(短編集)

蠅の帝国: 軍医たちの黙示録

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種別
短編集
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あらすじ

2013年12月24日 蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)

日本占領下の東南アジアに、B29の大空襲を受けた東京に、原爆投下直後の広島に、そしてソ連軍が怒涛のように押し寄せる満州や樺太の地に医師たちの姿があった。国家に総動員された彼らは、食料や医薬品が欠乏する過酷な状況下で、陸海軍将兵や民間人への医療活動を懸命に続けていた。二十年の歳月をかけ、世に送り出された、帚木蓬生のライフ・ワーク。日本医療小説大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

評判

蠅の帝国: 軍医たちの黙示録の評価:

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蠅の帝国: 軍医たちの黙示録の総合評価:

8.15/10点 レビュー 27件。

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No.27
(4pt)

「人間」のリアルを疑似体験

“新しい戦前” である現代に、2020年代を生きる現代人が読んでおくべき「戦記小説」というべきか。「戦争の」ではなく、「戦場」のリアル、戦争の勇ましい大言壮語や「正義」とは別次元に繰り広げられる、実に生々しい、死と病、生への執着、恐怖、絶望、諦念、残虐さ、親切さ、ずる賢さ、したたかさ、誠実さ、国籍の垣根を越えた人類愛、男女それぞれの性事情、人間持つ実に伸縮自在で身勝手な「身内―他者」による差別観念など、あらゆる角度から、「人間」のリアルを読者は疑似体験できる。ミサイルや爆弾、戦車や戦闘機を国がふんだんに所有すれば人々の平穏な暮らしが守られるなどと言う、政府のプロパガンダ、マスメディアが振りまく「妄想」から解き放たれるために、この国、ニッポンの人民が舐めた80年前の辛酸を、「思い出す」手掛かりにしてはどうか。

 作家であり精神科の医師である帚木は、15人の軍医らが体験した事実と証言、歴史資料をもとに、15の短編小説として寓話を再構成している。大空襲下の東京本所で、広島の原爆野で、関東軍遁走後の奉天で、銃後の瀬戸内で、ソ連軍侵攻下の樺太で、米軍の弾薬降り注ぐ沖縄摩文仁の丘で、ジャワ島で、習志野で、満州チャムスで、大日本帝国の軍の将校であり、医師/医学生である彼らは、それぞれの任地で兵隊・捕虜・住民・患者らの求めに応じて、与えられた限られた物資と時間的制約の中で、判断し、必要な処置を行ってゆく。決してドキュメンタリーではないのだが、作家帚木が実に冷静な文体で、個々の軍医の実体験に基づいて「物語」を再構成しているので、読者はそれに引き込まれざるを得ない。

 政治社会学的な読み方もできる。医師という存在は、国家と軍による人民支配の「道具」でもあること。だからこそ、医大を各地に増設し、軍医の「員数」増やすことが戦争国家の重要政策だったことも見て取れる。また、「命を守る能力がある専門職」と見做されるがゆえに社会から尊敬され「権威」が与えられているという「知識」の権力性や、「命を守る」という崇高な志と併存しうる、個々の医師の人格的多様性と「この世」を生きる人としての経済的欲望の存在も見える。国家、軍という組織の人間として「末端」とは言え「将校」として課せられる社会的責任。医学研究、症例・病態の研究に対する科学者としての意欲。社会における一種の「階級」であり「身分」であり「家業」である医師層の意識と生態はいかなるものか、を一般読者は垣間見ることもできる。魯迅の『賢人、馬鹿、奴隷』に例えるなら、軍医は間違いなく「賢人」、インテリであり、体制内「プチブル」でもあるのだが、ただそれだけという訳ではないのだ。抑圧構造を理解しえいない哀れな「奴隷」兵隊、庶民はあまた登場するのだが、残念ながら、「戦前」の日本に秩序=支配構造のアウトサイダーである「馬鹿」は登場しない。現代日本に必要なのは「馬鹿」であろう。

蛇足:出版社が付けたであろう副題「軍医たちの黙示録」は全く相応しくない。終末思想も神の啓示もない。黙示文学ではまったくない。端的に無教養な誤り。
蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)より
4101288240
No.26
(4pt)

「人間」のリアルを疑似体験

“新しい戦前” である現代に、2020年代を生きる現代人が読んでおくべき「戦記小説」というべきか。「戦争の」ではなく、「戦場」のリアル、戦争の勇ましい大言壮語や「正義」とは別次元に繰り広げられる、実に生々しい、死と病、生への執着、恐怖、絶望、諦念、残虐さ、親切さ、ずる賢さ、したたかさ、誠実さ、国籍の垣根を越えた人類愛、男女それぞれの性事情、人間持つ実に伸縮自在で身勝手な「身内―他者」による差別観念など、あらゆる角度から、「人間」のリアルを読者は疑似体験できる。ミサイルや爆弾、戦車や戦闘機を国がふんだんに所有すれば人々の平穏な暮らしが守られるなどと言う、政府のプロパガンダ、マスメディアが振りまく「妄想」から解き放たれるために、この国、ニッポンの人民が舐めた80年前の辛酸を、「思い出す」手掛かりにしてはどうか。

 作家であり精神科の医師である帚木は、15人の軍医らが体験した事実と証言、歴史資料をもとに、15の短編小説として寓話を再構成している。大空襲下の東京本所で、広島の原爆野で、関東軍遁走後の奉天で、銃後の瀬戸内で、ソ連軍侵攻下の樺太で、米軍の弾薬降り注ぐ沖縄摩文仁の丘で、ジャワ島で、習志野で、満州チャムスで、大日本帝国の軍の将校であり、医師/医学生である彼らは、それぞれの任地で兵隊・捕虜・住民・患者らの求めに応じて、与えられた限られた物資と時間的制約の中で、判断し、必要な処置を行ってゆく。決してドキュメンタリーではないのだが、作家帚木が実に冷静な文体で、個々の軍医の実体験に基づいて「物語」を再構成しているので、読者はそれに引き込まれざるを得ない。

 政治社会学的な読み方もできる。医師という存在は、国家と軍による人民支配の「道具」でもあること。だからこそ、医大を各地に増設し、軍医の「員数」増やすことが戦争国家の重要政策だったことも見て取れる。また、「命を守る能力がある専門職」と見做されるがゆえに社会から尊敬され「権威」が与えられているという「知識」の権力性や、「命を守る」という崇高な志と併存しうる、個々の医師の人格的多様性と「この世」を生きる人としての経済的欲望の存在も見える。国家、軍という組織の人間として「末端」とは言え「将校」として課せられる社会的責任。医学研究、症例・病態の研究に対する科学者としての意欲。社会における一種の「階級」であり「身分」であり「家業」である医師層の意識と生態はいかなるものか、を一般読者は垣間見ることもできる。魯迅の『賢人、馬鹿、奴隷』に例えるなら、軍医は間違いなく「賢人」、インテリであり、体制内「プチブル」でもあるのだが、ただそれだけという訳ではないのだ。抑圧構造を理解しえいない哀れな「奴隷」兵隊、庶民はあまた登場するのだが、残念ながら、「戦前」の日本に秩序=支配構造のアウトサイダーである「馬鹿」は登場しない。現代日本に必要なのは「馬鹿」であろう。

蛇足:出版社が付けたであろう副題「軍医たちの黙示録」は全く相応しくない。終末思想も神の啓示もない。黙示文学ではまったくない。端的に無教養な誤り。
蝿の帝国―軍医たちの黙示録 Amazon書評・レビュー: 蝿の帝国―軍医たちの黙示録より
4103314192
No.25
(4pt)

軍医達の苦悩

戦時下、医薬品が少ない中、為す術も無い軍医達の無力感。兵隊達が死んで逝く。色々な戦地での各軍医の苦悩を集めた短編集。よく調べて書かれています。
蝿の帝国―軍医たちの黙示録 Amazon書評・レビュー: 蝿の帝国―軍医たちの黙示録より
4103314192
No.24
(4pt)

軍医達の苦悩

戦時下、医薬品が少ない中、為す術も無い軍医達の無力感。兵隊達が死んで逝く。色々な戦地での各軍医の苦悩を集めた短編集。よく調べて書かれています。
蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)より
4101288240
No.23
(3pt)

源氏物語の話かと思っちゃいました。

帚木蓬生さんの本です。
最初、源氏物語の本かな、とか思っちゃったんですね。「帚木」(ははきぎ)も、「蓬生」(よもぎう)も、どちらも源氏物語の巻名だからね。
だから、ははきぎよもぎう、それで帚木蓬生なのかな、とか思ってたんですが、ちがうみたいね。「ははきぎほうせい」が正しい読み方のようです。
「空爆」「蠅の街」「焼尽」「徴兵検査」「偽薬」「脱出」「軍馬」「樺太」「土龍」「軍医候補生」「戦犯」「緑十字船」「突撃」「出廷」「医大消滅」の十編がおさめられています。
軍医で太平洋戦争を戦った人たちの短篇で、どれもが戦争体験の濃淡があったりします。
とりあえず、読むと、戦争という行為が、いかに人的リソースを消耗させるかがよくわかります。
蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)より
4101288240

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