川崎警察 下流域



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    初公開日(参考)2023年01月
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    長編小説

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    川崎警察 下流域

    2023年01月28日 川崎警察 下流域

    1970年代の川崎。 京浜工業地帯として発展する裏で、ヘドロで漁ができなくなった漁師たちが、漁業権や船舶の買い上げと、補償金をエサに立ち退きを迫られ、漁民の間に分断と対立が生じていた。また新興工業地帯には朝鮮や沖縄からの流入者も多く住み、住民問題は複雑化していた。 そんな土地で、多摩川河口に溺死体があがった。遺体は元漁師の矢代太一と判明。彼は漁業権問題で漁民をまとめる交渉役だった。 だが遺体には複数の打撲痕が認められ、漁師の溺死という不自然さと併せて事件性をうかがわせた。そして遺品にはなぜかキーホルダーがふたつあり、自宅以外にも家があるようだった。 川崎警察署刑事課のデカ長、車谷一人は、ベテラン捜査員たちや新米刑事の沖修平らを叱咤しながら捜査に乗り出す。 矢代は漁師をやめて得た補償金で、夫婦で食堂を始めたが、妻の死によって店をたたみ、いまは次男と暮らしていた。居酒屋やクラブで酒を飲むだけが楽しみだったという。漁業権放棄問題では対立する漁師グループから恨みも買っていたことがわかった。 被害者の足取りを追ううちに、矢代は居酒屋で飲んでいるところに若い女性から電話がかかり、慌てたようにして店を出て行ったことがわかった。 事件が報道されると、矢代に離れの部屋を貸していたという夫婦から川崎署に電話が入った。しかも義理の娘とふたりで借りていたという。 矢代には息子が二人いたが、ともに独身で、義理の娘などはいなかった。 手がかりを得た車谷たちは、不審死事件の背後に横たわる予想外に深い泥沼に足を踏み入れることになるが……(「BOOK」データベースより)




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    No.1:
    (5pt)

    圧巻の昭和川崎ミステリー!

    泥臭いタイトル! というのが本を手に取った瞬間の感想。でも、わかる。香納諒一の匂いが、最初からする。香納作品の基本として大事な要素の一つとしてぼくは挙げたい。それは物語が展開する舞台としての土地勘なのだ。そう。もともとが具体的な実在の地名を多用する作風。しかし、そこに半世紀前というさらなる設定を加えるとは驚きであった。

     舞台となる町や川とその流域。それらを大事にする作者は、他にもいる。ぼくは海外小説を多く読むせいか、小説の中の地理地形に実際にであれ情報的にであれトリップするタイプなので、そこが行ったことのある場所であれば自分の記憶をまさぐるし、行ったことのない場所であれば今度是非行ってみたい、と読書中にググりを重ねつつ旅行計画の候補地(大抵は空想)に加えてしまう人なのである。

     殺人現場に足を運んで、ここがA作品でB子さんが殺された場所、という具合に訪ねたい? いやいや、そこまでは考えないけれど、魅力的なキャラクターによる印象的な名シーンの舞台となった場所ならば、実際に観てみたいと思うことは多々ある。ググって画像を見ることもままある。過去、関東~北海道と車を相当走らせていた経験から、国産作品の場合は、知っている道路や場所が舞台に使われると、そこの良さも悪さも読んでいて思い出しやすいし、物語に入りやすいということはあると思う。それが全体とは言わないけれども。

     ただ本作の場合、先述したように、さらに時代設定が加わる。本作の時代背景は1970年代。ぼくも作者もこの作品時代には成人していない。十代のはずである。自分が大人として経験していない時代の事件を描くとなると、相当、時代設定の準備に時間がかかるかと思う。むしろ時代も主人公のような作品にするためには。本書はそうした川崎の現代史ミステリーでもあり、地勢学ミステリーでもある。ミステリーの面白さを作るのが本書では、発生した事件の背景や地勢や世相を読み解きながら、殺人の動機を探るという実に重層的娯楽作品なのである。

     そう書くと難しそうな印象に聴こえるかもしれないが、老練でタフな和製ダーティ・ハリーみたいな刑事を筆頭に、中堅刑事たちを挟んで、読者の目線に近い新米刑事が急遽参戦するメンバー構成となっていて、会話や生活感を感じさせる彼らの生々しさゆえに、どこか読者は寄り添い易い。強面刑事だけの編成だったらこうは行かなかったろう。でもそこがいつもながらの香納作品なのです。

     さて、この作品。戦後から展開した景気拡大のなか、工場進出による漁業権交渉役の一人だった老人の死体が、ヘドロだらけの河口付近で発見される。そう。やれやれ川崎かあ、という雰囲気です。賛否で反対していた廃業時の交渉役の相方は、補償金を元手に水商売に鞍替えして唸るほど金を儲けていた。元手となった者は何だったのか? 天と地ほども違う二人の元漁師の運命。老人がかくまっていたらしいが彼の死後失踪した母子の空家に眠っていた大量の札束入りの金庫。群がる暴力組織。凄腕の謎の殺し屋。事件は仕掛け花火のように飛び火してゆき、、、、。

     さらに警察捜査は拡大する。夜のネオン街を仕切る地元暴力団。河川敷を不法占拠して掘立小屋を集めた朝鮮人集落。当時の世相と、終わらない戦後を匂わせるきな臭い地勢状況を盛り込みながら、物語はスピーディな捜査活動を支える奥行きをも構築させている。堅苦しく見せないのは、刑事たちのスピーディな動きであり、表情たっぷりの魅力と個性であり、互いへの思いやりや、危険な仕事に取り組むゆえの連帯や心意気を感じさせる人間味。

     中でも現場を率いる車谷の落ち着いた言動は、修羅場経験を存分に背負っていることを匂わせて、タフかつ頼もしい。新米刑事を育てながらの捜査も、刑事作品のこれまた王道か。他にも、刑事たち、憎たらしいヤクザ、憎めないヤクザ、町の情報通、などなど昔懐かしい刑事もののドラマを思わせる厚みがあって、これ一冊で終わらせてはもったいない、との強烈な印象は、KSPシリーズ以来かも。

     いつもながら人間の描き方が上手い。初期の頃、作者二十代?の作品『時よ夜の海に瞑れ』を手にしたときの驚きの感覚は、今も全く失せていない。変わらぬそのまま。人間重視。人間の面白さや優しさや孤独を描き切ってしまう志。時代や社会を俯瞰する目線はさらにどんどん鋭くなっているように思う。円熟の作家だ。ぼくは当分一推しを続けたい。
    川崎警察 下流域Amazon書評・レビュー:川崎警察 下流域より
    4198655928



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