偉大なる、しゅららぼん
評判
偉大なる、しゅららぼんの評価:
4.26/5点 レビュー 104件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全171件 121〜140 7/9ページ
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偉大なる、しゅららぼんの評価:
4.26/5点 レビュー 104件。 B ランク
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今度は『プリンセス・トヨトミ』のように大がかりなSF仕掛けをもくろむこともなく、本来の万城目ぶしが冴えわたり、ふしぎな世界に拉致されて、その拘束力が最後まで持続し、なんともいえない充実感がありました。
琵琶湖という水の力を得て、湖畔に住みつづける、ふたつの家系、日出と棗。意識を扱うらしい日出と、力を扱うらしい(実は違ったのですが)棗は、犬猿の仲、なぜなら、どちらも相手の力が、耐えられないような(下品な)音となって鼓膜を襲うので、相手が動くと、自分も力を使えなくなる、という両すくみ状態らしいのです。
主人公涼介は能力を認められ、高1になった年に日出本家の城に迎えられ、能力を磨くとともに、舟で送り迎えされて高校に通いだします。伯父淡九郎、おてつだいのような濤子、従兄の淡十郎、その姉で、他人の内心の声がすべて聞こえるために引きこもりになった清子らと、時代劇のような生活を始めます。
物語は涼介の学校生活を中心に描き、彼は一族のおかしな儀式や、「力」について首をひねりつつ学んでゆきますが、横柄な従兄が校長の娘に恋をしたり、涼介自身は、仇敵の棗一族の娘にひかれてしまったり・・・。
事態は突然、もと城主の家系だった校長がやってきて、両方の一族に、湖畔から三日以内に出てゆくように申し渡し、強烈な「力」で当主ふたりを昏倒させてしまうところから急展開。
いったい何が起きたのか。涼介、淡九郎は、清子のパワーに助けられ、敵の棗広海と協力し、特に涼介と広海がふたりあわせて力を発したときのすさまじい音が「琵琶湖のぬし」を呼び寄せてしまうことに気づきます。もうこのあとは、超能力と湖のぬしとの関係をめぐって、奇蹟、どんでん返しの連続です。
ラストは思い切ったタイムファンタジーですが、またもうひとつどんでん返しも用意されており、青春物語としてあまずっぱくせつない後味が、琵琶湖の青い水を背景に広がります。
本書ではまるで戦国時代のようにいがみあう一族の矜恃と滑稽さがこもごもに描かれるばかりか、ヒトをくったような超能力描写のかずかずが実にいい味を出しています。特に、その渾身の「しゅらら」「ぼん」の音だけでなく、涼介が湖を見渡して吹き鳴らすトランペットの「ぺぷぷ」「ぴっぷぷぷ」など、水と音とのかかわりがあちこちにちりばめられ、音の振動数が、人体内の水に作用して「力」となるのだ、という神話的な解き明かしにもつながっていきます。民話的な落としどころもあちこちにあり、寿命四十万年に及ぶ古代湖、琵琶湖と民のかかわりという大きな地点に着地しておわったのは見事です。
それにしても「しゅらら、ぼん」。こんな奇想を作者以外のだれが思いつくでしょうか。超能力のオノマトペなのですが、ただのおかしな言葉ではなく、実は湖のぬしの正体とも関係があり・・・張り巡らされたシンクロニシティの面白さに何度も読み返したくなります。
また、湖が舞台だからでしょうか、作者のこれまでの物語の中では、人口密集度、にぎやか度が一番少なく、のびのびと神話時代の風が吹きかよう気がします。
奇人、変人ばかりの一族の憎めなさもあいまって、ファンタジー度は一番高めかもしれません。