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トラ さんのレビュー一覧

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レビュー数25

全25件 21~25 2/2ページ
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No.5:
(5pt)

「掟上今日子の推薦文」の感想

「忘却探偵シリーズ」の第2弾で、「掟上今日子の備忘録」の続編です。
最初は、三編の連作短編かと思いましたが、読んでみると、全三章の長編小説のよう(プロローグ的な短編と二章の長編)だとわかりました。
語り手が、前回の青年・隠館厄介(かくしだて やくすけ)では無くって、親切(おやぎり)守という警備会社に勤める青年に変わっています。
そのために、掟上今日子の特徴などが、一から紹介される形になっています。
シリーズ第2段とは言え、この本から読み始める読者も居るので、最初からの詳しい紹介があっても良いとは思うのですが、私としては、前作を読んだときに、彼女の過去のことがほとんど触れられていないまま話が進んでいくので、次作以降に少しずつ、もう少し突っ込んだ話がされるものと期待していました。そういう意味では、少し肩すかしを食ったような感じで読み終えました。
唯一、彼女はお金に対する執着心が強い・・・、と言うことだけは、よくわかりました(笑)

また、本作には、登場人物も限られているので、犯人捜しという興味も薄らいできていました。
話は、親切守の視点で話が進んでおり、登場人物は、探偵役の掟上今日子を含めても4人なので、残る二人のうち、一人は被害者で、もう一人が犯人でしかあり得ない・・・と思いながら読み進めていきましたが、はたして・・・?

今回の話では、彼女の特徴である、寝て起きてしまうと、それまでのことはすべて忘れてしまうという、「忘却探偵」だと言うことでの面白さが前回ほどには感じなかったのは、やはり目新しさがあまり無かったからでは無いでしょうか?

とは言え、それでも最後まで楽しく読めましたし、第三章の「推薦する今日子さん」というタイトルの意味も納得しましたので、次回も期待したいと思っています。
次回は、この回で登場してきた親切守が、ワトソン役として定着するのでしょうね。
掟上今日子の推薦文 (講談社文庫)
西尾維新掟上今日子の推薦文 についてのレビュー
No.4:
(5pt)

「叛徒」の感想

何度も途中で挫折しかけたので、読み終えるのに時間が掛かりました。
退職後のヒマを持ち余している状態なので、何とか読み終えましたが、仕事をしていた頃なら、途中で放り出していたかもしれません。
いくら面白い、良く出来た話しであっても、登場人物に共感できなければ、話しに身が入りません。

話しは、最後には上手く行き着くことろにおさまり、読後感が良いように書かれて居るのですが、それも気に入りません。
あまりにも都合が良すぎるので、すべて絵空事のようです。
もっとも、これは小説なので、ほとんどが嘘っぱちだと言われてしまえばそれまでですが、それでもそれなりに読者を納得させなければ面白くありません。嘘をいかに本当らしく見せるか・・・と言うところも、作者の腕の見せ所です。

話しとしては、面白くなる要素がたくさんあるのですが、あり得ないエピソードの積み重ねだし、しかも、最終的にそれらが上手く円満におさまってしまうと言うのは、どうなのかな・・・と思ってしまいます。
叛徒 (講談社文庫)
下村敦史叛徒 についてのレビュー
No.3:
(5pt)

「十八面の骰子」の感想

宋の時代の話で、巡按御史・趙希舜(ちょうきしゅん)を主人公にした連作短編ミステリです。
「巡按御史」とは、皇帝直属の監察官のことで、身分を隠して任地に赴き、地方官吏の不正の有無を吟味するのが役目ということですが、不正を発見すると皇帝から直筆のお墨付きを示して地方官吏を断罪する・・・と言うところは、本の紹介にあるように、中国版「水戸黄門」と言ったところでしょうが、内容は全く違いました。
中国版「水戸黄門」というキャッチコピーを見て、私は購入を一時ためらいましたが、このコピーが読者の購入意欲をなくしているのかも知れません(笑)

登場するのは、巡按御史・趙希舜に加えて、従者に傅伯淵(ふはくえん)、護衛役に賈由育(かゆいく)の三名ですが、途中で、元軽業師の茅燕児(ぼうえんじ)と言う女性が加わってきます。
巡按御史は趙希舜なのですが、小柄で童顔(なので、貫禄が無い)のために、彼の代理として傅伯淵を巡按御史として表に出すという所はなかなか面白いです。
毎回の話にちょっとしたミステリのあじわいがあるので、面白く読めましたが、登場人物それぞれに個性があるし、彼らの経歴が、各話にまたがって少しずつ紹介されていくという書き方も良いですね
各話を追うごとに、彼らの生い立ちや出会いの秘密(?)などが少しずつわかってくると言うところも、興味を引くところです。

とくに、趙希舜と傅伯淵には、どんな過去が二人の間にあったのか、気になります。
続編を読んでいくと、そういったことが徐々に解明されるのでしょう。

ただ、名前や地名に、難しい漢字が登場してくるので困ってしまいました。最初にはフリガナが振ってありますが、二度目からは当たり前ですがフリガナはありません。そのたびにフリガナがつけられて居るところ戻って確認という作業がちょっと面倒くさかったです。

話としては、表題作の「十八面の骰子(さいころ)」と「黒竹筒(こくちくとう)の割符」が気に入って居ます。

余談ですが、正多面体には正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の五種類しかないのに、「十八面のサイコロ」ってどうなっているんでしょうね・・・?
普通のサイコロは、正六面体なんですが、十八面のサイコロって表面が正多角形じゃ無いのかも知れません。
十八面の骰子 (光文社文庫)
森福都十八面の骰子 についてのレビュー
No.2: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

「夢玄館へようこそ」の感想

本人の知らない間に、いつも間にか事件やドタバタ劇に巻き込まれてしまうという、いわゆる「巻き込まれ型」のミステリです。
こういった話に登場する主人公は、主体性がなく、誰かにひきずられてしまって、いろんな問題に足を突っ込んでしまい、いつの間にか抜けなくなってしまう・・・といったパターンが多いので、何かすっきりしないことがよくあります。
読んでいても、つまらなくは無いし、それなりにページは進みのですが、登場人物に共感できない話って、イマイチ面白くないですね。
ちょっと自分を見ているような気がしないでもないので、その辺も気に入りません(笑)

でも、他の登場人物が、そろいもそろってユニークな人ばかりが勢揃いしています。
ちょっと冷たくって、知らん顔をしているショップのオーナーが、本当は管理人であった主人公の伯母と話が通じていて、陰で支えてくれていたり、親切そうで、良い人のような顔をして声をかけてくれる人が、一皮むくと実は自己中な人物だったりと、ちょっと現実でもこういうタイプの人間が居るような気がして、その辺はなかなか面白く読みました。

最後の二話あたりで、この『夢玄館』に、本腰を入れて関わっていこうとする主人公の姿勢が見えてきた頃から、話は面白くなってきましたし、共感するところも出てきました。

でも、夢を追いかけて・・・というのは、なかなか簡単な事じゃ無いですが、退院してきた伯母さんが抱いているような密かな夢(何かは秘密)程度なら、私にも持てそうです(笑)
夢玄館へようこそ
水生大海夢玄館へようこそ についてのレビュー
No.1: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)
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「あぶない叔父さん」の感想

六編の連作短編ミステリです。
高校生の俺・斯峨優斗(しが ゆうと)の視点で全話語られるという形式です。
三話目の「最後の海」を除き、「何でも屋」をしている優斗の叔父さんが、事件に深く関わって来る・・・と言う流れになっています。

一話と二話を読んだところでは、このシリーズでは、こういうパターン(どんなパターンかは、読めばすぐにわかりますので、ここでは省略です)で話が推移していくんだなと思っていたところ、第三話の「最後の海」では、優斗の叔父さんが、名推理を披露し、事件の犯人や犯行の方法を指摘してしまいます。
この後の第四話からの流れに、何か変化でもあるのかと思っていましたが、四話目以降はまた、最初のパターンに戻ってしまいました。

一話から五話にかけて、優斗の周辺の出来事でいろいろと気になることがあったので、書き下ろしの最終話・「藁をも掴む」で、一気に収束してしまうんだろうと、密かに期待しながら読み進めていきました。

ところが・・・です。
最後の最後に、何か大きな仕掛けでもあるのでは・・・と期待をしていた最終話ですが、それまでの五話と同じように、あっさり終わってしまったのには驚きました。
途中で、思ったような展開になりかけましたが、肩すかしを食らわされたような感じで読み終えました。
となると、第三話の解釈を、再度し直さなければいけなくなりそうですね・・・。

この作品で麻耶雄嵩に初めて出会った読者の方々は、ちょっと面食らってしまうだろうと思いますし、これまで慣れ親しんだ読者にとっても、賛否が大きく分かれそうな作品ですね。
あぶない叔父さん (新潮文庫)
麻耶雄嵩あぶない叔父さん についてのレビュー


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