最後の晩餐の暗号



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初公開日(参考)2015年03月
分類

長編小説

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最後の晩餐の暗号

2015年03月15日 最後の晩餐の暗号

その絵は異端か?15世紀末のミラノ。ローマ教皇庁を揺るがす、ダ・ヴィンチの壮大にして緻密な計画に異端審問官が挑む―(「BOOK」データベースより)




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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.1:
(4pt)

不満も多々あるけれど、エンタメ小説としては及第点

原題は “La Cene Secreta”(2004)。レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の傑作《最後の晩餐》、通称 “Cenacolo”(1495-97年、サンタ・マリア・グラーツィエ教会、ミラノ)に隠された秘密の謎解きがテーマ。

おもな舞台となるのは1497、98年のイタリア、ミラノ。語り手は、ローマ教皇庁の異端審問官アゴスティアーノ・レイレ神父。エジプトに移り住み老境に入った彼が過去を回想する、という形式で進む。
もちろんレオナルド・ダ・ヴィンチは裏の主人公として活躍する。レオナルドのほかにも、人文主義の思想家マルシリオ・フィチーノ、ミラノ公ルドヴィゴ・スフォルツァ、その妻ベアトリーチェ・デステ、教皇アレクサンドロ6世といったルネサンスを彩る実在の名士たちが脇を固めている。

本編は400ページ弱ほどあるが、各章が5ページから10ページほどで区切られており、隙間時間に読める配慮がうれしい。訳文もとてもうまいので、すいすい読める。
けれど、本書で言及されている絵画はせめてレオナルドの作品だけでも図版を用意すべきだったと思う。それだけならまだいい。しかし実際の《最後の晩餐》に描かれたテーブルの(鑑賞者から見て)右下ではテーブルクロスが結ばれているのだが、本書のトリミングされた図版だとそれが見えない。本作ではこの「結び目」が作品解釈の鍵となるにもかかわらず。これは出版社の重大な過失だ。
訳者の仕事が良かっただけに、出版社の仕事ぶりが残念。

本書は、その前年に発表された『ダ・ヴィンチ・コード』と同様、グノーシス主義やカタリ派の思想におおきくよっているため、 レオナルドの作品解釈がわりと似ている。だから『ダ・ヴィンチ・コード』にくらべたらジェットコースター・サスペンス要素は少ないけれど、そうしたレオナルド解釈に興味を抱いた方は本書を十分に楽しめると思う。

余計なおせっかいだけれど、『ダ・ヴィンチ・コード」を読んでおらず、キリスト教の歴史もほとんど知らないという方は、おそらく以下のようなある程度の前提知識も必要だと思われる。
グノーシス主義は原始キリスト教と同時期にあらわれ、一部のキリスト教の派に影響をおよぼした。それらの教派は物質世界をすべて悪とし、神的世界のみを善とする。したがって彼らは、肉体に縛られた世界から離脱し精神的な世界にいたるための「グノーシス」(ギリシャ語で知識、認識の意)を必要とした。代表的なのがカタリ派である。神が創造した物質世界、そして人間の肉体を持つイエス・キリストを否定しかねない彼らの思想は、正統キリスト教と対立した。ついに13世紀はじめ、正統キリスト教によって派兵されたアルビジョア十字軍によって滅ぼされた。
またグノーシス主義的なキリスト教派は、極端な男性原理を旨とする正統キリスト教にくらべ、女性性の位置づけが異なるとされる。20世紀中葉にエジプトで発見された「ナグ・ハマディ文書」と総称される、グノーシス主義的ないくつかの聖書外典では、正統の福音書よりもマグダラのマリアの地位が高いという。
また、中世キリスト教ではアリストテレスの哲学(スコラ哲学)が中心であった。しかし15世紀フィレンツェではメディチ家の働きによって、マルシリオ・フィチーノがプラトンの著作を翻訳し、「アカデミア・プラトニカ」が設立された。そこで形成された新プラトン主義は、中世キリスト教神学とプラトン哲学の融合を試みるものであった。

(以下は少しネタバレのある感想)

ルドヴィゴ・イル・モーロの愛人ルクレツィア・クリヴェッリを描いたとされる《ラ・ベル・フェロニエール(貴婦人の肖像)》(ルーヴル美術館)、二枚の《岩窟の聖母》(ロンドン・ナショナル・ギャラリー、ルーヴル美術館)など現存するレオナルドの絵画(帰属問題が議論されている作品もあるが)について、あるいは彼にまつわるエピソードなどについて知っていると、思わずニヤリとさせらる箇所があった。
ただしレオナルドが古代ギリシャ語やラテン語の素養が高かったような描写がなされているけれど、その点は賛否がわかれそう。

章によって視点が頻繁に変わり、そのつど主人公アゴスティアーノ神父の一人称と、レオナルドをはじめとするその他の人物の三人称が切り変わるのだが、それがけっこう読みづらい。おそらくアゴスティアーノ神父の回想という形式をとったから彼の一人称視点を残したのだと思うけれど、三人称視点では神父が知りえないことも描写されており、ふたつの視点のつながりが悪い。さして人称を使い分けるメリットを感じなかったので、思い切ってすべて三人称にした方が良かったように思う。

(以下はかなり重大なネタバレのある感想)

著者による前書きには、「中世およびルネッサンス期のヨーロッパの人々は、太古から伝わる象徴やイコンの意味を理解する能力をまだ失っていなかった。当時、読み書きできるのはごく一部の者にすぎなかったが、柱頭の彫刻や絵画に描かれた像、道に立つ標識を、いつどんなふうに解釈すべきかはだれもが知っていた」とある。
しかし本作で《最後の晩餐》に隠されたとされる暗号は、ラテン語の教養がある人にしか解けないものである。本作中のレオナルドがいくらそのような暗号を広めようと意図していたとしても、それではほとんど市井の人々に「グノーシス」が伝わるはずがない。謎解きにおいて図像をイメージとしてだけで解読可能なものにしなかった点は、おおきなマイナス要素だと思う。
最後の晩餐の暗号Amazon書評・レビュー:最後の晩餐の暗号より
4781613152



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