(短編集)

雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え

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評判

雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚えの評価:

4.50/5点 レビュー 12件。 B ランク

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平均点4.50pt

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未読の方はご注意ください

全24件 21〜24 2/2ページ
No.4
(4pt)

養子・捨吉とその兄弟姉妹の行方。

今で言う古着屋を営む30代半ばの喜十が主人公。
しかし妻のおそめとの間には子供が無かった…、そんな折、店先に赤ん坊が
一筆の書置きとともに捨てられていた。

本作は6話からなる短編集ですが、1作目に捨吉がどうして捨て子の境遇となり、
喜十夫婦の養子となったかが詳しく書かれています。
その兄、新太の不幸な境涯には悲しくなりました。
また後半には捨吉の兄弟姉妹の行方、身の振り方に奔走する喜十と
喜十が仕える同心の上遠野の二人に人間的な温かさを感じました。
中盤のミステリー仕立ての作品もなかなか良かったですが、
本作の焦点は捨吉とその兄弟姉妹にあると思います。

前作は喜十の年齢にそぐわない暗くて愚痴っぽい性格が鼻につきましたが、
本作は喜十のそんな性格もだいぶ緩和されていました。
喜十の上遠野に対する愚痴や悪態もだいぶ無くなり、
ラストではホロリとさせられる場面など良かったです。
ただ伊佐次捕り物余話の様な伊佐次と不破友乃進との間の無条件の信頼感、
爽快感は無いので★4つにさせていただきました。
次作に期待します。
雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)より
4101199272
No.3
(4pt)

養子・捨吉とその兄弟姉妹の行方。

今で言う古着屋を営む30代半ばの喜十が主人公。
しかし妻のおそめとの間には子供が無かった…、そんな折、店先に赤ん坊が
一筆の書置きとともに捨てられていた。

本作は6話からなる短編集ですが、1作目に捨吉がどうして捨て子の境遇となり、
喜十夫婦の養子となったかが詳しく書かれています。
その兄、新太の不幸な境涯には悲しくなりました。
また後半には捨吉の兄弟姉妹の行方、身の振り方に奔走する喜十と
喜十が仕える同心の上遠野の二人に人間的な温かさを感じました。
中盤のミステリー仕立ての作品もなかなか良かったですが、
本作の焦点は捨吉とその兄弟姉妹にあると思います。

前作は喜十の年齢にそぐわない暗くて愚痴っぽい性格が鼻につきましたが、
本作は喜十のそんな性格もだいぶ緩和されていました。
喜十の上遠野に対する愚痴や悪態もだいぶ無くなり、
ラストではホロリとさせられる場面など良かったです。
ただ伊佐次捕り物余話の様な伊佐次と不破友乃進との間の無条件の信頼感、
爽快感は無いので★4つにさせていただきました。
次作に期待します。
雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え Amazon書評・レビュー: 雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚えより
4104422061
No.2
(5pt)

江戸っ子たちの人生を心温まる筆致で描く随筆的短編集

皆さんは宇佐江真理さんという時代小説家をご存じですか.私は迂闊にもこの人を全く知りませんでした.アマゾンで見ると既に多くの著作があり,多くのファンが生まれています.本書を読むと,もっと色々と読みたくなって当然です.カバーの絵を見れば雪だるま(雪まろげ)を造っている男がいます.幼児を抱いた女もいる.男は江戸浅草の古着屋の主,古手屋喜十.女はその女房のおそめ,幼児は捨て子の捨吉です.捨吉を喜ばせるために喜十はせっせと雪まろげを作っています.心温まる絵 --- .この喜十,わが店の前に捨てられていた赤子を養子にして育てている.本書第一話「落ち葉踏み締める」はこの捨て子の来歴を語って私を泣きに泣かせました.年取れば涙腺の締まりがなくなるのでしょうか.ともあれ『雪まろげ』は6話から成る短編集ですが,第一話は次のように始まります.

毎朝,新太は夜明けとともに本所・大横川の業平橋の下でしじみを採る.新太が採るしじみは業平しじみと呼ばれ,ぷっくり肥っていて味がよいと評判だ.

私事ですが,本所・業平橋(ほんじょ・なりひらばし)は拙宅から眼と鼻の距離にあります.でも,橋の下には大横川はありません.もう何十年も前に川は埋め立てられ,大横川親水公園となっています.川の代わりに水路が設けられ,滝やカスケードがあったりして夏場には子供たちが水遊びしています.しじみなどはいない.小説の舞台を想像させる装置は皆無です.それどころか業平橋の脇に高さ634mの東京スカイツリーが聳えている.そんな業平橋周辺を知っていて第一話を創作する著者の想像力の逞しさに驚嘆せざるを得ません.話が前後しますが,引用の新太は捨吉を古手屋喜十の店先に捨てた捨吉の兄で,程なく隅田川に身を投じました.何故って.それが泣かせるのです.知りたい方はどうぞ本書を読んで下さい.

本書を読む楽しみの一つは江戸弁を聞くことです.江戸弁はとっくに廃絶している.東京弁すら聞かれない.はびこっているのは情緒不足の標準語か,標準語の変形です.明治・大正の東京も今ではすっかり消えました.眼前に拡がるのは,巨大な,コンクリートで固めた首都東京です.だからこそ吾らは江戸に憧れ,この短編集に惹かれるのでしょう.私達は宇江佐真理さんの語りを聴いてほんの束の間でもこの殺伐の巷から逃れたいのです.江戸の人って皆いいな,と思います. 翻って100年後,未来の東京人は平成時代の人たちは良かったなと,思うでしょうか.
雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)より
4101199272
No.1
(5pt)

江戸っ子たちの人生を心温まる筆致で描く随筆的短編集

皆さんは宇佐江真理さんという時代小説家をご存じですか.私は迂闊にもこの人を全く知りませんでした.アマゾンで見ると既に多くの著作があり,多くのファンが生まれています.本書を読むと,もっと色々と読みたくなって当然です.カバーの絵を見れば雪だるま(雪まろげ)を造っている男がいます.幼児を抱いた女もいる.男は江戸浅草の古着屋の主,古手屋喜十.女はその女房のおそめ,幼児は捨て子の捨吉です.捨吉を喜ばせるために喜十はせっせと雪まろげを作っています.心温まる絵 --- .この喜十,わが店の前に捨てられていた赤子を養子にして育てている.本書第一話「落ち葉踏み締める」はこの捨て子の来歴を語って私を泣きに泣かせました.年取れば涙腺の締まりがなくなるのでしょうか.ともあれ『雪まろげ』は6話から成る短編集ですが,第一話は次のように始まります.

毎朝,新太は夜明けとともに本所・大横川の業平橋の下でしじみを採る.新太が採るしじみは業平しじみと呼ばれ,ぷっくり肥っていて味がよいと評判だ.

私事ですが,本所・業平橋(ほんじょ・なりひらばし)は拙宅から眼と鼻の距離にあります.でも,橋の下には大横川はありません.もう何十年も前に川は埋め立てられ,大横川親水公園となっています.川の代わりに水路が設けられ,滝やカスケードがあったりして夏場には子供たちが水遊びしています.しじみなどはいない.小説の舞台を想像させる装置は皆無です.それどころか業平橋の脇に高さ634mの東京スカイツリーが聳えている.そんな業平橋周辺を知っていて第一話を創作する著者の想像力の逞しさに驚嘆せざるを得ません.話が前後しますが,引用の新太は捨吉を古手屋喜十の店先に捨てた捨吉の兄で,程なく隅田川に身を投じました.何故って.それが泣かせるのです.知りたい方はどうぞ本書を読んで下さい.

本書を読む楽しみの一つは江戸弁を聞くことです.江戸弁はとっくに廃絶している.東京弁すら聞かれない.はびこっているのは情緒不足の標準語か,標準語の変形です.明治・大正の東京も今ではすっかり消えました.眼前に拡がるのは,巨大な,コンクリートで固めた首都東京です.だからこそ吾らは江戸に憧れ,この短編集に惹かれるのでしょう.私達は宇江佐真理さんの語りを聴いてほんの束の間でもこの殺伐の巷から逃れたいのです.江戸の人って皆いいな,と思います. 翻って100年後,未来の東京人は平成時代の人たちは良かったなと,思うでしょうか.
雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え Amazon書評・レビュー: 雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚えより
4104422061