誉れあれ
評判
誉れあれの評価:
4.00/5点 レビュー 4件。 - ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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誉れあれの評価:
4.00/5点 レビュー 4件。 - ランク
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かつて東直己は「名無しの探偵」や「私立探偵 畝原」のシリーズで、北海道という土地に蔓延る、権力を持つものがその裏側で行なう悪事を徹底的に糾弾し続けた。本書はその東直己がその糾弾の矛先であった道警の警察官をを主人公にした小説。引用した言葉どおり、地道に無駄足を踏みながら情報を収集する刑事たちの姿を描いた、まさにまっとうな警察小説。劇的なドラマが描かれるわけでなく、また主人公であるはずの新人刑事、梅津の活躍が描かれるわけでもない。「エダ」と蔑まれた南支署の刑事たちが正義を追う姿を描く。それはそれでリアリティに富んだ地味な小説といいたいのだが、それにしては今度は南支署の位置づけがあまりにキレイごと過ぎてお伽噺のように思えてしまう。その結果、地味であり、なおかつカタルシスを得られないお伽噺という中途半端な作品になってしまっている。そしてまた残念なのは、あまり東直己らしからぬ作品になってしまっていることだ。
最近の東直己の作品はグダグダオヤジが、ただひたすら愚痴をこぼしてばかりいるような作品という印象が強く、ファンでないひとに勧めることが難しい。しかし、ぷんぷんと臭うような東直己という個性を味わうことができる作品であり、ファンとしては、けっ、仕方ないけどつきあっちゃうみたいな、決して「美味しい」ものではないが、この独特の「旨さ」に病みつき的な作品なのである。しかし本書は、東直己の臭いがしない、ありがちな警察小説のひとつにしか過ぎないのである。
小さな存在でしかない「善の警察」を創ることで、現実にある権力に拠った巨悪を糾弾するのは、この作家の従来の姿勢と変わらないのかもしれない。しかし、聞いただけでは字面まで分からない人の名前を、その漢字がわかるまでは、まずカタカナで表記するとか、あるいは本編とまったく関係なく、ふと気になったことが執拗に気になってしまう人間の性質の描写とか、この作家特有なそういう妙な拘りが感じられない。すっきりして読みやすくはあるが、何かつまらないという感じ。
それは刑事のひとりひとりを人間として描いた作品でなく、梅津という新人刑事を中心に据えてみたものの、結局は「南支署の刑事たち」の行動を描いた作品だからなのかもしれない。
タイトルになった「誉れあれ」とは、北海道警察歌“銀嶺映ゆる”の最後の一節「我が道警に 誉れあれ」に因る。それはまた警察という仕事も組織も大好きだった梅津の父親が、黙々と任務を果たしたあと、少量の酒をチビチビ飲みながらよく歌っていたというエピソードにも繋がる。しかしそのタイトル、エピソードは、ありがちの警察小説のようには、作品のなかでうまく結実したとは言いがたい。もしかしたら、この部分をもう少し巧く書き、あるいは梅津という刑事の人間をもう少し深く書いたならば、本書はありがちな警察小説としての及第作になったのかもしれない。もっとも、そうであっても東直己的でないことには、きっと変わりはないのだろうが・・。