AX アックス
評判
AX アックスの評価:
4.38/5点 レビュー 293件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全479件 1〜20 1/24ページ
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AX アックスの評価:
4.38/5点 レビュー 293件。 A ランク
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「AX」(2012)、「Bee」(2012)、「Crayon」(2014)、「EXIT」(2017)、「FINE」(2017)からなる連作短篇集。
迂闊にも「解説」で杉江松恋に云われるまで、アルファベット順に並んでいることに気づかなかった。当初は四篇目となる「Drive」という作品で〆る予定で、その簡単な梗概もあったらしいが、とある事情でポシャり、その数年後にEとFを加えることで完結したという。
分量的には、後ろ二作で前半の三作よりも多くを占めている。
それにしても、軽妙な会話の魅力は『グラスホッパー』から変わらないが、本作冒頭から檸檬、蜜柑、克巳との立て続けの無駄な会話による強力な惹きは怖ろしいほど。
シットコムパワーというべきか。
この技とさんざんに散りばめた布石を駆使する技巧が、著者の大きなアドバンテージだろう。
本書の魅力の大半は、やはり兜が担っていて、彼のキャラ設定と家族をはじめとする周辺人物の会話がなんとも楽しい。
ほとんど触れられないが、兜は幼少期より人間づきあいをあまり学んでこれずに、他者への共感性がないサイコパスのようで、自分でもそれを認識しているそぶりも散見する。しかし家族との繋がりは、彼の共感能力をみるみる育てたようで、現在進行形で学び続けているようでもある。彼の並外れたw恐妻家としての性質は、彼に共感力に気づかせるきっかけになった、妻との出会いを失いたくないという恐怖に源があるのだろう。
彼自身は「甘えるような彼女との時代は、紀元前の四大文明のことに思いを馳せるようにしか捉えられない」(P.147)なんて思っているが、最後の最後に二十代前半の兜と妻の出逢いのシーンを挿入してきたのは、そういうことだと思う。
とは言え、一方で彼と「Crayon」「EXIT」で交友が生じた松田や奈野村の名前や顔も短い時間で記憶が薄れている描写もあり、彼の脳機能には大きな問題がある気配も残っている。
周囲に裏の顔を見せていない兜の設定からは、この秘密が家族にバレそうになる/またはバレる処からコメディ要素が広がるものだと思っていたが、家族は最後まで兜を普通の夫/父と思っていた。それでいて、最初から脇キャラとして十分に存在感のあった息子の克巳が、「FINE」では中心人物になったりと意表を突く展開に繋がり、これもまた巧い。
兜が一括で購入したマンションの費用をどのように納得したのかは不明だがw
杉江松恋は、兜とローレンス・ブロックの殺し屋ケラーシリーズの類似を述べているが、残念ながらわたしはそちらを読んだことがないのでわからない。また読むべきリストにあらたな本が加わってしまった。
読むべきリストと云えば、本作内で兜が読んでいて、引用もされる古山高麗雄も知らなかった……。
ふざけた名前(失礼)なので、テキトーな創作かと思ってしまったが、なんと芥川賞受賞作家だったw
Wikipediaでさらっと見てみると、生まれが半島とのことだが戦前のことでもあるから、親は日本人ながら出生地にちなんで高麗雄と名付けたのかも知れない。しかしあちらの人なら、通名でわざわざ高麗雄は名乗らないように思う。
受賞作の『プレオー8の夜明け』は、戦犯容疑でサイゴンの刑務所に抑留された日本兵云々と紹介されていたので、やや危険な臭いがしたが、彼は「憲兵にも良い奴はいたし、一等兵にも嫌な奴はいた。また、将校と結婚し幸せになった慰安婦もいる」という認識の持ち主らしいので、これも読むべきリスト入りだ。
新しい歴史教科書をつくる会の賛同人でもあったらしい。
閑話休題。
ちなみにわたしは、兜のキャラに最初、人間に興味を持つアンドロイド、データ少佐を思い浮かべたが、犯罪ドラマであることや、「感情を演じる」のが「それ本物の感情でしょ」と変化していくのは、洋ドラ『デクスター』のデクスター・モーガンにより近い。そして最後に恐妻家と云えばやはりあの人、中村主水w
当初『グラスホッパー』では、登場人物の大半がヤバい人たちで引っかかると書いたが、同様に殺し屋関連の人物が数多く登場する本作で、よもやこんな暖かい気持ちにさせられるとは……。