風の歌を聴け
評判
風の歌を聴けの評価:
4.07/5点 レビュー 370件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全663件 321〜340 17/34ページ
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風の歌を聴けの評価:
4.07/5点 レビュー 370件。 C ランク
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『風の歌を聴け』は村上春樹氏デビュー作であるが、すでに氏らしい洗練された文体からどこか異国のような情緒と言うべきか村上春樹世界が感じられる。発表当時村上春樹の異国的、特に米文学的文章は斬新でありそのためもあり芥川賞の受賞は無かったが、確かにその文章はのちの作家たちのみならず読者にまで影響を与えたはずだ。
村上春樹は誰でも理解しやすい単語たちをあえて使って書いているが、文章のレベルになると理解しずらくなる。それは日本語が出鱈目だからというわけではない。注意力が必要とされるようになるということだ。その文章が連なって出来上がる一つの物語は、さらに注意力読解力が必要とされるものとなる。つまり村上春樹の小説は簡単な言葉の難解な物語ということだ。最初は簡単な言葉で構成されるため誰にでも受け入れやすいものとして多くの人が手に取り読み始めるわけだが、物語全体となると難解なため人によっては受け入れられないものとなってしまっている。
『風の歌を聴け』について戻ろう。この物語の構造についてに書いてもいいが、ここではこの作品の魅力を伝えることが目的であるため避けることにする。多くの人はこの物語を読んで喪失を感じる。しかも漠然とした喪失虚しさである。そこで読者はこう思う「この小説は自分の中にしまってあった喪失虚しさを呼び起こした」と。だが違う。そうじゃない。実際にそうだという方もいるかもしれないが。私が思うにこの物語は人の喪失虚しさの感情を呼び起こすのではなく、読者の中に喪失虚しさという感情を芽生えさせるものであると。言えば、読者の中にそれまで無かった感情を芽生えさせ、且つその感情があたかも昔から自分の中にあったものだと勘違いさせる力がこの小説にはある。洗練された文体によって無理に共感させられてるとさえ言えると思う。だから多くの人がこの小説に共感し自分の物語として大事に読んでいるのだ。
私にとってこの小説の魅力は語るに尽きないが、もう一つだけ。この小説にはデレク・ハートフィールドなる作家が主人公の語りの中で登場するが、デレク・ハートフィールドは現実には存在しない。しかし、なんの情報もなくこの物語を読んだ人たちの多くはデレク・ハートフィールドが実際に存在する作家だと思い彼の作品を本屋で探すのである。これは本当にすごいことで、小説を読む際に人はその物語をフィクションとして読む。登場人物も架空の存在として受け入れるはずであるが、デレク・ハートフィールドに、限って実在の人物と思い込んでしまうのだ。そして騙されたと気付いた時に心地好い驚愕を受けるのである。デレク・ハートフィールドが実在しなくて残念という人には個人的に似ているとおもっているレイ・ブラットベリという作家をおすすめしたい。レイ・ブラットベリは実在した作家であり、暗めのファンタジー作品を多く残している。
感情も登場人物にも気付かず騙されるこの『風の歌を聴け』であるが、こんな小説になら騙されたままでいいとさえ思える。また、この小説は他の村上春樹作品と違いファンタジー要素がほとんどないため村上春樹の小説をまだ読んだことない人には読みやすいはずだ。