文政二年仲夏。小籐次にとって商いの師である野菜売りのうづが、いつもの蛤町の船着場に三日も姿を見せない。

小籐次の想い人おりょうに持ち上がった、二千四百石の高家・畠山頼近との縁談。おりょうは不安と不審を小籐次に吐露する。

想い人おりょうとの仲に新たな進展を得た小籐次。だが、そんな日々にも、自らを見張る鋭い視線を感じていた。

御鑓拝借に始まった騒動から年が明け、文化十五年。赤目小籐次と、肥前鍋島本藩を含む四家が組織した追腹組の死闘は続いていた。

子連れの刺客、須藤平八郎を討ち果たし、約定によりその赤子、駿太郎を引き取ることになった赤目小籐次。

江戸で有名な盗人「鼠小僧」は自分だ、とついに明かした子次郎。

淀川を襲う激しい嵐から人々を救うため、来島水軍流・剣の舞を天に奉納する小籐次・駿太郎親子。

自ら考案した行灯づくりの指南に水戸に行くことになった小籐次。だがなぜか、同行者の中に探検家・間宮林蔵の姿が。

森藩藩主の命により、参勤交代に先行して国許の豊後国を訪れることになった小籐次。

久慈屋の大番頭、観右衛門の依頼で芝神明大宮司、西東正継を助けることになった小籐次。

当代随一の女形・五代目岩井半四郎と知り合い、再三、芝居への招きを受けていた小籐次。

玖珠山中に暮らす刀研ぎの名人「滝の親方」は、小籐次にそっくりだという。

深川惣名主・三河蔦屋染左衛門の信を得た小籐次は、染左衛門の成田山新勝寺詣でに急遽同行することに。

大切な舟が水漏れするようになったが、金の工面に悩む小籐次。

日課の研ぎ仕事に精を出す小籐次親子の前に現れた貧相な浪人。

駿太郎が夏風邪をひいた。幸い大事には至らなかったが、そんな折、小籐次は公儀の筋から相談を持ちかけられる。

文政二年（１８１９）秋、野分（台風）一過。久慈屋の大番頭・観右衛門に誘われ、隅田川沿いの須崎村に赴いた小籐次。

年の瀬が迫り、次々と舞い込む研ぎ仕事を片付ける傍ら、小藤次は想いを交わすおりょうのため、芽柳一派旗揚げ新春歌会の設えに奔走する。

かつて仕えた森藩の呼び出しに応じ、旧主・久留島通嘉と面会した小籐次は、思いがけず若き日の悪さ仲間だった松野藩藩主・松平保雅の窮地を救うよう依頼された。

文政三年冬。小藤次とおりょうは、うづと太郎吉の仲人を務め終えると、水戸藩に新たな竹細工を伝授するため旅立った。

身の丈五尺一寸、風采の上がらない五十男。しかし実は来島水軍流の凄まじい遣い手――。

秋雨が十日も続き、仕事にあぶれた住民たちが食べ物にも事欠くようになった新兵衛長屋で、炊き出しが行われることになった。

侮辱された主君の恥を雪ぐため、大名四家の御鑓先を強奪する騒ぎを起こした小籐次は、紙問屋久慈屋の好意で長屋に居を構え、研ぎを仕事に新たな生活を始めた。

小籐次は久慈屋昌右衛門に同道を請われ、伊勢神宮へと旅立った。

小籐次一家との身延山久遠寺への代参旅から戻ったお夕は、父のもとで錺職修業を始めた。

近ごろ、小籐次が研ぎ仕事をしていると、その姿に手を合わせ念仏を唱え柏手を打つ者、さらには賽銭を投げる者が続出する。

わけあって豊後森藩を脱藩し、研ぎ仕事で稼ぎながら長屋に暮らす赤目小籐次。ある夕、長屋の元差配・新兵衛の姿が忽然と消えた。

小金井橋の死闘で小城藩の刺客を斃した小籐次だったが、己が生涯追われる身になったと悟り、怪我を押して甲斐国へと向かった。

文政９年正月。今年こそは平穏な日々を送りたいと願う小籐次のもとに元日早々、藤藩の近習頭・池端が訪ねてくる。

小籐次一家三人は、老中青山忠裕の国許であり駿太郎の実母・小出お英の故郷でもある丹波篠山へと旅立つ。

正月。小籐次は望外川荘、おりょうの実家、久慈屋と宴席が続き、掏摸を捕まえた駿太郎は、奉行所から褒美をもらうことになった。

北町奉行所の年番与力が、小籐次に面会を求めてきた。極秘の依頼があるらしい。

近ごろ呆けの進んだ新兵衛が妙な間合いで「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えるため、みんなは困り果てていた。

小籐次父子は公方様に拝謁し、見事な芸を披露して喝采を浴びた。数日後、小籐次は駿太郎の乳母を務めたおさとと再会する。

落馬で腰を痛め、息子との立ち合いでは不覚を取る。

文政８年冬。

頭成の湊に着き、森藩の国家老・嶋内と商人・小坂屋の不穏な結びつきを知った小籐次は、ある過去の出来事を思い出した。

新兵衛長屋界隈で、赤目小籐次を尋ねまわる怪しい輩がいるという。

江戸っ子に大人気のらくだの見世物。駿太郎にせがまれて、小籐次もおりょうやお夕一家とともに見物に出向いた。

安芸広島城下で空也は、自らを狙う武者修行者、佐伯彦次郎の存在を知る。

数年にわたって修行の日々を過ごした西国を去ることに決め、福江島から船に乗り込んだ空也は、長州藩の萩城下に降り立った。

吉原を過去最大の危機が襲う。会所頭取、四郎兵衛の無残な姿。

端午の節句のその日、大門前に立った男女。一年余の京での修業を終え、吉原に戻った神守幹次郎と加門麻であった。

今坂一族の卜師梅香林は、鳶沢一族に張り巡らされた闇祈祷を看破した六義園を拠点とした闇四神の結界は富沢町、さらに駿府鳶沢村をも包囲していた。

京の都。祇園感神院の西ノ御門前で空也は、往来の華やかさに圧倒されていた。

武者修行中の嫡子・空也の身を案じる江戸の坂崎磐音のもとに、長崎会所の高木麻衣から文が届く。

文政９年初夏。太平の世を謳歌する江戸では近頃、貧しい長屋に小銭が投げこまれるという奇妙な事件が続いていた。

小藤次は、久慈屋昌右衛門との伊勢道中で知り合った三吉と再会したが、彼は酒飲みで乱暴者の父親のもとで苦労していた。

十三歳にして剣術に優れ、研ぎ仕事の腕も上げた駿太郎はアサリ河岸の桃井道場に入門し、年少組で稽古に励む。

江戸・三十間堀の小さな町道場が、怪しい証文を盾にした男たちから狙われている。

御側衆本郷康秀が将軍家斉の代参として日光に向かった。

豊後森藩の厩番の息子・赤目小籐次は、貧乏暮らしで日々を内職と剣術の稽古で過ごしている。

“影”本郷康秀を誅殺した総兵衛一行は、上野、越後、越中を経て盛夏の加賀に入った。

吉原会所を嶋村澄乃と名乗る武家の娘が訪れた。裏同心として働きたいと言う澄乃に、一同は驚く。

天明八年正月、京で大火が発生、吉原を狙った島原の勢力は力を殺がれたかに思われた。

虚栄と粋と張りを競い合う吉原が炎上、仮宅商いを余儀なくされた師走。遊女・花蕾が行方を断った。