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真夜中への鍵



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【この小説が収録されている参考書籍】
真夜中への鍵 (創元推理文庫)

真夜中への鍵の評価: 10.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(10pt)

日本描写の細やかさにサプライズも加わった傑作

今回のクーンツは近年の作品の中では上位の部類に入る力作だと思う。『ベストセラー小説の書き方』で日本を舞台にした作品を書いた件が述べられていたが本作がそれ。
この作品を書くに当ってクーンツは京都への取材はせず、日本に関する膨大な資料と日本に詳しい知人への訊き込みで書いたというが、とても信じられないほどの緻密さである。過分に日本人の礼儀正しさを賞賛しているような気がするが凡百の外国作品に見られる「日本人」=「ちょんまげ」というような荒唐無稽さは無く、当時日本に住んでいるクーンツの知人から日本に取材に行かずあれほどの物を書いたことが信じられないとの賛辞を頂いたそうだが、それも頷ける。
しかも日本での話はおつまみ程度といったものではなく、全体の8割を占めるから、日本ファンに向けてのほんの手遊びで書いたものではない事は明らかである。登場する日本人名も佐藤とか鈴木とかありふれたものではなく、またかといってニツヅカとかマクラダとか本当にいるのかと首を傾げたくなるような奇妙なものでもなく、小説として十分特徴ある人物像が描け、しかも不自然ではない名前であることも驚き。
そして凝った日本料理についても日本人であるこちらが知らないような、もしくは食べたことないような高級な物だが実在する物として容易に想像できる物である事も更なる驚きであった。通常ならばここまでだけでも9ツ星なのだが、今回はあの傑作『雷鳴の館』にも通ずるサプライズが最後に用意されており、飽きさせない。
この最後に解る登場人物の相関関係の複雑さもよく練られて書かれているし、またシェルグリン議員がなぜ我が愛娘を洗脳させたのかが納得のいく説明で解決されることも素晴らしい。

クーンツの傑作『雷鳴の館』、『ウィスパーズ』、『ウォッチャーズ』、『邪教集団トワイライトの襲撃』に比べると物語力はやや劣るかもしれないが読者に真面目に向き合うクーンツの姿勢と複雑なプロットを見事に書き上げた豪腕を評して星10とする。

Tetchy
WHOKS60S

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