雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え
評判
雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚えの評価:
4.50/5点 レビュー 12件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 21〜22 2/2ページ
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毎朝,新太は夜明けとともに本所・大横川の業平橋の下でしじみを採る.新太が採るしじみは業平しじみと呼ばれ,ぷっくり肥っていて味がよいと評判だ.
私事ですが,本所・業平橋(ほんじょ・なりひらばし)は拙宅から眼と鼻の距離にあります.でも,橋の下には大横川はありません.もう何十年も前に川は埋め立てられ,大横川親水公園となっています.川の代わりに水路が設けられ,滝やカスケードがあったりして夏場には子供たちが水遊びしています.しじみなどはいない.小説の舞台を想像させる装置は皆無です.それどころか業平橋の脇に高さ634mの東京スカイツリーが聳えている.そんな業平橋周辺を知っていて第一話を創作する著者の想像力の逞しさに驚嘆せざるを得ません.話が前後しますが,引用の新太は捨吉を古手屋喜十の店先に捨てた捨吉の兄で,程なく隅田川に身を投じました.何故って.それが泣かせるのです.知りたい方はどうぞ本書を読んで下さい.
本書を読む楽しみの一つは江戸弁を聞くことです.江戸弁はとっくに廃絶している.東京弁すら聞かれない.はびこっているのは情緒不足の標準語か,標準語の変形です.明治・大正の東京も今ではすっかり消えました.眼前に拡がるのは,巨大な,コンクリートで固めた首都東京です.だからこそ吾らは江戸に憧れ,この短編集に惹かれるのでしょう.私達は宇江佐真理さんの語りを聴いてほんの束の間でもこの殺伐の巷から逃れたいのです.江戸の人って皆いいな,と思います. 翻って100年後,未来の東京人は平成時代の人たちは良かったなと,思うでしょうか.