蠕動で渉れ、汚泥の川を
評判
蠕動で渉れ、汚泥の川をの評価:
4.46/5点 レビュー 24件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全42件 21〜40 2/3ページ
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蠕動で渉れ、汚泥の川をの評価:
4.46/5点 レビュー 24件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
2014年から2016年にかけて「すばる」で分割掲載された作品。
昭和五十九年夏、御徒町の洋食店「自芳軒」で住み込みのアルバイトとして
働き始めるのも束の間、自ら犯した不始末が原因となり、店を馘首されるまでの顛末を描く。
父親が性犯罪を犯して逮捕されたことに対する負い目や家賃滞納に纏わる大家との遣り取り、
身も蓋もない性欲との格闘、バイト先での人間関係が徐々に悪化し最終的には最悪の形で
破綻を迎えるまでの、虚勢と劣等感がないまぜになったモノローグの連発と粘着質な心理描写等、
未成年時代の貫多を扱った作品に接した読者にはお馴染みのモチーフではあるが、
飽きを感じさせることはない。
罵詈雑言の中、滅茶苦茶な形で結末を迎える際に訪れるある種のカタルシス、
主人公である著者が後に芥川賞作家となる事実とのギャップのもたらす面白みも、
読者の心を惹きつける要因として挙げる事もできるだろうが、著者特有の
軟硬を交えた文体が生み出す諧謔味も西村作品の魅力に大きく寄与していることは
確かだろうと思う。
どこから拾ってきたのか不審に思うような難読漢字を混ぜ込んだ硬めの文章の中に、
「その常日頃から意識的に放っているところの、
孤狼のムーディーで危険な香りには些かの自信をふとこっている」(69頁)
などといった徹底した自己戯画化を目論んだ異質な文章が組み込まれているのを目の当たりにすると、
それらの軟硬の対比から醸し出される滑稽感には、
相当な時間と手間が掛けられているのだろうと思わないわけにはいかない。
更に言えば三人称単視点での語り手(西村)の溜息が聞こえてくるような、
最終盤に於いて出現した記述--
「まったく今回も、その繰り返しではあった。あれから一年近くが経とうと云うのに、
まるで、何も成長していない」(258頁)
にも、貫多の心理描写とは異質の、貫多と西村との関係性から期せずして生み出されたような面白みが有る。
これは父親が息子の駄目さ加減を嘆いているような感じで、読み手を和ませるタイプの面白みなのだった。
この一文が本書の読後感をずいぶん良好なものに変えているように思う。