(短編集)
沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクション
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクションの総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
著者の作品は初読のためかペンネームによる作風の違いはあまり感じられませんでしたが、普通にうまく構成された面白い短編集として楽しめました。 印象に残った小説はどれも価値観を覆される作品。 いえ、本書に編まれている作品はどれも共通して読者の価値観を揺さぶります。 多くの物語は穏やかな舞台設定にくらまされて重力が回転するかのような価値観の反転に中々気づきません。 何話か読み進むうちに冒頭とラストの落差に気づき、あまりにも静かに足元が揺らいだので知らない間に真逆を向いていたことに驚きを感じることと思います。 特に印象深かった何話かをご紹介します。 蟹喰丸(中田永一) 死に至る病を負った主人公が自らの生を見つめなおし 生きたいという欲望を別の価値観へと昇華させていく 地球に磔にされた男(中田永一) これまた自分の生きざまのみの囚われていた主人公が 不思議な冒険の旅を経て、世界の見え方、ひいては世界の中の自分のとらえ方が変わってゆく 沈みかけの船より、愛をこめて(乙一) 両親の離婚に直面した中学生の主人公。 家族だけが世界の中心だった子供時代に緩やかに別れを告げて 一人の人間として世と対峙するにいたる価値観の転換を穏やかに描き出した少し長めの一編。 二つの顔と表面(乙一) 宗教二世の主人公が通う高校で起きた事件を背景に 主人公を取り巻く人々それぞれの驚くほど異なる価値観を鮮やかに描き出します。 その生育環境からほとんど自我を持たないかのような主人公に周囲の人々の本質が投影される様が見事です。 とりをかざるにふさわしい一編 どの物語も読みやすく、優しさに溢れています。 著者が人気作家であることがうなずける、安心して読める作品ばかりです。 とても面白かった。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
久々に全ての乙一バリエーションを楽しめた一冊でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この単行本の収録作品ならびに初出は、以下のとおり。 ◆五分間の永遠──乙一(おついち) 初出は、『5分間だけの彼氏 タイムストーリー』2016年3月(偕成社刊) ◆無人島と一冊の本──中田永一 初出は、「き・まま」第6号 2016年7月 ◆パン、買ってこい──中田永一 初出は、「Number Do vol. 27」 2016年10月(『走る?』文春文庫所収) ◆電話が逃げていく──乙一 初出は、「STORY BOX」2020年3月号(『超短編! 大どんでん返し』小学館文庫所収) ◆東京──乙一 初出は、『東京』 2016年11月(文鳥文庫、文鳥社刊) ◆蟹喰丸(かにくいまる)──中田永一 初出は、「き・まま」第8号 2019年1月 ◆背景の人々──山白(やましろ)朝子 初出は、「小説現代」2021年8月号 ◆カー・オブ・ザ・デッド──乙一 初出は、「Kindle Single」 2016年9月 ◆地球に磔(はりつけ)にされた男──中田永一 初出は、「yom yom」2016年春号(『十年交差点』新潮文庫 nex 所収) ◆沈みかけの船より、愛をこめて──乙一 初出は、『迷─まよう─』 2017年7月(新潮社刊)。『迷 まよう』(実業之日本社文庫所収) ◆二つの顔と表面 Two faces and a surface ──乙一 初出は、「小説トリッパー」2022年春季号 てなわけで、長短取り混ぜて、全部で11篇収録されています。あ、そうだ。すべての作品に、安達寛高(あだち ひろたか)氏の解説が付いてます。かなり短めの文章ですけど。 予想以上に面白かったです。なかでも、次の五篇が良かった! ★「五分間の永遠」。素敵な贈り物をもらった気分。ラスト、目頭が熱くなっちまった。 ★「パン、買ってこい」。こういうポジティブ思考って、いいよな。主人公の前向きな行動のせいで、とても爽やかな話になった。 ★「東京」。切なさが、胸に染みたなあ。風が駆け抜けていったみたいな、不思議な味わいの佳品。 ★「蟹喰丸(かにくいまる)」。主人公の男が異界に迷い込んでしまう導入部から、話の中にすっと入っていくことができました。心に染みるストーリー。良かったっす。 ★「地球に磔(はりつけ)にされた男」。ええ話やあ。時間SFもののなかでも、これはかなり出来のいい作品なんじゃないか。ラスト三ページの話の雰囲気が素晴らしいです。 それと、この作品集の中で一番分量があったのが、おしまいに置かれた「二つの顔と表面 Two faces and a surface」。百ページ近くあります。話自体はかなり間延びしたものでしたが、変わってたのは、少女に付いた人面瘡(じんめんそう)が主役であり、語り手であったところ。んでもって、宿主の少女と人面瘡がコンビをくんでことに当たっていくっていう、まあ、前代未聞の設定におったまげてしまいました。途中、人面瘡が少女に向かって、《お願い! (ジェフリー・ディーヴァー先生の)リンカーン・ライムのシリーズを借りて!》と言う場面に、「この人面瘡のミステリ鑑賞眼や、良し!」と、すごく親近感を抱いてしまいました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
乙一の作品は中田永一や山白朝子名義を含めて15冊ほど読んでいますが、今回は中盤あたりに収録されている「カー・オブ・ザ・デット」まで読み、投げ出してしまいました。 元々ライトノベル系の文章と構成の作者ですが、今回の作品はそれが非常に強く出ていて、読みやすいというよりはむしろ稚拙に感じます。 いわゆるなろう小説にありがちな”クサい表現”が頻出し、展開も話の流れから予想のつくありがちなものばかりです。 乙一はこんな作風の作家だったでしょうか? 特に「カー・オブ・ザ・デット」は車内と路上の往復ばかりで場面の切り替えがほとんどなく退屈で、後半はセリフが少なくなるので状況の描写が不必要に多くなりダラダラと冗長で、テンポが悪くてゾンビ物の醍醐味である緊迫感がまるでありません。 子供向け雑誌や地域雑誌に掲載された話が多いので、その雑誌のコンセプトや購買層を考えるとこういう平凡な話の構成になってしまうのかな?とは思いますが、それでもせめて文章のレベルはもう少し高いものにしてほしかったです。 先にも述べたように、緊迫した場面での細かすぎる描写や、話の流れを切る不必要な描写などの、周りの文章から浮いた場面説明が多すぎて物凄く引っ掛かります。 ひとつ前の幻夢シリーズの「メアリー・スーを殺して」や、先日発売された周年記念の「さよならに反する現象」(こちらは値段の割にボリュームが少ないのが気にはなりますが)のお話はとても楽しめましたので、年々才能がなくなっていっているというわけではなく、たまたまこの作品が私にとって外れだったのだとは思います。 酷評しましたが好きな作家さんなので、次回作に期待します。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 4件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|