死神の浮力

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

死神の浮力の評価:

3.97/5点 レビュー 139件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.97pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全189件 181〜189 10/10ページ
No.9
(4pt)

死神を主人公にした非常に奥の深い作品

「死神」が主人公となると、こういうストーリーになるのか、と、妙に納得してしまいました。人間の運命が、こう定めれているのかもしれない、と、問いかけられているようにも思いました。
 
宗教的、哲学的な色合いも強い作品だと思います。
 
主人公の死神・千葉は、小説家の「山野辺」を「担当」することになります。
(つまり、山野辺の運命に、死神が舞い降りたことになります)

山野辺は、彼のファンを名乗る近所の男、本城に娘を殺されたという過去を持ちます。その本城が無罪釈放とされてしまうことになり、山野辺は夫婦で本城への復讐を企てます。
 
山野辺を担当する千葉は、本城への復讐に、行動を共にすることになります。
対して、本城は、山野辺からの復讐を予見し、返り討ちを企みますが。。。彼自身にも死神・香川が「担当」としてつきまとうのです。

殺人事件の遺族夫婦の夫と、加害者の両方に死神が。。。生き延び、また、命を終えるのはどちらなのか。。。読み手としては、山野辺に肩入れをしてしまいますが、果たして、彼らがそれぞれどのような運命を迎えるのか、非常に読ませます。
 
死神「千葉」のキャラクターは非常に特異ですが、それでいて、大変魅力的です。
 
普通の人間にとっての一生は、千葉にとっては一瞬の出来事でしかありません。山野辺夫妻は本城への復讐に怨念を燃やしますが、千葉は死神としての役割を果たすため、彼らとは淡々接します。
 
この山野辺夫妻と死神・千葉の振る舞いのギャップがストーリの魅力を引き立てます。そして、千葉が死神として備えている超常的な能力が、結果として山野辺夫妻の復讐の力添えとなっていくことも、大きな読み応えとなるところです。
 
山野辺夫婦と死神・千葉の会話がストーリーに味わいを添えます。一見かみ合わないようでいて、文芸に秀でる小説家と、幾代にもわたって人の最後を見届けてきた死神との会話だけに、非常に奥深い意味合いを滲ませていると思います。
 
死神に付きまとわれることになった人間にもたらされる宿命はいかなるものか、謎解きやサスペンス作品とは、異なる別種の緊迫感を感じながら楽しむことができたと思います。
 
読み終えて、「人間はいつか死ぬ」ことの寂寥感を覚えつつ、今、普通に生きていられることのありがたさをしみじみと実感しました。
死神の浮力 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 死神の浮力 (文春文庫)より
4167906473
No.8
(4pt)

死神を主人公にした非常に奥の深い作品

「死神」が主人公となると、こういうストーリーになるのか、と、妙に納得してしまいました。人間の運命が、こう定めれているのかもしれない、と、問いかけられているようにも思いました。
 
宗教的、哲学的な色合いも強い作品だと思います。
 
主人公の死神・千葉は、小説家の「山野辺」を「担当」することになります。
(つまり、山野辺の運命に、死神が舞い降りたことになります)

山野辺は、彼のファンを名乗る近所の男、本城に娘を殺されたという過去を持ちます。その本城が無罪釈放とされてしまうことになり、山野辺は夫婦で本城への復讐を企てます。
 
山野辺を担当する千葉は、本城への復讐に、行動を共にすることになります。
対して、本城は、山野辺からの復讐を予見し、返り討ちを企みますが。。。彼自身にも死神・香川が「担当」としてつきまとうのです。

殺人事件の遺族夫婦の夫と、加害者の両方に死神が。。。生き延び、また、命を終えるのはどちらなのか。。。読み手としては、山野辺に肩入れをしてしまいますが、果たして、彼らがそれぞれどのような運命を迎えるのか、非常に読ませます。
 
死神「千葉」のキャラクターは非常に特異ですが、それでいて、大変魅力的です。
 
普通の人間にとっての一生は、千葉にとっては一瞬の出来事でしかありません。山野辺夫妻は本城への復讐に怨念を燃やしますが、千葉は死神としての役割を果たすため、彼らとは淡々接します。
 
この山野辺夫妻と死神・千葉の振る舞いのギャップがストーリの魅力を引き立てます。そして、千葉が死神として備えている超常的な能力が、結果として山野辺夫妻の復讐の力添えとなっていくことも、大きな読み応えとなるところです。
 
山野辺夫婦と死神・千葉の会話がストーリーに味わいを添えます。一見かみ合わないようでいて、文芸に秀でる小説家と、幾代にもわたって人の最後を見届けてきた死神との会話だけに、非常に奥深い意味合いを滲ませていると思います。
 
死神に付きまとわれることになった人間にもたらされる宿命はいかなるものか、謎解きやサスペンス作品とは、異なる別種の緊迫感を感じながら楽しむことができたと思います。
 
読み終えて、「人間はいつか死ぬ」ことの寂寥感を覚えつつ、今、普通に生きていられることのありがたさをしみじみと実感しました。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.7
(5pt)

死神千葉の冷たい暖かさが心にしみる小説

伊坂さんは東日本大震災以降、少し変わったように感じます。
作品の根底に「明るさ」をより感じるようになった気がします。
この小説の設定は、これ以上ないくらい、哀しいものになっています。
それでも、読み終わったときに、心があたたかくなります。
それは死神千葉の、滑稽なまでに真面目な言動によって、より一層深まります。
死神の浮力 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 死神の浮力 (文春文庫)より
4167906473
No.6
(5pt)

死神千葉の冷たい暖かさが心にしみる小説

伊坂さんは東日本大震災以降、少し変わったように感じます。
作品の根底に「明るさ」をより感じるようになった気がします。
この小説の設定は、これ以上ないくらい、哀しいものになっています。
それでも、読み終わったときに、心があたたかくなります。
それは死神千葉の、滑稽なまでに真面目な言動によって、より一層深まります。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.5
(5pt)

何とも穏やかな読後感。。。

まさかの「死神」続編!楽しみにしてました。
 愛娘を殺された作家・山野辺遼とその妻が犯人を追い、その犯人の本城は知能が高くシッポを掴ませない冷酷なサイコパス…が、そこに任務を遂行すべく千葉さんが絡み、どこか可笑しい言動でクスリとさせてくれます。
 (のっけから「参勤交代」を長々と話しだすんだからニヤニヤしてしまいました。前作でも「年貢制度がまだあるのか?」などトンデモなことを言っていたと思いますが、本作はもっと全開です)
 山野辺の敵討ちは成功するのか、山野辺は生きるか死ぬか、本城はまんまと逃げるのか、と胸中穏やかで無かったですが、読後は不思議に穏やかな気持ちになりました。
 「映画でも本でも、彼らのその後を想像できる話って良いなぁ」と常々思うのですが、これもそんな話でした。私も「死神の精度」再読しようと思います。
 

死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.4
(5pt)

前作は読んでから

死神の精度が好きだったので凄く良かったです!
ただ、前作を読んでない人にはちょっと不親切かも。
なぜかというと、主人公(千葉さん)の紹介とか、死神の仕事がどんなもの(「可」「見送り」とか)か、雨が降るとか音楽好きみたいな基本設定の説明がほぼないからです。
読みながら「そういやこういう設定あったな」とか思い出してワクワクしたけど、読んでない人は、ん?ってなるような気が。。。

というわけで、前作のファンとして星5つです。
ノリはあんまり変わらないので、前作を読んだ人は前作の評価とそのままになると思います。
読んでない人は評価辛くなるんじゃないかなぁ。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.3
(5pt)

7日目まで死なないことに安心するし、焦る

本書では「死神の精度」の音楽を愛する死神、千葉さんと再会できます。
設定については本書でも説明がありますので「死神の精度」未読でも楽しめるかと。
伊坂先生の本に手をつけたことのない人にもおすすめしたい。(ちなみにわたしも死神の精度以外の伊坂先生の著作は未読です。)

1年前に小説家の山野辺遼の娘(菜摘)が殺される。容疑者の本城は無罪判決で釈放。それは、山野辺遼と
その妻の美樹の、復讐のはじまりでもあった。
そこに千葉が現れ、一週間、山野辺夫婦と千葉は本城を追うことになる…というのがだいたいのあらすじでしょうか。

話が進むにつれ、本城がなかなか死なない不安感と、山野辺夫婦が(千葉さんが監査中なので)死ぬことがないという安心感に、興奮させられます。
三時間、夕食もとらずに読了してしまいました。

一部痛そうだったりハラハラしたりする場面がありますが、千葉さんの人間離れをした(だって死神ですからね)愛嬌ある言葉や仕草によりだいぶ緩和されています。
ミステリーものが苦手な私でも千葉さんがいるとどんなピンチも安心して読めました。
また千葉さんに会いたくなり、「死神の精度」を棚から出す人は少なくないでしょう。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.2
(4pt)

理不尽な出来事と必然の死

一年前、小説家・山野辺遼の娘である菜摘が殺された。そして今、容疑者には無罪判決が下った。容疑者逮捕に至るまでの数々の有益な証拠は、裁判が始まった途端に次々と翻った。その不自然な現象の裏には、ある人物の大いなる決意が込められていた。無罪判決を受けて、山野辺宅にマスコミが大挙として押し寄せるなか、一人の男が現れた。その男は「千葉」と名乗った。というあらすじです。

これまでの伊坂幸太郎さんの著作は全て読んでいて、本書の発売が決定した際には脱臼しそうになる程嬉しかった記憶があります。あの死神・千葉の物語をまた読むことが出来るという感動に打ち震えていました。その震えはやがてゆっくりと止まりました。本書の発売日に脱兎の如く書店に馳せ参じ、脱走兵の勢いで自宅に戻り、一心不乱に読み耽りました。本当に不躾な表現ですが、「伊坂さんも大人になったなぁ」という感慨が起こりました。がっしりと地面に根を下ろして、物語の浮沈による揺れを最小限に抑え込むような、心地よい「平常心」をもって安心して読み進めることが出来ました。

「大人になったなぁ」と感じた要因としては、自らの娘(小学生)を殺害された山野辺夫妻の、憤り、詠嘆、絶望が克明かつ丁寧に描かれているところです。私は20代前半で独身なのですが、この物語に描かれている、子を持つ親の心理・行動には、すんなりと同調することが出来ました。娘が殺害されてからの一年間、感情そのものが消滅したと思いきや、ふとした瞬間に娘の「生」を感じてしまった時に滂沱する様子には、胸が締め付けられる思いでした。

本書の容疑者は、サイコパスであるとされています。確率としては、25人に1人いる「冷淡な脳を持つ人間」です。「あいつは〜だから、〜だ」と、ある定義の中にその対象を押しこめて、その枠内だけで判断することは非常に危険です。しかし、そう判断せざるを得ない程の人間が現実の世界にも一定数存在することは、厳然たる事実です。そのような「通じない」相手になんらかの危害を加えられた場合にどうするのか、本書を通して自らが考えなければならないことです。

余談ですが、死神・千葉の名前の由来は単なる地名の他に、「千」年以上生きていることも含まれていると思います。「葉」はなんでしょうかねぇ。う〜ん、葉っぱを忌み嫌っているとかそんなところでしょうか。

作品の中でとりわけ印象に残ったセリフは、「幸せになるためには、死については考えちゃいけないんです」というものです。確かに、死について長時間考えていると鬱々としてきます。私は就寝前によく、死について考えています。世人が羊の数を数えて眠りにつこうとする段に、私は死神の持つ、鎌の数をひたすらにそして冷静に数えています。一カマ、二カマ・・・といった塩梅です。是非に。

話は戻りますが、人間は自由な時間をなるべく少なくして、あれやこれや考える時間を減らした方が良いのでしょう。小説家の場合、芥川龍之介は「ぼんやりした不安」で自殺していますし、太宰治の場合は自殺がライフワークでした。この二人に共通する点は、「自由業であること」と「幾多の名作を残した天才作家」であることです。一見、時間を自由に使える身分であり、多くの人に評価され、承認欲が満たされている状態というのは、人間が幸福を感じる際に大きなウエイトを占めていると思いますが、二人は自らの意思で命を絶つことを選びました。他人が思いを巡らせても結句、当人達にしかわからないものです。

物語の後半に、山野辺遼の父親が、小学生の山野辺遼のすこやかな寝顔を見て、「あぁ、この子も必ず死ぬんだ」と思い、得も言われぬ恐怖に駆られるという場面があります。「産む」ということは、「殺す」ということでもあります。一方的に生命を与えて、自然のままにその生命を終結させます。そこまで明確な思いを山野辺遼の父親が意識したかどうかはわかりませんが、一つの生命を現出させることに加担した人間として、不安感、背徳感に苛まれたことは確かです。まぁ、あまり深く考えこまないほうがいいのでしょう。幸せになりたいですし。私の場合は小説を読むことが最上の幸せです(恥)。

長々と書いてきましたが、伊坂幸太郎さんは「逃げない」作家だと思います。今作も、人間が生きていく上であやふやなままにしておきたいものに対して、真摯に捉え、丁寧に描き切っています。著者の作品は生涯、読み続けることでしょう。

追記 それにしても作家には映画好きが多いですね。本作もいくつかの映画について触れています。映画は殆ど見ていないので、勝手に想像して補っています。私事ですが、「ポニョ」を最後に、それ以降全く観ていません。ジブリの宣伝ではないので、あしからず。風立ちぬ。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.1
(5pt)

死神の恩寵、って感じました。不思議ですネ。

伊坂さんの物語には、いつも、作家としての挑戦があり、それがまた面白いからほんとうに好きです。

この作品もそうでした。

エンターテイメントのサスペンスでありながら気楽に読めるファンタジー。

第一級の文学作品を思わせる描写を見せながら、会話は、くすりと笑わせる上品な漫才や落語のよう。

それでいて、生きるために大切なメッセージを、われわれ読者は勝手に読み取ることができる。

で、また、この物語の読了感。わたしには、はじめての体験でした。

死神って、浮力より重力のほうが似合ってますよね。

でもこの作品を読むと、それとは正反対の印象。

まるで死神の恩寵です。冷たいけれども温かい。そんな「救い」があるんですね。不思議です。

いつも楽しいお話をありがとうございます。
貴方の挑戦を、ずっと読み続けていきたいです。

あぁ、これレビューじゃないですね。
ごめんなさい。いちファンからの敬意と、心からのお礼です。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X