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むすぶと本。 『外科室』の一途
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むすぶと本。 『外科室』の一途の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.25pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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絶賛読んでます。ありがとうございます。 | ||||
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野村美月が独特のノリを持った作家である事は既存のファンであればよくご存じの事であると思う。 そのノリに合わせられるかどうかが熱烈な愛読者になれるか、「なんやこれ……」と途中で投げ出すかの境目になるかと。当然二作連発の打ち切りの後、数年間の休養期間に入った作者の新作をまだかまだかと待ち続けた既存のファンにはノリに合わせられるかどうかなんて大した問題じゃ無いと思うし、本作も迷わず買うだろうからこんなレビューなんか無視してさっさと買って読め、と言いたい。 一方、ゼロ年代後半から2010年代前半にかけて「青春系ラノベ」の宝庫だったファミ通文庫の看板作家としてラノベ界を風靡した野村美月を「今から」読もうかどうかと足踏み中の若いラノベファンにとってはどうだろう? まずはいつも通り本作の概要からご紹介しようと思う。 物語の舞台は聖条学園。言わずと知れた野村美月の出世作「文学少女」の舞台となった姫倉家の運営する名門私立高校。物語は主人公である姫倉高校の学生・榎木むすぶが駅の貸本コーナーに置かれていた「長くつ下のピッピ」の声を聴く場面から始まる。貸本としてボロボロになりながらも本来の持ち主であるハナちゃんの元に帰りたいと願う「ピッピさん」の声を聴いてしまったむすぶは現在のハナちゃんの居場所を探ろうとするが一介の高校生では重すぎるミッションにたちまち行き詰まり学園の現理事長の息子である姫倉悠斗に相談を持ち掛ける。ハナちゃんの身元を調べる代償としてむすぶは悠斗から日本史の教師・武川のセクハラ疑惑の調査を求められるが…… 読み終えて思ったのだけど確かに世界観は「文学少女」シリーズを継承しているけどノリの方は完全に「ドレ僕」の方に近いんじゃなかろうかと。いや「文学少女」でも良いのだけど本編のノリよりもコメディ全開な「挿話集」のノリに近いというのが正直な所。文系虚弱少年がトラブルに巻き込まれてはドタバタ騒ぎを繰り広げるあのノリである。まさに「ドレ僕」でありなんとなれば「アルジャン・カレール」の上巻に近い(あの作品、下巻は主役が交代しちゃうし) 今から野村美月に挑戦しようという若い人は比較的マジメな方が多いだろうからシリアス分多めな「文学少女」本編であればともかく、いきなり「ドレ僕」のノリに付き合わされたら相当に面食らうのではないかと(いや、個人的には好きなんですけどね「ドレ僕」)。というか文学少女のノリだとしても色々と素人にはきつい場面が多いかも。「羅生門」を題材にした第三章なんかは心理的な不安定さから本に取り憑かれてしまった少年の奇矯な行動に「なんやこれ……」とドン引きする人も多かろうし。野村美月先生、男子高校生の制服は勢いで剥ぎ取るのには向いてないっス……何より「証拠を突き付けるのではなく、想像する」という探偵役を受け入れられるかどうかは「文学少女」というシリーズを受け入れられるかどうかの大きな試金石になっている。 ヒロインに関して言えばむすぶのパートナーと称するべき一冊「夜長姫」に至ってはこの巻ではほとんど動かないので「え、これ何の為に出したキャラなの?」と戸惑う人が相当に多かろうかと。むすぶがトラブルに巻き込まれて本を持ち帰ってくるたびに「浮気よ。呪う呪う呪う呪う呪う呪う……」とヤンデレ化するかなり奇天烈なキャラなのだが、これがこの一巻で何らかの役割を果たすかと言えばほとんど動かないのだから些か困り物ではある。作者的には「ドレ僕」の聖羅姫をイメージしたらしいが聖羅自体は割と最初から話の流れに関わってるし。幕間で顔文字使ったりするあたりキャラ的には「心葉への恋心を拗らせ過ぎてしまった琴吹さん」みたいなものを想像してもらった方が分かりやすいだろうか? セクハラ教師の調査を進めるエピソードで登場するもう一人のヒロイン妻科さんはいきなりキッツイ一撃をお見舞いしてくれるので既存の読者にしてみれば「うむ、野村美月のヒロインと言えば打撃系だよな」と頷ける部分は多いと思うが。ちなみに式部さんはキックがメインウエポンだったが、今回のヒロイン妻科さんは右ストレートが武器らしい。 斯様に「初めての野村美月」として読むには些かキツいのである。繰り返しになってしまうが新刊を延々と待ち続けてきたファンにはこれでも良いのである。野村美月のノリを知り尽くしている人が多いのだし、「うんうん、野村美月が平常運転だな」とニヤニヤしながら読める一冊にはなっている。というか野村美月自身もそこを狙っているフシがある。 初っ端からむすぶがトラブル解決の際に頼りになる存在として姫倉悠斗を出してきた時点で「あー『文学少女』ファンへのサービスが半端ないなあ」と思わされる。登場してすぐに現在は理事長を務める母親の存在が匂わされるのだけどこれなど10年前に展開された「文学少女」をリアルタイムで読んだ人には懐かしくて仕方なかろうかと。 しかも作中で人気作家として語られるのが雀宮快斗に早川緋砂、である。これでもう既存のファンは大喜び。編集者として働き始めた遠子先輩を悩ませた問題作家二人が揃い踏みとか痛快極まりない。井上ミウを出したら露骨過ぎるけどこの二人であれば「文学少女な編集者」まで追いかけ続けた読者へのサービスとして立派に機能してしまうのである。 つらつら述べさせて頂いたけれども「素人にはお勧めできない」これが自分なりの結論である。既存のファンにはありとあらゆるサービスが施されているしノリに付いていくという点においても不安は無いので「おお、平常運転だ」とニヤニヤ笑いながら読めるのだけども数年ぶりに執筆を再開した野村美月を初めて読む方には色んな意味でハードルが高いんじゃなかろうか、という一冊に仕立てられている。執筆再開、即全力疾走は新規読者に付いてこいのはちょっと厳し過ぎるんじゃなかろうかと。あくまで既存のファンにお勧めの一冊という所ではないだろうか? | ||||
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