題との一致を見せる実に秀逸な設定である。
文体の革新性については至る所で語られているところなのでこの場で省くが、本作が三人称多元という形で、かの村上春樹氏
が長年夢想している総合小説の試みに肉薄している点は明記しておきたい。
通常の文学のみならずあらゆる物語形式においてシンボリックな読みときから現代社会を読み解くタイプの評論が主流だが、
そうした視点ではおそらく本作は読み解けないだろう。
監視カメラという道具立てから、見る=見られるという関係性が捻出され、それが有機的に物語との関連性を見せて、そこからアレゴリカルに「何もかも見えすぎるためにかえってなにも見えない」(パン屋の長男)「自分の思い描いた物語しか見えない」(警官)「周りを見ようとして何も見えなくなる」(最後の粉塵爆発)というモチーフが展開されて、過去の歴史を掘り出したために「何も見えなくなってしまう」者が現れて終幕を迎える物語が、盛大なズドンで始まり相互に誤送されたガジェットの誤爆で迎える雪崩崩し的なカタストロフィからあっと驚く終幕を迎える本作はおそらくは文学史上においても、画期的な作品の一つに数えられるのではないでしょうか。
ともかく阿部和重才気煥発の大傑作なので、エログロ描写に抵抗が無ければどうぞ。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.37
(5pt)

安易な地元礼賛作品への痛烈なフィストファック、これも一つのアマルコルドだ。

全ての小説から一作だけ選ぶとしたら俺は本作を選ぶ。初めて読んだときの衝撃ったらなかった。
この作品を読んでまず、強烈な既視感に襲われた。俺はこれを知っている。覚えている。というか生まれ育った。
住宅街の側にホテル街が立ち並び、家の隣の草むらはカーセックスのスポットになっていて、路上にはコンドーム
が飛散していて、頭のイカレタじいさんが自転車で徘徊している地方都市の風景を俺は肌で感じてきた。
ここ最近地元に回帰する事を良き事として描く作品が大衆に支持されているという。どういうことだろう?
田舎って素晴らしい。都会という砂漠から見るとオアシスのようだ。ということだろうか?
しかし俺は田舎のどっかしら狂っているところも知っている。おそらくは阿部氏も存じあげているのだろう。
まず登場人物のキャラクター造形が素晴らしい。おそらくはこのパン屋の長男も妻も警官もみんな「しあわせのトンボ」
を夢見て都会に飛びだしたはずなのだ。でもそんなものは現実にはなく、他に帰るところもない出戻り組の持つ哀愁と狂気、
標準語を口にする彼らに対して方言を喋る「居残り組」との対比の妙、カメラという間接的な媒体が無ければ情欲(リアリティ)
を感じられない長男の性癖は主題との一致を見せる実に秀逸な設定である。
文体の革新性については至る所で語られているところなのでこの場で省くが、本作が三人称多元という形で、かの村上春樹氏
が長年夢想している総合小説の試みに肉薄している点は明記しておきたい。
通常の文学のみならずあらゆる物語形式においてシンボリックな読みときから現代社会を読み解くタイプの評論が主流だが、
そうした視点ではおそらく本作は読み解けないだろう。
監視カメラという道具立てから、見る=見られるという関係性が捻出され、それが有機的に物語との関連性を見せて、そこからアレゴリカルに「何もかも見えすぎるためにかえってなにも見えない」(パン屋の長男)「自分の思い描いた物語しか見えない」(警官)「周りを見ようとして何も見えなくなる」(最後の粉塵爆発)というモチーフが展開されて、過去の歴史を掘り出したために「何も見えなくなってしまう」者が現れて終幕を迎える物語が、盛大なズドンで始まり相互に誤送されたガジェットの誤爆で迎える雪崩崩し的なカタストロフィからあっと驚く終幕を迎える本作はおそらくは文学史上においても、画期的な作品の一つに数えられるのではないでしょうか。
ともかく阿部和重才気煥発の大傑作なので、エログロ描写に抵抗が無ければどうぞ。
シンセミア(上) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上)より
402257870X
No.36
(4pt)

途中から楽しめました

上下巻含めた感想。

ロバート・アルトマンの”ショートカッツ”のような小説(映画でいうとグランドホテル形式ってやつか)。阿部和重の小説で”神町”を舞台とするのは、ニッポニアニッポン、グランドフィナーレとこの作品を含めて3作ある。

最初は読みにくくて放置していたが、2度目のトライでは上巻半ばから引き込まれた。多彩な登場人物が欲望丸出しで動く様は、露悪的ではあるが、その様々な思惑が連動していく纏め様はなかなのもの。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.35
(4pt)

途中から楽しめました

上下巻含めた感想。

ロバート・アルトマンの”ショートカッツ”のような小説(映画でいうとグランドホテル形式ってやつか)。阿部和重の小説で”神町”を舞台とするのは、ニッポニアニッポン、グランドフィナーレとこの作品を含めて3作ある。

最初は読みにくくて放置していたが、2度目のトライでは上巻半ばから引き込まれた。多彩な登場人物が欲望丸出しで動く様は、露悪的ではあるが、その様々な思惑が連動していく纏め様はなかなのもの。
シンセミア(上) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上)より
402257870X
No.34
(4pt)

蠱惑的な「神話」

大作ですが、文体の持つ映画のフィルムが流れるようなスピード感で一気に読み進められました。読むのが遅いと自負していた私ですが、こんなに早く読めたのは驚きです。登場人物のもつ際だった異常性がもつれながら猛スピードで終焉に向かっていきます。多くの方が寄せているように、まともな人間が全く出てきません。
 自分と同じ人間として読むと、非常に嫌悪感を持ってしまいましたが、「これは人間の話ではないんだ」と考えてみると、ギリシア神話のように異能の神々や英雄が登場する「神話」に似ているように思います。すさまじい異常性において超越的であり悲劇的である神々が跋扈するステージとしての「神町」。個々のエピソードに死と再生の象徴性を探りながら、神町の叙事詩を読み直してみると、作品の見方が変わってくるはずです。ただの不快な小説では終わりません。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.33
(4pt)

蠱惑的な「神話」

大作ですが、文体の持つ映画のフィルムが流れるようなスピード感で一気に読み進められました。読むのが遅いと自負していた私ですが、こんなに早く読めたのは驚きです。登場人物のもつ際だった異常性がもつれながら猛スピードで終焉に向かっていきます。多くの方が寄せているように、まともな人間が全く出てきません。
 自分と同じ人間として読むと、非常に嫌悪感を持ってしまいましたが、「これは人間の話ではないんだ」と考えてみると、ギリシア神話のように異能の神々や英雄が登場する「神話」に似ているように思います。すさまじい異常性において超越的であり悲劇的である神々が跋扈するステージとしての「神町」。個々のエピソードに死と再生の象徴性を探りながら、神町の叙事詩を読み直してみると、作品の見方が変わってくるはずです。ただの不快な小説では終わりません。
シンセミア(上) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上)より
402257870X
No.32
(5pt)

壮絶な名作

阿部和重氏の本は「アメリカの夜」以降読んできたが、この圧巻のリアリズムの完成度を誇る作品は絶品だ。すべての登場人物のグロテスクな面が余すところなく見事に描かれ、ストーリーテリングの実力も相当なものだ。著者はデビュー作の「アメリカの夜」にて田中康夫氏より『読まずに語る文芸批評』にて「ただの凡人」とこきおろされた。その作品を読んだ僕も同じ印象だった・・・・。その作家がここまで成長するとはまったく思いもしなかった。〜ストーリテリングにエンターテイメントの手法を持ち込む事を「後退」と評す人がたまに散見されるが、はっきり言って、純文学をエンターテイメントのストーリテリングに盛り込む方が単なる描写に徹するよりも遥かに難しい。これは自分で小説を一本でも書いてみればわかる。阿部和重氏は今後の期待が大きく膨らむ。
シンセミア(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上) (講談社文庫)より
4062775484
No.31
(5pt)

壮絶な名作

阿部和重氏の本は「アメリカの夜」以降読んできたが、この圧巻のリアリズムの完成度を誇る作品は絶品だ。すべての登場人物のグロテスクな面が余すところなく見事に描かれ、ストーリーテリングの実力も相当なものだ。著者はデビュー作の「アメリカの夜」にて田中康夫氏より『読まずに語る文芸批評』にて「ただの凡人」とこきおろされた。その作品を読んだ僕も同じ印象だった・・・・。その作家がここまで成長するとはまったく思いもしなかった。〜ストーリテリングにエンターテイメントの手法を持ち込む事を「後退」と評す人がたまに散見されるが、はっきり言って、純文学をエンターテイメントのストーリテリングに盛り込む方が単なる描写に徹するよりも遥かに難しい。これは自分で小説を一本でも書いてみればわかる。阿部和重氏は今後の期待が大きく膨らむ。
シンセミア(上) Amazon書評・レビュー: シンセミア(上)より
402257870X
No.30
(5pt)

壮絶な名作

阿部和重氏の本は「アメリカの夜」以降読んできたが、この圧巻のリアリズムの完成度を誇る作品は絶品だ。すべての登場人物のグロテスクな面が余すところなく見事に描かれ、ストーリーテリングの実力も相当なものだ。著者はデビュー作の「アメリカの夜」にて田中康夫氏より『読まずに語る文芸批評』にて「ただの凡人」とこきおろされた。その作品を読んだ僕も同じ印象だった・・・・。その作家がここまで成長するとはまったく思いもしなかった。〜ストーリテリングにエンターテイメントの手法を持ち込む事を「後退」と評す人がたまに散見されるが、はっきり言って、純文学をエンターテイメントのストーリテリングに盛り込む方が単なる描写に徹するよりも遥かに難しい。これは自分で小説を一本でも書いてみればわかる。阿部和重氏は今後の期待が大きく膨らむ。
シンセミア〈1〉 (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア〈1〉 (朝日文庫)より
4022643773
No.29
(4pt)

大作”神町サーガ”の意義

”神町”という町の住人の人物たちを多数登場させ、重層的に動かして、俯瞰的に描いている、各々が小心でまたは棒弱無人で善良さは微塵も観られず、人物に感情移入はできない。しかしながら上下二巻にわたって複数のエピソードを連関させることで飽きさせずに書かれており、終盤に向けて繋がっていくのが小気味良く、ちょっとした種明かしもよかった。最後の二行目には少々びっくりさせられましたが。とにかくストーリーでよくある「犯人が誰だ判らない」的な無理な仕掛けもなく好感が持てた。ただ、グロイ描写(例:ハメ撮り)や詳細な名称の羅列(例:日産グロリアY34型300アルティマVパッケージ)、難しい漢字の多用(例:悉く・纏る)、不必要な登場人物(阿倍和重と称する男)や人物の突然の死については疑問を感じ、文章表現も素人くさい。しかしながら、日本人としてこのような大作シンセミア”神町サーガ”に挑んだのは意義があると思うし、この作家の他の作品も読んでみたいと思わずにいられなかった。
シンセミア(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア(下) (講談社文庫)より
4062775492
No.28
(4pt)

大作”神町サーガ”の意義

”神町”という町の住人の人物たちを多数登場させ、重層的に動かして、俯瞰的に描いている、各々が小心でまたは棒弱無人で善良さは微塵も観られず、人物に感情移入はできない。しかしながら上下二巻にわたって複数のエピソードを連関させることで飽きさせずに書かれており、終盤に向けて繋がっていくのが小気味良く、ちょっとした種明かしもよかった。最後の二行目には少々びっくりさせられましたが。とにかくストーリーでよくある「犯人が誰だ判らない」的な無理な仕掛けもなく好感が持てた。ただ、グロイ描写(例:ハメ撮り)や詳細な名称の羅列(例:日産グロリアY34型300アルティマVパッケージ)、難しい漢字の多用(例:悉く・纏る)、不必要な登場人物(阿倍和重と称する男)や人物の突然の死については疑問を感じ、文章表現も素人くさい。しかしながら、日本人としてこのような大作シンセミア”神町サーガ”に挑んだのは意義があると思うし、この作家の他の作品も読んでみたいと思わずにいられなかった。
シンセミア(下) Amazon書評・レビュー: シンセミア(下)より
4022578718
No.27
(5pt)

高まりゆく暴発の水位

洪水な神町に生起する様々な事件と人間模様が積み上げられた枯れ藁のように誰かが火を点けるのを待っているかのような、ジワジワと高まる怖さに満ちた第3巻。
「そもそも罪を悔いる気持ちなんてものが、快楽の渇望に勝ることなどあるはずがないのは、あらゆる歴史が証明してもいる・・・・・・。」(241頁)
Disciplineの喪われた共同体(国家、役所、企業、家族など)の行く末は、最終的には滅びでしかなかろう。
シンセミア〈3〉 (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア〈3〉 (朝日文庫)より
402264379X
No.26
(5pt)

久し振りに小説読みの醍醐味に酔わされた

錯綜したプロットと複雑な人間関係が絡まり合って、性と暴力そして金と麻薬の物語はいよいよ(一応の)大団円を迎える。ある者は喜劇的なそしてある者は悲劇的な10名の死といよいよ明らかになる隈元光博の出生の秘密。悪党の死にカタルシスを覚えるのもよし、やはり悪い奴ほどよく眠るのかとして憤りを感ずるもよし、また壮大な物語の終了に呆然とするもよし、「えっこれで終わりなの」と物足らなさを感ずるもよし、いずれにせよ濃密な小説的時間にどっぷりと浸ることにできた稀有な経験を提供してくれた阿部和重氏に感謝したい。
本作のもつ神話的な起爆力そしてイメージの喚起力の前では、凡百の小説が霞んで見えてしまう。
シンセミア〈4〉 (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア〈4〉 (朝日文庫)より
4022643803
No.25
(5pt)

加速度的に面白くなる物語

多くの登場人物が意外な線で互いに結ばれていたことが暴露されるにつけ、渦を巻いて深まりゆく物語。ストーリー・テリングとともに、各人物の内面描写も見事。広崎妙子と松尾丈士の肉欲関係や田宮和歌子の不倫関係が明らかになったあたりから、物語は暴走(?)を開始し、その加速度は増すばかり。松尾孝太を殺ったのは隈元光博なのか。
また、142頁以下の描写は、かの2008年6月8日の秋葉原通り魔事件を予見したとも云われる有名な箇所である。
直ちに第3巻を読み始める・・・・・・
シンセミア〈2〉 (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: シンセミア〈2〉 (朝日文庫)より
4022643781