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洪水はわが魂に及び
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洪水はわが魂に及びの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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知的障害の幼い息子を持ち、かつて大物政治家の娘婿 兼 秘書だった中年男 勇魚が 町外れの核シェルターに息子と引きこもっていたが、 目の前の湿地の向こうの廃墟に たむろしてる若者グループと関わることになり、そして国家権力によって破滅するまでの物語。 当時からすると近未来の話のようだが、警察や機動隊の描写が60年代のそれのレベルであり、大江健三郎の想像力も その程度かと。 まぁ 話の本筋とは関係ないから別にいいが。なんと言うか、骨の髄まで反国家権力なんだなぁと。 大江が高校のとき毎日不良グループから理不尽な暴力を受けていたのが そういう思想になった原因らしいが、そいつら別に国家の手先じゃないから。論理の飛躍だよな。 | ||||
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知的障害の幼い息子を持ち、かつて大物政治家の娘婿 兼 秘書だった中年男 勇魚が 町外れの核シェルターに息子と引きこもっていたが、 目の前の湿地の向こうの廃墟に たむろしてる若者グループと関わることになり、そして国家権力によって破滅するまでの物語。 当時からすると近未来の話のようだが、警察や機動隊の描写が60年代のそれのレベルであり、大江健三郎の想像力も その程度かと。 まぁ 話の本筋とは関係ないから別にいいが。なんと言うか、骨の髄まで反国家権力なんだなぁと。 大江が高校のとき毎日不良グループから理不尽な暴力を受けていたのが そういう思想になった原因らしいが、そいつら別に国家の手先じゃないから。論理の飛躍だよな。 | ||||
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主人公の勇魚は、かつてその販売企画担当員だった核シェルターで、障害を持つ息子ジンと共に隠遁生活を送っている。彼は、樹木の魂、鯨の魂の代理人であると自認している。ジンは、テープレコオーダーの鳥の声を聴くと「OO(鳥の名)、ですよ」と当てる特殊能力を持っている。彼らと湿地帯を隔てて対峙するのが、「自由航海団」と称する、社会からドロップアウトした若者たちだ。近い将来発生する天変地異に乗じて公海へ船出しようと企んでいる。本作は、勇魚と若者たちの対決、和解、相互承認、連帯、共闘に至る過程を物語る。外見的には、連合赤軍あさま山荘事件を思い起こさせる。実際、強盗、軍事教練、リンチ殺人、機動隊との銃撃戦(例の鉄球も出てくる)等、エピソードには周知のものが多い。しかし、内容は異なる。自由航海団には、連赤のもつ教条主義、硬直性、自閉性がない。議論が活発であり、命令系統がない。団員は、個人の自由意思で参加している。この点は、全共闘に通じる。 勇魚と若者たちが世代を超えて共闘に至れたのは、反体制意識だけでなくヴィジョンに生きるという本能を共有していたからである。その意識も本能も廃れた現在の私たちに打撃を与える場面が数々ある。例えば最終章。地下室に立て籠る勇魚は、人類が駆逐された洪水の中を、水中に立つ樹木を縫いながら、群れなす鯨が泳ぐ姿を想像する。鯨の鳴き声のテープを聴きながら、「鯨、ですよ」とつぶやく。そのノアの洪水のイメージとは別に、実際には、機動隊の放水により、床の穴から泥水が吹き出てくる。上がってくる泥水の中から、勇魚は、自由への道におけるマチウさながら、自動小銃を連射する。 特に、ナニモカモチュウブラリンノママデ、ソシテ無ダトイウ認識ガ、ナント広ク自由ナトコロへオレヲ突出シテクレルコトダロウ……という一節に私は感銘を受けた。 | ||||
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『洪水はわが魂に及び』には、自分の身長がどんどん縮んでいく「縮む男」が登場します。大江さんによれば、「縮む男」は「情熱」を表現しているそうです。自己破壊に向かう情熱を持っていて、内側に向かって爆発する(インプロージョンする)のが、「縮む男」です。この小説に出てくる「自由航海団」の若者たちは破滅に向かって暴走していきますが、「縮む男」はそうした破滅を宿命付けられた情熱を体現しているのかなと思いました。 「自由航海団」の若者たちは政治的なものに無関係で、自分がやりたいことを自由にやって生きようとします。『芽むしり仔撃ち』に登場する感化院の少年たちも閉鎖された村で一時的に「自由の王国」を建設したので、「自由航海団」の若者たちは『芽むしり仔撃ち』の感化院の少年たちの変奏であるように感じました。『芽むしり仔撃ち』でも『洪水はわが魂に及び』でも、何事にも縛られないフリーダムな状態として「自由」が語られていると思いました。 「自由航海団」の若者たちと勇魚は、物語のラストで『芽むしり仔撃ち』のように(?)閉鎖状態に陥り、悲劇的な破局を迎えます。しかし、『芽むしり仔撃ち』の「僕」と違って、勇魚は「すべてよし!」と言います。清水徹訳の「シーシュポスの神話」でもシーシュポスが「すべてよし」と判断しますが、これに似た肯定の言葉だろうと思います。 | ||||
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何度も前に戻って読み返しながら読みました。上巻だけで一月かけて読みました。やっと下巻に入ったところです。 | ||||
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学生時代に読んで以来、30年経って再読。 当時気が付かなかった表現の巧みさ、よく計算された構成に感心しました。 大江文学の独特の文体に慣れればとても深く心に染み入る作品かと。 この作品の美しさは、なんと言ってもジンと伊奈子の閉塞された環境下での心の絆であろう。 この二人に通い合う無垢の愛が この物語に永遠の輝きをもたらしているように思う。 | ||||
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ノーベル賞作家の作品とはから始まり何冊か読みました。結構かたいと思った。 | ||||
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平穏な日々が続くと、何故か大江作品が読みたくなります。何かを渇望し、何かを求めているのかもしれません。この長編も2度目の読了です。世界の終末を予感し、核避難施設を具備した家に、知恵遅れの息子「ジン」と暮らす「大木勇魚」。自分たちの理想郷を求め、社会に叛逆する「自由航海団」の若者たち。じっと静穏の中で耐えている勇魚、ジンと若者たちの出会いと共同生活が始まります。勇魚と「樹木の魂」、「鯨の魂」との交流。自由航海団のリーダー「喬木」や「縮む男」たちの狂気。物語は、権力と戦い、破滅へと向かう勇魚たちの怒りとやりきれなさを追い続けます。破壊と虚構の世界を描いているにもかかわらず、リアリティーと優しさを感じます。ジンの言葉は、私たちの胸に、痛切に響きます。 先頭に立って、原発廃絶をアピールする大江さんの姿勢に共感をおぼえるなら、この作品を読んでみてください。世界の終末に立ち向かう心優しき人たちの声が聞こえてくると、思います。 | ||||
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大江作品に対する評価は様々であろうが、わたしにとっては最高傑作。わたしも障害をもつ子どもと共に生活している。本書をはじめとする父子の関わりをモチーフにした大江作品を読むことが、自分のいまある子どもとの生活にたいする確信を与えてくれる。このような作家の作品を同時代に読めることに感謝したい。 | ||||
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知恵遅れの幼児ジンとともに核避難所跡に籠った狂人勇魚と、自由航海団を名乗り猛進する若者たちの交流の物語。自らの力で暴れ飛び出したい自由航海団の若者たちであるが、その怒りや危機意識は妄想の範囲内であり、エポックメーキングを予測したり自ら創出しようかと考えてみるにとどまっている。樹木の魂、鯨の魂の想念において航海団のリーダー喬木と通じ合った勇魚は、ジンとともに籠りきりの生活を脱し航海団と行動してゆく。明らかな閉塞感は漂いつつも打破すべき目標が明確ではなく、航海団は迷走しながらも前へ前へ進もうとする。知恵遅れジンの「…ですよ」という静かな口調、粘り付くような性描写に象徴される航海団の伊奈子の伸びやかな性格、それらが物悲しい物語を美しく薄明るくしている。内部闘争を経ながら、航海団が外部(社会)と接触するべく下巻へと続く。 | ||||
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著者の筆力は語るまでもないが、その世界の構築力に凄まじい才能を感じる。 近年の作品は四国の山奥を舞台にした壮大なストーリーのものが多いが、この作品は「われらの時代」や「性的人間」からの流れで読める長編だと思う。著者の「そっち系」が好きな人は是非読んだほうがいいと思う。 グロテスクともいえる物語が進む中で、子供の言葉がとても優しくて読んでいて嬉しかった。 大江さん、こういうのもっと書いて! | ||||
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