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Tetchy さんのレビュー一覧
Tetchyさんのページへレビュー数902件
全902件 901~902 46/46ページ
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本作は私にとって最後のシェルダン作品となった。既にこの時は社会人となっており、シェルダン以外の海外作品もそれなりに数を読んでいた。
そしてアカデミー出版の超訳という訳し方が実は書評家たちにはかなり不評で、しかも円滑な訳文のために原文を削除していることやさらには物語の構成自体も変えていることも知った。 また今まではそれほど読書に熱心ではなかったが、この頃になると島田荘司の諸作とも出逢い、個人的に所有する本が飛躍的に増えることになった。そんなことも契機になり、ハードカバーで出ていたシェルダン作品はこれが最後になってしまった。 さて本作では作者自身も脚本家として関わった銀幕の世界、世界のショービズ界の頂点ともいえるハリウッドを舞台にスーパースターを夢見る青年トビーが波乱万丈の物語が繰り広げられる。ハリウッドの内幕を描いた作品だと記憶があり、確かこのトビーという青年はコメディアンを目指していたと思う。そしてエンタテインメント界に付き物の人を狂わせる魔力という物に取り付かれ、手当たり次第に女性に手を付けるんではなかったかな?なかったかな?というのは、実はこの作品についてはもうほとんど忘却の彼方にある。当時この本について一行感想というのを残していたが、それには「コメディアンを主人公にしているのにギャグが寒すぎるのは致命的」とだけあった。 まあ内容に触れた感想ではないので楽しんだのかどうかは解らないが、こういう否定的な意見を残していることからも私がシェルダン作品に飽きを感じていたのがわかる。 結局、ここまで読んで振り返るとシェルダン作品は『真夜中は別の顔』をピークとしてそこから下っていったように思う。だが外国作家の作品を読むこと自体が初めてだった(ホームズ物の児童用リライト版は除いて)私にとってシドニー・シェルダンの作品は私に海外作品への門戸を開いてくれた。今の私の海外ミステリ好きの礎は間違いなくシェルダンによって築かれたと云えるだろう。 すでにこの世を去り、ほとんどの人が過去の作家と思っているだろうし、それは私も同じだ。今更彼の未読作品を読む気にはなれない。 しかし忘れ去られるには勿体無い作家だ。なぜなら彼の作品は面白いからだ。ドイルやルブラン、クイーンやカーが没後の今でも読まれるように彼の作品も後世に残してほしいものだ。 ありがとうシェルダン。合掌。 |
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シドニー・シェルダン原作の作品をドラマ化することで数字が取れることが解ったのか、テレビ朝日は本作もドラマ化したらしい。しかしそれは土曜ワイド劇場という2時間枠でのドラマ化であった。しかし本作は実は昔にオードリー・ヘップバーン主演で映画化されたらしいが、全く知らなかった。
プロットとしては比較的単純。大企業の社長が事故で亡くなり、莫大な遺産を相続した娘が他の親族から命を狙われるという物で、ミステリの定型としても非常に古典的であるといえるだろう。 ストーリー展開はもう定石どおりで、最初に命を狙う会社の重役連中の人となりがエピソードを交えて語られる。それぞれに大金が必要な事情があり、誰もが命を狙ってもおかしくない。 で、娘のエリザベスが何度も命を落としそうになるわけだが、やっぱりこの辺の危機また危機の連続というのは確かにクイクイ読ませる。 ただここまで来ると読む側もこなれてきて、パターンが読めてくるのだ。特にシドニー・シェルダンの人物配置が常に一緒なのが気になる。主人公はいつもヒロインで、それをサポートする魅力的な男性がいる、そして2人で降りかかる災難や危難を乗り越えていく。絶体絶命のピンチになった時にこの男性が颯爽と現れ、カタルシスをもたらすというのが、共通しており、それは藤子不二雄の一連のマンガのキャラクター構成がほとんどの作品で共通しているのに似ている。いじめられっ子の主人公にそれを助ける特殊能力を持ったキャラクター(ドラえもん、怪物くん、オバQ、etc)、いじめっ子とその子分、そして憧れのヒロインとほとんどこの構成である。これは両者が自分の作品が売れる黄金の方程式を見つけたということなのだ。で、私はこういうマンネリに関しては全く否定しない。なぜならマンネリは偉大だからだ。この基本構成を守りながらもヒットを出すというのは作者のヴァリエーションに富んだアイデアが必要だからである。そしてこの両者はそれを持っているのだ。これはまさに才能と云えるだろう。 さて本作では他の作品と比べて、意外と先が読める。さらには最後に明かされるエリザベスの命を狙う犯人も案外解りやすい。巷間ではそれが他の作品よりも評価がちょっと低い原因となっている。でもシェルダン作品を初めて読んだ人はどうなんだろうか?私は今まで何作か読んできて、作者の創作テクニックに馴れてきたがために見破れたように思える。なんせこの時まだ高校生だし。 しかし本作は私にある一つの希望を与えてくれた本でもある。本作でヒロインのエリザベスをサポートするリーズ・ウィリアムスという人物の生い立ちだ。彼は貧しい家の出ながらも一生懸命努力して一流企業でその地位を固める。それだけならばまだよくある話なのだが、彼は自らを磨き、どんな場所に出ても恥ずかしくない、社交界でのマナーを身に付け、洗練された人物となり、周囲の信頼を得るのだ。それがゆえに自分が貧しい出自であったことをちらりとも窺えさせない。 私も決して裕福な家庭ではなく、それどころかむしろ貧しい家庭の部類だったといえよう。しかし本作でのリーズの生き様は努力すれば自分も洗練された男になれるかもしれないという希望を与えてくれた。今の自分を振り返って果たして自分が洗練されているかどうかはわからないが、両親が私を育てくれた環境よりは裕福だし、それなりにいいお店に出入りもでき、そういう場所での振舞いもそつなく出来るようになった。思えば今の自分があるのはこのリーズの影響が強かったように思う。高校のときにこの本を読み、リーズのような男に出会えたことは私にとって非常な幸運だったのだろう。 本書はシドニー・シェルダンのこれまで読んだ所作では出来栄えという点では確かに面白いけれども並みの部類になるだろうが、このリーズというキャラクターのお陰で私の中ではちょっと特別になっている。 |
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