幻影の書

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幻影の書の評価:

4.43/5点 レビュー 35件。 B ランク

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平均点4.43pt

Amazonレビュー一覧

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全64件 61〜64 4/4ページ
No.4
(5pt)

オースターの記念碑的傑作の待望の柴田訳

オースターファン、そして柴田ファンが待ちに待った一冊。柴田元幸氏の無理の無い折り目正しい日本語訳を1ページ1ページ読み進めていくうちに、6年前衝動的に「The Book Of Illusions」を買ってしまったもののこんな長い英文読みとおせるだろうかと不安一杯だったにもかかわらず、それこそ寝食を忘れるほど没頭してしまったのを昨日の事の様に思いだしていた。

 ポストモダンの旗手から、超一流のストーリー・テラーへ成長したポール・オースターが、この本において新たなる高みに達した事は間違いなく、彼にとって記念碑的な作品だと思う。語り口の饒舌さ、映画製作の経験の取り込み、小説としての重層的構造、ポストモダン的登場人物、古典文学に関する該博な知識、そして濃厚なエロチシズム等々、彼の持ち味の全てを出しつくした上で、彼の作品では極めて珍しい主人公の魂の救済の物語となっていることもこの小説の特徴だろう。

 主人公デイヴィッド・ジマーの魂の救済の物語を大枠にして、喜劇俳優ヘクター・マンの数奇な人生とその俳優に翻弄された複数の女性の生涯を中軸に置き、さらにその中で喜劇俳優時代の無声映画の数々や隠遁生活の中で作り上げた決して公開される事の無い映画を詳細かつリアルに活写し、更にはフランスの作家・政治家シャトーブリアンの著作「M'moires d'outre-tombe」の文章を散りばめた構成は、数多い彼の同様の著作の中でも最高の完成度を示している。特に外部の人間として主人公だけが見た「Inner Life Of Martin Frost」という映画は、ヘクターの贖罪意識の産物であるとともに、デイヴィッドの数奇な経験を予見した内容になっており一際精彩を放っている。

 更に今回「やられた!」と思ったのは、先日読んだ「Travels in the Scriptorium」がこの作品の中で既にヘクターの作品の題名として、そして更には「Inner Life Of Martin Frost」の主人公の著作の題名としてご丁寧にも二度も登場していた事。この書については出版社からのプッシュもあったのだろうが、オースター、本当に油断のならぬ相手である。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.3
(5pt)

オースターの記念碑的傑作の待望の柴田訳

オースターファン、そして柴田ファンが待ちに待った一冊。柴田元幸氏の無理の無い折り目正しい日本語訳を1ページ1ページ読み進めていくうちに、6年前衝動的に「The Book Of Illusions」を買ってしまったもののこんな長い英文読みとおせるだろうかと不安一杯だったにもかかわらず、それこそ寝食を忘れるほど没頭してしまったのを昨日の事の様に思いだしていた。

 ポストモダンの旗手から、超一流のストーリー・テラーへ成長したポール・オースターが、この本において新たなる高みに達した事は間違いなく、彼にとって記念碑的な作品だと思う。語り口の饒舌さ、映画製作の経験の取り込み、小説としての重層的構造、ポストモダン的登場人物、古典文学に関する該博な知識、そして濃厚なエロチシズム等々、彼の持ち味の全てを出しつくした上で、彼の作品では極めて珍しい主人公の魂の救済の物語となっていることもこの小説の特徴だろう。

 主人公デイヴィッド・ジマーの魂の救済の物語を大枠にして、喜劇俳優ヘクター・マンの数奇な人生とその俳優に翻弄された複数の女性の生涯を中軸に置き、さらにその中で喜劇俳優時代の無声映画の数々や隠遁生活の中で作り上げた決して公開される事の無い映画を詳細かつリアルに活写し、更にはフランスの作家・政治家シャトーブリアンの著作「M'moires d'outre-tombe」の文章を散りばめた構成は、数多い彼の同様の著作の中でも最高の完成度を示している。特に外部の人間として主人公だけが見た「Inner Life Of Martin Frost」という映画は、ヘクターの贖罪意識の産物であるとともに、デイヴィッドの数奇な経験を予見した内容になっており一際精彩を放っている。

 更に今回「やられた!」と思ったのは、先日読んだ「Travels in the Scriptorium」がこの作品の中で既にヘクターの作品の題名として、そして更には「Inner Life Of Martin Frost」の主人公の著作の題名としてご丁寧にも二度も登場していた事。この書については出版社からのプッシュもあったのだろうが、オースター、本当に油断のならぬ相手である。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.2
(5pt)

僕たちは「意味」がなければ生きていけない

悲愴にして潔い傑作『ティンブクトゥ』以来、久しぶりの長編の訳出。柴田の翻訳に間違いはないと分かってはいても、さりげなくも見事な言葉の運びに1ページ1ページが読むのが惜しくなる

オースター作品の主人公は必ず旅をしている。常に何かを探している。探さなくてもよさそうなもんだし、手を出すと碌なことはないと薄々分かっていても探してしまう

彼らの旅によって、「か弱い僕たち、人間は意味がないと生きていけないのだ」といつも痛切に感じることになる。それは「自分探し」ではない。主人公たちにはすでに「自分」がある。ところが、「何か」をきっかけに自分が崩壊し、それでも生きるのはなぜか?と問うことに耐えられず、意味を求めて旅を始めてしまう

本作では忘れられたハリウッド俳優と忘れられた作家の遺作という2つの「意味」が入れ子になってマトリョーショカの如く次々に「意味」が現れてくる。架空の物語に現れた架空の俳優と作家の遺作であるにも関わらず、読み進むほどに二人が実在であるかのような錯覚を避けては通れない。描写の緻密さ、あるいは緻密にするために敢えて曖昧にする技術に驚く。村上春樹の『風』でのデレク・ハットフィールドの実在性がかつて揶揄されたが、それと同様の「実在の重み」さえあるのだ。かくして物語りは奔放でありながらも「絶対にないとは言い切れない」と幻惑される喜びに満ちている(その重みはオースターがとり組んだプロジェクト”トゥルーストーリーズ”によって獲得したのではないかと思われる)

と、ここまで書いておきながら僕はまだ本作を読み終わっていない
すみません
静かなるページターナー、オースターと柴田の本だ。一気に読んでしまえるのだけど、秋の夜長を持て余さないように、1ページ1ページを無理してでもゆっくり読んでいたいからだ
半分まで読んだところですでに強烈な展開
息を飲むしかった『ティンブクトゥ』の最後の数ページのような結末が待受けている気がする

あ、邦題を見たときラウタヴァーラの名曲『幻影の書』をモチーフにしたか、と思ったが原題が違った。もしかして柴田にはラウタヴァーラに感じるところがあったのかもしれないが
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.1
(5pt)

僕たちは「意味」がなければ生きていけない

悲愴にして潔い傑作『ティンブクトゥ』以来、久しぶりの長編の訳出。柴田の翻訳に間違いはないと分かってはいても、さりげなくも見事な言葉の運びに1ページ1ページが読むのが惜しくなる

オースター作品の主人公は必ず旅をしている。常に何かを探している。探さなくてもよさそうなもんだし、手を出すと碌なことはないと薄々分かっていても探してしまう

彼らの旅によって、「か弱い僕たち、人間は意味がないと生きていけないのだ」といつも痛切に感じることになる。それは「自分探し」ではない。主人公たちにはすでに「自分」がある。ところが、「何か」をきっかけに自分が崩壊し、それでも生きるのはなぜか?と問うことに耐えられず、意味を求めて旅を始めてしまう

本作では忘れられたハリウッド俳優と忘れられた作家の遺作という2つの「意味」が入れ子になってマトリョーショカの如く次々に「意味」が現れてくる。架空の物語に現れた架空の俳優と作家の遺作であるにも関わらず、読み進むほどに二人が実在であるかのような錯覚を避けては通れない。描写の緻密さ、あるいは緻密にするために敢えて曖昧にする技術に驚く。村上春樹の『風』でのデレク・ハットフィールドの実在性がかつて揶揄されたが、それと同様の「実在の重み」さえあるのだ。かくして物語りは奔放でありながらも「絶対にないとは言い切れない」と幻惑される喜びに満ちている(その重みはオースターがとり組んだプロジェクト”トゥルーストーリーズ”によって獲得したのではないかと思われる)

と、ここまで書いておきながら僕はまだ本作を読み終わっていない
すみません
静かなるページターナー、オースターと柴田の本だ。一気に読んでしまえるのだけど、秋の夜長を持て余さないように、1ページ1ページを無理してでもゆっくり読んでいたいからだ
半分まで読んだところですでに強烈な展開
息を飲むしかった『ティンブクトゥ』の最後の数ページのような結末が待受けている気がする

あ、邦題を見たときラウタヴァーラの名曲『幻影の書』をモチーフにしたか、と思ったが原題が違った。もしかして柴田にはラウタヴァーラに感じるところがあったのかもしれないが
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145