(短編集)
浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上
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浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上の総合評価:
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全1件 1~1 1/1ページ
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シリーズ6巻目。今回はトリック重視な印象。魔方陣の数学的美しさを伴った大トリックの「遊星からの問題X」、二次関数と京野菜を用いた見立て殺人の必然性が秀逸な「京都、別れの二次関数」です。 | ||||
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綺麗な本と発送も早くて購入してよかったです。 | ||||
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キレイでしたよ | ||||
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本シリーズも5さつめ第6巻(カウントは合っている)は豊島区、大田区、山梨そして京都を 舞台とした連作短編。 話が進むに従い、なぜかマダム・エミーと一緒におでんを食べる武藤と渚、鑑識たちが 拉致されて毒ガスの危機が迫っているのにエステを体験する渚、生徒を人質に立て こもった現場にケータリングを装い、意外と本格的な料理を作る刑事たち、道に迷い 山奥の屋敷に助けを求めるなど、シリアスな事件とは対照的な登場人物たちのユルさがより際立っている印象を受けるとともに、このユルさ加減が本作のセールスポイントなのだろう。 (そういう意味では大沢在昌が書くような本格警察小説とは対をなすものと考えることができる) 『おでん屋台「あんせるめ亭」にて』(プロローグ) 高木源一郎亡き後『黒い三角定規』の新代表に就いたのは、かつて武藤が社会から隔離された 自給自足コミュニティで共に生活を送っていた少し年上の男、森本洋一郎だった。 武藤龍之介が高架下のおでん屋台で、まだ新代表の森本と接触していないマダム・エミーと 浜村渚に自身の過去を語るという形で描かれており、資本主義と所有の概念を否定し、 自給自足を実践する組織の代表に洗脳された両親に連れられ栃木のコミュニティで暮らして いたときに森本洋一郎と出会い、詐欺の容疑で組織のトップが逮捕されたことにより崩壊する ことで『還俗』できたものの、自分たち一家に対する『自身の弱さゆえに搾取された愚かな家族』 という世間からの風当たりは非常に強かった――という過去を通じ、このプロローグが今回以降 のストーリーの節々で大きな要素であることを示唆すると同時に、モデルと思しきとある実在の 組織に対する批判であると受け取ることができる。 『遊星よりの問題X』 SF映画の古典から名付けられたこの章は、ゲームセンターのクレーンゲーム(作中ではなぜか 『UFOキャッチャー』というセガが所有する商標名を使用している)のぬいぐるみが次々と 爆発する事件が発生し、大山あずさが現場に到着するも、普段ならほぼ同時に到着する 鑑識23班のメンバーが現れないというトラブルが発生し、現場に向かう道すがら彼等を 乗せた二台の警察車両が急襲され、メンバーごと拉致されていることが分かる 何とか通信指令センター経由で対策本部に電話をかけてきた班長・尾財はぬいぐるみに 囲まれている中、耳の中に突っ込まれていたメモを読み上げるが、それは都道府県の 位置関係を文章で記したもの、しかもその位置関係がおかしいという、まるでなぞなぞの ようであった。そして鑑識たちは自分が九分割されたUFOキャッチャーの中に閉じ込め られていることを知る――というのが冒頭のあらすじ。 魔方陣(マジックスクエア)の話かと思いきや実は立方陣(マジックキューブ)の話であったと いう『二段オチ』もさることながら、新代表・森本洋一郎が浜村渚の能力を値踏みし、 自身と対峙するに値する人物であると認めたこと、逆に能力の無い者は容赦なく切り捨てる という残虐性の呈示そして「テロではなく革命である」という森本の言葉は読者に対し改めて 『政府(および警察と渚)=善』『黒い三角定規=悪』という単純な構図ではないということ を突き付けている。 『鳩の巣が足りなくても』 理系教育削減を目指す、文系および芸術関係の有識者で構成される『教科書再編委員会』 のメンバーを次々と襲う元中高一貫校の数学教師、『ぽっぽ・ザ・ディリクレ』。 彼による犯行予告により全国の公立学校は急遽休みとなるものの、法的拘束力がないため 一部の私立校は通常どおりの授業を行う。そして『ぽっぽ・ザ・ディリクレ』があらわれた のはかつて自分が勤めていた中高一貫校。彼により『3年B組』の生徒たちが人質となり、 立て籠もる事件が起きる――が冒頭のあらすじ。 本編は『n個の物をm個の箱に入れるとき、n>mであれば、少なくとも1個の箱には1個 より多い物が中にある』という『鳩の巣原理』がテーマとなっているだけではなく、 『3年B組』はは3年B組ではなかったという二段オチのネタとしてうまく作用している ことが分かる。 『パップス・ギュルダン荘の秘密』 『黒い三角定規』のメンバーを名乗り動画サイトに犯行声明じみた内容を投稿した 「チェビシェフ大将」が模倣犯であることが分かり、山梨への出動が空振りとなった 渚、武藤、瀬島、あずさの四人。雨が降る山道、あずさが運転する車で道に迷い、 戻ろうにも土砂崩れで前に進むしかない中、『Pappus–Guldinus Mansion』なる 屋敷にたどり着く。 道路が寸断され、悪天候のため外に出ることができないという、ジャンルとしては 『館もの』であるが本編の中では最も短く、本作では珍しい『日常の謎』となっている。 『京都、別れの二次関数』 動画サイトに舞妓姿で烏丸五条の交差点に立つキューティー・オイラーこと皆藤ちなみが 意味ありげなことを言う動画が投稿された。 模倣犯「チェビシェフ大将」が都内の道路の至る所に病原菌が入った試験管を置くという 事件が発生し、人的資源を割けない対策本部は武藤一人を京都に派遣し、武藤は時を 同じくして修学旅行で京都を訪れている渚とその友人たちと、奈良の大学院に通う 大学院生、江川花子(第1巻log1000.『ちごうた計算』参照)が店番をしている丸太町通の 御所近くにある青果店で落ち合う。 京都府警を訪れた武藤は、三日前から現場に京野菜を残した連続殺人事件が発生した上、 かつては京都の野菜の流通を仕切り、現在では京野菜の普及、広報活動を行っている 京都野菜協会を主宰する菜条家に、矢尻の部分に『黒い三角定規』のカードが仕込まれた 火矢(どうやって?)が放たれたことで、『黒い三角定規』の関与が疑われる一方、 彼等らしくない行動原理であるため、裏カジノへの関与で野菜協会を追放されたある男 が捜査線上に浮かび上がる。 一方武藤は、キューティー・オイラーと思しき女性が助けを求めているような幻聴の ような声を耳にする。果たしてこの事件と『黒い三角定規』は関連があるのか。そして キューティー・オイラーと思しき声の意図は――が序盤のあらすじ。 数学と京都の地形をうまく融合させているとともに、高木源一郎の死と森本洋一郎の 代表就任をきっかけに『黒い三角定規』の内部統制がほころびかけているさまが 描かれている。そしてキューティー・オイラーの渡米は数学者に対する政府の弾圧への 警告と、事実上の亡命であることが暗喩されていることが分かる。 | ||||
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ニガテだった数学が楽しく読めてます。 待ち時間に気軽に読めるのがうれしいです。 シリーズ全踏破したいです。 | ||||
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「パップス・ギュルタンの定理」という名は覚えてなかったですが、"回転体の体積=断面積x(重心が回転する円周長)"って、かっこいいなと思いました。確かにこれならドーナツの体積にπ^2が出て来ます。パップスは4cのエジプト、ギュルタンは17cのオーストリアの数学者だとか。このシリーズは、建物が出てくるとき、不気味さがリアルに感じられます。 暴力にも負けない数学/論理。それを嫌って数学を追放する官吏/文科省というのは、日本らしい本質的な設定かと。ただし、それに暴力で対抗したのでは意味ないですが...。歴史も筋系なのですから勉強してほしいところ。 近代の父:デューラーが魔法陣も研究して絵の中に書いていたこととか、ディリクレという数学者の「鳩の巣より鳩が多ければ、2羽以上鳩が入る巣がある」という"鳩の巣原理"とかも初めて知りました。「三角形の重心って底辺から1/3の所だったっけ?」とか、「楕円の1つの焦点で話すと、もう1つの焦点にその声が集まる」だとか、そういえばそうだったということも。そういうことを考え続ける人生もいいかもと思えて来る本です。 | ||||
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