幻影の書
評判
幻影の書の評価:
4.43/5点 レビュー 35件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全64件 61〜64 4/4ページ
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幻影の書の評価:
4.43/5点 レビュー 35件。 B ランク
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ポストモダンの旗手から、超一流のストーリー・テラーへ成長したポール・オースターが、この本において新たなる高みに達した事は間違いなく、彼にとって記念碑的な作品だと思う。語り口の饒舌さ、映画製作の経験の取り込み、小説としての重層的構造、ポストモダン的登場人物、古典文学に関する該博な知識、そして濃厚なエロチシズム等々、彼の持ち味の全てを出しつくした上で、彼の作品では極めて珍しい主人公の魂の救済の物語となっていることもこの小説の特徴だろう。
主人公デイヴィッド・ジマーの魂の救済の物語を大枠にして、喜劇俳優ヘクター・マンの数奇な人生とその俳優に翻弄された複数の女性の生涯を中軸に置き、さらにその中で喜劇俳優時代の無声映画の数々や隠遁生活の中で作り上げた決して公開される事の無い映画を詳細かつリアルに活写し、更にはフランスの作家・政治家シャトーブリアンの著作「M'moires d'outre-tombe」の文章を散りばめた構成は、数多い彼の同様の著作の中でも最高の完成度を示している。特に外部の人間として主人公だけが見た「Inner Life Of Martin Frost」という映画は、ヘクターの贖罪意識の産物であるとともに、デイヴィッドの数奇な経験を予見した内容になっており一際精彩を放っている。
更に今回「やられた!」と思ったのは、先日読んだ「Travels in the Scriptorium」がこの作品の中で既にヘクターの作品の題名として、そして更には「Inner Life Of Martin Frost」の主人公の著作の題名としてご丁寧にも二度も登場していた事。この書については出版社からのプッシュもあったのだろうが、オースター、本当に油断のならぬ相手である。