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(短編集)
五郎治殿御始末
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五郎治殿御始末の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.15pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全53件 41~53 3/3ページ
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明治維新後の激しく転変する世の中にあって、引きずってきた過去との折り合いの付け方に苦しむ男たちを描いた六つの短編集。“泣かせの”浅田節ではないが、時代背景を最大限利用しながら、ほろっと来させつつも爽やかな読後感を持たせるという、著者ならではの熟練の技である。いつもながら文章も巧いし。 武家政治の時代から四民平等の世へと急激に移っていった維新直後のこの時期。政治・行政の仕組みが激変したのは無論のこと、服装、髪型、暦、時間の観念、通貨等、暮らしの絶対的な基準と見なされていた様々なものが、わずかな間に目まぐるしく急変した。こうした環境の下で生きていると一体どの様な感覚に襲われるのだろうかと、本書を読み終えてふと思いを巡らせた次第。 | ||||
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明治維新によって、武士の世が終わりあたらしい世の中に。 今まで信じてきたものととってかわったものをどうやって受け止めたら良いか戸惑い、受け入れようとする葛藤を、武士階級だった人たちの目線でやさしく描いた短編集です。 最後の短編は作者の曾祖父をモデルに描いたもの。 自分が曾祖父のひざの上にいて、話を聞いているといった設定で 「わしはおまえの年頃に、いちど死に損なった。」と語ったその体験を書いています。 武士としての矜持と現実の生活の擦り合わせそこにうまれる悲喜こもごも に涙さそわれました。 とても面白い短編集です。 | ||||
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「鉄道員」をはじめ本当に短編小説と言う分野を丹念に熱心に書き続ける作家。 本作は、江戸から明治、髷から散切り頭へ移り行く中での侍の姿を中心に描いている。 付録として付けられている「御一新前後 江戸東京鳥瞰絵図(今尾恵介)」が、 本作を読みながら、あるいは読み終えた時に有り難い。私自身は東京で生まれ育ったものの、 都内の古い地名が今の風景と中々マッチしてこない。 桜田門と彦根の藩邸との距離感なんて説明されても頭の中で配置しきれない。 そんな私には有り難かった! そして、浅田作品に私は毎回泣かされてしまう。飛行機の中で映画化された「地下鉄に乗って」を観ていた時も、 泣いていたし、本作でも何度か実際の地下鉄の中で何度かホロリと来ていて気恥ずかしい思いをしていた。 本作の更に罪作りな事は、解説にまで泣かされた事だ。磯田道史氏の解説は、歴史学の視点から 実に見事に表題作を中心とした解説、浅田イズムの解説をされている。ここで、最後の涙だった。 久々、楽しませて頂きました! | ||||
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最近の浅田モノでは出色の短編集。 去り行く侍の時代に抗う「武士」の矜持。 「西向く侍」は名作。 是非、人目の無い場所で読まれることを。 | ||||
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800年續いた武士の時代が終焉を迎へた明治維新。 徳川15代將軍慶喜が大政奉還して政治形態が變はり、スムーズに新しい世の中になつたやうな印象がある。 もちろん、鳥羽伏見から五稜郭に至る舊幕府勢力の抵抗はあつたが、人の生活レベルでの變化に附いてはイメージ出來ていなかつた。 淺田次郎は、6つの短篇で、この間の變化を武士の視點から描いてみせた。 かつての武士たちは、御一新の後、どのやうに生きていつたのか。 商人になつた者、官僚になつた者、軍人になつた者、俥曳きになつた者・・・ それぞれの人生に於て、かつての武士としての生涯はどのやうに投影されてゐるのか。 いずれも趣のある作品だが、なかでも印象に殘つたのは、「遠い砲聲」と表題作「五郎治殿御始末」。 「遠い砲聲」の主人公は、近衞砲兵隊の中隊長として勤めながら、かつての主君に仕へてゐる。 西洋時計の使ひ方になかなか慣れられずに苦勞し、演習では大失態を演じてしまふ。 それでも周圍の彼に對する姿勢は暖かい。 軍人はいづれももと武士であり、かつての主君に仕へる彼の生き樣に好意的なのだ。 そして主君は、彼に對して何もしてやれない自分を情けなく思つてゐる。 最後の花火のシーンは壓卷だ。 武士の心意氣が傳はつてくる。 「五郎治殿御始末」は、武士としての身の始末のつけかたを描いたもの。 孫の養育と家の存續に心を碎いた老武士が選擇した道は・・・ すつきりと背筋の通つた生き方をしてきた人は、周圍がその生きざまを見てゐるものだ。 西南の役をもつて、武士の時代は名實ともに終はつた。 これまで知らなかつたこと。 御三家のひとつ尾張家はいち早く薩長の側についてゐたといふこと。 そして、その當主は會津中將、桑名越中守と實の兄弟だつたといふこと。 つまり、尾張大納言は、血をわけた兄弟である二人と鬪つたわけだ。 幕府側からすれば、武士の風上にも置けぬ裏切り者といふことになる。 もともと尾張は將軍家とは仲が惡かつたとはいへ、よもや、といふ感じがした。 | ||||
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明治維新を迎えた武士の生き様が6つの短編で描かれています。維新の英雄の物語は数多く語られていますが、ここに描かれているのは英雄ではなく普通の武士にとっての明治維新です。維新でそれまで脇差を差し髷を結っていた武士の時代は終わります。その終わり方も劇的で一年一年次々とお触れが出され、右往左往する中で時代が変わってゆきます。ここに描かれている侍は、時代の激変の中で武士道を守り通すと同時に自分自身が時代遅れの存在になったことを自覚し武士道の幕引きをする最後の武士の姿です。新たな時代の幕を開ける人がいれば必ずその影で古い時代の幕を閉じる人達がいます。そこに着目した著者の慧眼と共に自分自身の始末をつける武士の姿に感じ入るばかりでした。 | ||||
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江戸時代から明治時代へ。激動の時代の流れの中、孫と二人で 生きる五郎冶。生きることも死ぬこともままならない状況の中、 五郎冶はついに孫とともに死ぬことを決意するが・・・。 表題作を含む6編を収録。 明治維新。この言葉の裏に、さまざまな悲劇が隠されていた。時代の 流れに乗ることのできない人たちの苦悩や悲しみが切々と描かれて いて、読んでいてほろりとくるものもあった。中でも「柘榴坂の仇討」は、 どうしても過去を断ち切れない元武士の心の苦悩がよく描かれていて、 一番印象深かった。どうすれば未来へ目を向けられるのか?男たちの 慟哭が聞こえてきそうだった。時代が変わるということは大変なこと なのだ。そのことをあらためて感じる作品だった。 | ||||
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明治維新という大きな時代の変わり目で、それまでの価値観を切り替えれた者、そのまま引きずっていった者。そういった人々を描いた、それぞれ独立した6つの短篇集です。 著者のいつもの手口に引っかかって思わずほろりとさせられたものもいくつかありました。 | ||||
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久しぶりに読んだ浅田作品。 短編六編、いずれも舞台は明治初年で、時代に取り残された武士たちが主人公。 それぞれの逸話は独立しているが、次々に明文化・公布された新時代の諸制度 ないし法律がもたらすドラマ、という共通点をもつ。道具立ての手際よさはさすが。 中でも、井伊直弼の近習でありながら桜田門外で死に損なった元彦根藩士の変転を、 襲撃側の元水戸浪士との再会をクライマックスに設定した「柘榴坂の仇討」が抜きん出ていい。 「仇討」という主題自体が、時代小説のいわば“トリネタ”であり、汁気の多い 浅田節に取り込まれやすい要素をもっているが、これは心地よく酔える一編。 他には、幕府天文方の落魄を描いた「西を向く侍」が面白い。 ダブルミーニングの題名が最後によく効いている。 浅田さんの時代ものは、時にそのうまさが際立ち過ぎ、設定・文体ともに達者過ぎて、 何作か読むとややひけてしまうが、本書はまあ楽しめます。 | ||||
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泣いてしまいました。「浅田節」が鼻につくものも中にはありました。 でも「柘榴坂の仇討」と「五郎治殿御始末」はおすすめしたいです。 馬鹿が付くほど一生懸命で苦労は人に漏らさず死ぬ時は愉快な思い出だけ残していく、最高の生き方、死に方じゃないかと羨ましく思いました。 | ||||
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明治維新という激動期をはさんだ時代に乗り遅れそうな男たちをさまざまな角度から描いた短編集。 さわやかな読後感が楽しめます。 無常観だったり、悲壮感だったりといった浪花節てきな情緒にもっていかずに読ませてくれるところが好きです。 | ||||
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浅田次郎さんの本、初めて読みました。歴史小説は昔から好きでいろいろな作家の本を読んでいましたが、背景描写がすごいの一語ですね。この本短編が6本あり、それぞれ読み終わったあとしばらく何ともいえない余韻がしばらく続きます。明治初頭の元武士階級の物語で、頑固に武士という職業にこだわり最後の最後までそれにしがみ着き、そして時代の流れに流され、流れていく...。明治というと一遍に時代が変わったと思われていたけどこんな人達が沢山いたんだ、また明治時代というとすごく昔のような印象だけど、ほんの少し前だということがよく分かった一冊でした。 | ||||
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江戸から明治へと時代が大きく動いた真っ只中、丁髷を落し刀は無用の長物となり、時間や曜日の数え方は西洋化し一年の暦までも変わってしまう。そのカルチャーショックたるやいかばかりであったのか、私たちは簡単に「明治維新」という言葉でわかったような気になっていたけれど、実の所その時代に生きた人々にしてみればどれほどの変革だったのか改めて考えさせられました。 武家社会の崩壊の中で不器用な生き方しかできなかった愚直なまでの人物たちが、せつないけれど決して未来への希望は捨てず新しい自分を求め再生していく、子や孫へ想いを託していく姿は作者ならではの愛情に満ちていてとても心に残りました。この時代の庶民の生活ももっと知りたくなりました。 | ||||
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