アフターダーク

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評判

アフターダークの評価:

3.48/5点 レビュー 468件。 C ランク

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平均点3.48pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全287件 241〜260 13/15ページ
No.47
(5pt)

夜に読みたい

以前の作品に比べ、今回は作品内部の世界を時間的に制限することで、描写や会話に重点を置いている、と思いました。(「トニ-滝谷」などの短編などを除けば)「スプートニクの恋人」あたりから本格的に意識するようになった三人称の文体が、より洗練されていて鳥肌が立ちました。レトリックのリズミカルかつバリエーション豊であることが、時間推移が遅く冗漫になりがちな構成にもかかわらず牽引力と求心力を与えている、と思いました。散文詩みたいですが、小説です。輝いている文体でした。また、三人称の視点(神の視点)の「私たち」を、「カメラ」という視座を設けて明確にすることで、「私たち」が「他の世界」に「入っていくこと」も明確になっている、と思いました。これは映画的なスリル・ダイナミズムを生む以上に、興味深いことだと思いました。あと、村上春樹さんの「僕」という一人称の作品には、「個人主義」に徹底しようとする意志のようなものが感じられましたが、三人称を意識し始めてから、その意志のようなものが、ちょっと変化してきているのかな、と個人的に感じました。人称の変更に伴う感興に過ぎない、と言われればそれまでですが。いずれにせよ、この作品は「国境の南、太陽の西」「スプートニクの恋人」と同じように、次の長編へ向けてのウォームアップだと思うので、次の作品が楽しみです。マリとエリが一緒に眠るところがとても美しかったです。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.46
(4pt)

夜を護るもの

村上さんの本を読まなくなって随分と長い時間が過ぎました。久しぶりに読んだ新作は、中年男性にお勧めできる内容です。蘇生すること。壊れかけた人間に生の息吹がもたらされること。村上さんはそのような可能性を、絵空事ではなく描きたいと長年思い続けていたように推測します。癒しという言葉にかなりアレルギーを持つものとして、彼が以前に「癒されるのではなく、赦されるのだ」とどこかで書いていたことを想起します。美しくて、しかし内面はよくわからず(そもそも内面があるのかどうかもわからず)自分から悪夢のような眠りを続けるエリを、作者は懸命に赦そうとします。感情移入することが困難な登場人物への、このまなざしに作者の成熟を感じます。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.45
(5pt)

detouchmentからcommitmentへ

~村上春樹の小説の中心的な主題は長い間「喪失感」と「detouchment(関わりのなさ、他人との距離)」であったように思う。しかし、地下鉄サリン事件被害者へのインタビューや阪神大震災の追体験などを通じて、社会やコミュニティーに積極的に関与すること(commitment)に関心が移ってきたらしく、河合隼雄との対談でもそのことに触れている。本書は19歳の女性のある夜~~の7時間ほどの出来事を軸としているが、中心的な主題は主人公が感じる喪失感をcommitmentによって修復していこうとするもので、前者よりも後者に重点が移ってきている点が新しい。登場人物のほぼ全員に名前が与えられ、その描写はリアルである。また、文章表現は意図して映像的なものになっていて、今までの作品とは趣を異にする。にも関わらず、そこには村上春樹~~でなければ表現できないであろう「核」のようなものがあり、具体的な描写とは反対に、読後に残るのは普遍的で抽象的な概念である。detouchmentからcommitmentへ、方向を大きく変えつつある村上春樹の転換を象徴する作品として評価したい。~
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.44
(5pt)

『け聴を歌の風』~「僕」から「私たち」への不正確な鏡

 帯にわざわざ「『風の歌を聴け』から25年」と書いてある。この作品は、村上春樹が四半世紀かけて問い続けたモチーフのリフレインなのだ。もっと言えば、『風~』と「対」になった作品なのである。 もちろん、二作品は舞台も出来事もまったく違う。それよりもまず、『風~』が一人称の主人公「僕」の語る物語だったのに対して、本作の主人公は、なんと「私たち」なのだ。 一見、高橋やマリが主人公に見えるが、そうではない。この物語の中では「私たち」だけが唯一、時間軸のなかで、「今」を背負っている。 一人称複数(!)の「私たち」が、まるで実験室で粒子でも観察する科学者のように、物語を俯瞰しているのだ。しかも、そんな「私たち」は、三人称の登場人物たちに干渉してはいけないはずなのに、時に思わず登場人物に「逃げるんだ!!」などと叫んでしまう。 書き手でもあり、読み手でもあり、そのどちらでもない「私たち」の、常に現在進行形の記述。 この構造において、本作は『風~』と「対」であり、不正確な鏡なのだ。 つまり、どちらも「『何かを書くということ』を書く」という、無謀かつ真摯な挑戦なのである。『風~』が「僕」の側から一方的に世界を限界づける試みだとすれば、本作は、「私たち」によって「僕」(や高橋、マリなどという主人公性)をも俯瞰し、世界を再構成する企てなのだ。 そんなベースラインの上で、「個人とシステム」「偶然と必然」「記憶や意識と自己同一性」「語り得るものと語り得ぬもの」などのモチーフがジャムセッションのように奏でられていくのである。 評価の分かれる作品かもしれないが、僕は、圧倒的に支持したい。(なにしろ、こうしていくらでも書くことがある。続きは他で書きますが) 最後に、本作中ラブホの名前の由来である映画『アルファヴィル』の中から。「すべては語られた。 言葉が意味を、そして意味が言葉を変えない限りは」
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.43
(5pt)

村上春樹の本ってかんじ

待ちに待った村上春樹の新刊。なんとなくカフカの後の作品なので、もっと心理色が強いのかなあと思っていたけれども、そうでもなく、どっちかというと処女作である『風の唄を聴け』にちかい感じの印象を受けた。彼の作品はいつでも後を引くけれども、良い意味で今回も印象に残った。私は村上作品というと、『ノルウェイの森』を思い浮かべてしまうので、それに比べるとちょっと物足りない感じはするけれど、村上春樹を初めて読む、という人にはお薦め。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.42
(5pt)

新たな村上春樹の展開

9月7日,退勤後即座に購入し,ただいま読了しました。村上春樹を読んで,まもなく20年になりちます。新たな春樹が始まった,との印象をもちます。「カフカ」を読んだときに,今後もしかしたら小説を書かないのではないかと危惧しました。しかし,それは杞憂でした。作者のテーマはより深く,そして新しくなったように思えます。おそらく,今後しばしば読み返す作品になると思います。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.41
(5pt)

弟のことを思った一冊

深夜、街にたむろする若者の背景を描いている。家に居ないで外に居るのには理由がある。家に居ると苦しくて居れないから外に居るのだ。「海辺のカフカ」に続いて、”悩みの種は家族”(今回は兄弟)の話。マリとエリを基にコンプレックスについて考えるのにいい作品だと思いました。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.40
(4pt)

村上氏の答え

きょうは仕事を休んで、朝一番に書店に走りました。個人的には、「ねじまき鳥」が村上氏の作品の一つの頂点で、その後は、何処に向かっていくんだろうと、幾分はらはらしながら作品を追い続けてきましたが、「アフターダーク」はそんな私のような一読者に対する、村上氏からの最初の答えのように思われました。文体が変化していこうと、本作品には、氏の息遣いが「通奏低音」としてそこにあります。でも、欲を言わせてください。もっと、もっと、長い物語を次は読ませてください!!!もっともっと深い底まで連れて行ってください!!という意味で星4つです。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.39
(5pt)

出会いがあなたにもたらしたものは何ですか?

村上春樹ワールドに引き込まれ、一気に読み進めました。今まで出会ってきた人が、自分にどんな影響を与えてきたのか改めて考えさせられる一冊です。読み終えた後、久しぶりに会いたいと思う人の姿が頭に浮かびました。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.38
(4pt)

細かい銀色の砂のような

細かい銀色の一面の砂のような印象の残る小説。物語は感情を徹底的に排した言葉の連なりで語られる。目を離すことができない文体なので、読み進めていってはしまうが、そこには感情的な高まりというものは特にない。表層的な共感というものはまるで問題にされておらず、そのために、これがはじめて読む村上春樹という人には薦めにくいが、是迄深くコミットして読んできた人には、いつもの如く面白いと思う。じわじわと心の深い部分に砂を溜められていくような気分がある。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.37
(4pt)

一晩で人生は変わるだろうか?

一晩で人生は変わるだろうか?答えは「イエス」だと思う。変わる兆しを掴むのに一晩という長さは十分な時間である。それがこの本の読後にまず感じたことです。ぜひこの小説を読んでみてください。
アフターダーク Amazon書評・レビュー: アフターダークより
4062125366
No.36
(4pt)

カメラワーク

真夜中の街が内包する無数の出来事のうち、さほど特別でない一つのエピソードが実験的な三人称で描かれた小説。この作品は、次の下りで始まる。<目にしているのは都市の姿だ。空を高く飛ぶ夜の鳥の目を通して、私たちはその光景を上空からとらえている。広い視野の中では、都市はひとつの巨大な生き物に見える>そこでの「私たち」というのは作中の誰かのことではなく、物語に一切影響を与えない客体としてのストーリー・テラーと、それに同行する読者自身のことである。そこでは「私たち」の眼はまるで無限の性能をもったカメラのように、対象を間近にズームアップしたり、部屋のすみずみを隈なく映し出したりすることができる。ときには目いっぱいバックし、宇宙空間から望遠レンズで街全体を俯瞰することもできる。そういう「ハリウッド的なカメラワーク」で書かれた小説だと言ってもいい。これが映画的な没頭を作り出し、地味な展開のわりにダイナミックな読み応えを生み出す。ストーリー・テリングにはこんな方法論があったんだなあ。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.35
(5pt)

実験作

2004年刊行なので「海辺のカフカ」の後の作品だ。
たぶん、村上春樹氏の実験作ではなかろうか。
小難しい解釈は一切除けて、面白かった。
いきなり、浮遊する魂ような視点が登場して、
東京の上空から降りてきて、眠り続ける姉を、
本を読み続ける妹を、見続ける。あるいはその視点が
姉とともにテレビの向こう側にワープする。
もうひとつの実験は章の初めに時計があること。
それにより読者は二つの物語が同時に並行して
進行するのを知る。
最終章で二物語が合一する。
そして夜明けとともにささやかな胎動が始まる。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.34
(4pt)

登場人物たちが饒舌すぎるのが気になる

著者の考えを登場人物に語らせるのだが、饒舌すぎてリアリティに欠ける。
もっとシンプルに伝える方法もあるような気がする。
読者側の思考の選択肢が少ないのがちょっと嫌だ。
物語そのものはとても平坦なのでそれぞれの思考が軸となる。
不思議なカメラの視点があったりで、楽しめる。
何の盛り上がりも無いのに、気づいたら終わっていたのでやはり著者の筆力は凄いんだろう。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.33
(5pt)

過去の修復

ファミレスで女子大生のマリが深夜、ひとりで本を読んでいる。そこに姉の知り合いの高橋がやってくる。彼はマリともちょっとだけ知り合いだ。ジャズの名曲『ファイブスポット・アフターダーク』の話をする。これから深夜の5人の物語が始まるのだ。みんな、何とかしなくてはならない過去がある。
マリは最近は姉とうまくいっていない。美貌で白雪姫のような姉に対して、自分は取り柄のない平凡な女の子。いじめられもしたが、勉強はがんばってまもなく中国に留学するところだ。あねにぎゅっと抱きしめられたことを思い出した。
高橋は母が病死し、そのとき父が刑務所にはいっていたため、一時的な孤児になった。父とはうまくいかないので、一人暮らしをしている。
姉のエリは昏々と眠り続けている。子供の頃からモデルをやったりして周囲に合わせすぎたため、自分がなくなってしまったらしい。
しかし都会にも朝がやってくる。「いまのところまだ何も書き込まれていない一枚の白紙のようなものだ。」とはいうものの、昼間に何かが解決されるのだろうか。また夜になると何か変るのだろうか。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.32
(4pt)

色んなことがうやむやなまま

終わってしまいました。深夜に始まり夜明けに終わる群像チックな物語です。村上作品では珍しく、収束というものがあまりなかったように思えます。結果的に春樹さんの言いたいことはわかりませんでした。それでも読み終えた後すっきりした気持ちになれたのはやはり春樹さんの実力というほかないでしょう。物語としてではイマイチ足りないものがありますが、春樹的な世界観に浸りたいと言う人なら一読してみる価値は十分にあると思います。少々甘口ですが、星を四つ。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.31
(5pt)

高橋くん

もう何度も読み返している、村上春樹の作品の中でも大好きな小説。
登場人物も少ないながらカラフル。いろんな色を持つ人たちが、一夜の闇の中で、同じ時間の中で、
交差しすれ違いつながっていく。
中でも高橋くんは、数ある春樹作品すべてひっくるめて、わたしの一番好きな人物です。
なんというか、魅力的。手っ取り早く言うと付き合いたい!(笑
わたしも夜中のファミレスで、夜明け前の公園で、彼と静かに話をしたい。ねこにはんぺんをやりながら。
それはどんなにしみじみと確かな幸せをくれるだろう。その思いにひたるためにもまた、
この本を読み返してしまうのだろう。それは、果たして薄っぺらいことだろうか。。?
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.30
(4pt)

思いのほか難解ではなかった村上作品

 時刻は間もなく深夜零時。デニーズでひとり本を読む若い女性マリに、高橋と名乗る青年が声をかけてくる。彼はマリの姉エリの友人でマリにもかつて会ったことがあるという。
 この二人の出会いが、さらに何人かの人間を巻き込む深夜のドラマを生んでいく…。
 久しぶりに村上春樹の、しかも決して新しくはない小説を手にしたのは、スペイン人の友人がスペイン語訳のこの本を読み始めたからです。今、海外で最も広く知られる現代日本人作家である村上春樹。いくつか彼の作品に目を通しておくのは、今後外国の友人や取引先との会話の糸口をみつける助けになるかもしれない、そんな実利的な目的で読み始めました。
 想像していたよりも読みやすい作品でした。
 私が思うにこの物語が描かんとするのは、人間の孤独、他人との埋めがたい距離感でしょう。その痛ましいほどの寂寥感は、都会の夜を舞台にして、見事に描かれていると思います。
 そんな寂しさの中でも人間はささやかな思い出を紡いで、記憶のかけらを自分の中に積み上げていく。人生におけるそのことの大切さがコオロギという名の登場人物が口にする次の言葉からも伺えます。
 「人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないかな。(中略)もしそういう燃料が私になかったとしたら、もし記憶の引き出しみたいなものが自分の中になかったとしたら、私はとうの昔にぽきんと二つに折れてたと思う。」(250〜251頁)
 この小説は会話の分量が多いのが特徴です。現代の日本の若者にしてはエリや高橋がことのほか冗舌で論理だった物言いをするところが現実離れしている気がしないでもありません。ヨーロッパかアメリカの、明快な発言を常に求められる文化圏の若者たちのような人物たちには、それこそ距離を感じてしまうのですが、そこが村上春樹の作品を翻訳可能性の高い、海外の読者によって受容されやすいものとしているのかもしれません。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.29
(4pt)

村上春樹の小説的実験作品

この小説は、今までの村上作品とは一線を画す作品である。以下に、二点だけ述べることにする。
まず、この小説は、主に第三者的視点によって描かれている。要するに、この小説には、"僕"が登場しない。それどころか、主人公が男ではなくて、女の子になっている。これは、村上作品としては異例のことである。
"僕"の漂わせる諦観や時代への批判といったものは、姿を見せない。確かに"僕"に似たような人物は出てくるが、羊シリーズの"僕"やノルウェイの森の"わたなべ"と較べると、薄っぺらくみえてしまう。
端的に言うと、登場人物たちの内面に深みを感じることが出来ないのだ。"突撃隊"、"永沢"、"鼠"、"みどり"、"J"といった個性的な登場人物は出てこない。そして、それが要因となり、我々読者が村上作品を読んだ後に残る一種のカタルシスのようなものを得ることが出来ず、物足りなさを感じるのではないだろうか。
次に、この小説は、場面設定が他の村上作品と較べてあまりにも違う。村上作品といえば、綺麗にアイロンがけされたシャツ、読んでいるだけで食べたくなるようなサンドウィッチとコーヒー(もしくは、紅茶)、お洒落なcafeやバーといった彼の趣味や世界観を感じさせるようなアイテム群が登場するが、この小説にはそれがない。代わりに出てくるのは、デニーズのチキンサラダ、セブンイレブンの牛乳、ラブホetcとチープなものしか出てこない。極めつけは、場面設定が夜の歌舞伎町という点にあるであろう。この小説を読んでも、例えば、ノルウェイの森の醸し出すある種の雰囲気を感じることは出来なかった。
村上春樹は、この小説である種の"実験"のようなことをしたかったのではないかと思う。場面設定といい、主人公の設定といい、その他いくつかの点についても新しい試みが見られた。
おそらく、村上春樹がこの小説で描きたかったのは、"現代日本社会"であると思う。それは、例えば、「店(デニーズ)はどこをとっても、交換可能な匿名的事物によって成立している。」という一文に、村上春樹が現代日本社会をどのように捉えているのかが如実に顕れているように思える。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X
No.28
(5pt)

合理性を追求した現代社会の欠陥に対して考えさせられる作品

村上春樹氏の現代社会に対する疑念・思想をふんだんに盛り込んだ秀作。読み込めば、我々がどうやってこの社会に対処していくべきかの氏の意見も見えてくるだろう。
法律・IT経済・TVメディアなどの合理性を追求したが故の根本的な欠陥が、暗闇となって陽のあたる時間帯すら凌駕しようとしている。
幼い少女をも広告塔として飲み込むメディア業界によって、四六時中、心に闇を持つようになってしまったエリは、闇を前にもはや眠ることしかできない。
異常なコンピュータ業界の労働によって自我を失いつつある白川は、彼自身が闇社会に対して一線を超えてしまったことすら認識できていない。
かつてはコオロギの例のように、借金逃亡などの明確であった闇社会が、バイクの男が通り過ぎるようにすぐ傍まで来ていることに、我々は気が付かなくてはならない。
闇に対処できるのは、アルファヴィルで行われる単なる交わりではなく、エリ・マリが暗闇のエレベーターで抱擁したような、心の通った行為だけなのではないか。
現代社会の問題に対して、我々が現実的できることは非常に少ないが、構造の原理を見渡し心持ちを正すことはできると思う。自分もこれを機会に山の頂まで登るかどうかを改めて考えてみたい。
本作品はストーリの結論を求めないことで、敢えて「売れる要素」を排除しているように感じます。一般受けしないことは、氏や編集の人もわかっての事でしょう。
本に結論(ストーリー性)・娯楽のみを求める人にはオススメしませんが、元々、現代社会の構造に多少の疑問を感じるような方で、これを機会に見つめなおしたいという方には間違いなくオススメです。
アフターダーク (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: アフターダーク (講談社文庫)より
406275519X