(短編集)
人柱はミイラと出会う
【この小説が収録されている参考書籍】 |
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.00pt |
人柱はミイラと出会うの総合評価:
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全1件 1~1 1/1ページ
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「江戸時代の風習が残っている日本」という舞台設定のミステリ連作集。ホワイダニットの反転と優しさに満ちた結末が秀逸な「ミョウガは心に効くクスリ」が個人的ベストです。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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ネタバレを含みます。 日本の風習自体をフィクションとして、現実に変わった習慣があるものとして設定されています。 私、初めの内は、本当に、この本の中に書かれている(例えば大きな建造物の工事のとき、人柱と言われる人が、地下の狭い一室に籠もって建造物完成までの間、神さまに人質という形で生活する)というのが、現実なのか、等と思ってしまいました。フィクションも、ここまで塗り込められて精巧に作られると騙されますね。(昔は、人が地鎮祭のとき、神に捧げる意味で本当に犠牲となった、という事は有るそうですが、それを、現代は、工事期間中、窓一つない狭い部屋で暮らす、という風に設定されてるんです。半年とか二年とかです) 七編からなる短編集で、それぞれ、人柱、黒衣(くろご)、お歯黒、厄年、鷹匠、ミョウガ、参勤交代、をテーマに、それぞれを嘘の設定で本当らしく書いてあります。 嘘だと初めから見抜ける人は、これはパロディー(パロディーという括りも違っているかもですが)として面白い、と弾けるように笑って読めるし、現実のしきたりだと思った人は周りの人に色々尋ねてみて、ああ、作者にしてやられた、と成る訳です。 私は建築の知識など皆無に近いですから、人柱の例の嘘の設定には騙されました。お歯黒の話し辺りから、ああ、無茶な嘘と思いかけて、人にも訊いてまわる内に、全作、日本の風習の設定が嘘であると判りました。(ミョウガの話しには、特に嘘はなかったですが。ひょっとすると、それも見抜けていないだけかも知れません) 必ず前半すぐで事件が起きて、その謎を解きながら、大骨の設定は嘘で、それが本当らしく描かれる。 流石は、エンターテインメント、と思いました。 | ||||
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同一の登場人物が出てくる短編が七本収録されている。 「現代日本に人柱があったら」「政治の舞台に黒衣がいたら」といったSFとファンタジーが混ざったような設定の舞台で、ミステリが起きる。 一本一本が短く、こってり系というよりあっさり系。 パズルミステリに近いが、読み手はゲストとしてギャラリーに徹し、世界観と謎解きを楽しむ作風である。 キャラクターノベルではなく、架空の社会が主人公、登場人物は添え物という印象を受けた。 社会の設定に関してはかなり入念に作りこまれている。惜しむらくは、浅く広く整合性を持たせる方向で、深みが出なかったことだ。 一風変わったミステリが好きな人に薦める。 | ||||
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各短編共に外国からの留学生リリー・メイス、一木慶子が出合った伝統文化にちなんだ謎を、一木慶子の従兄で人柱をやっている東郷直海が解いていくのである。その謎は伝統文化をモチーフにしたものである。謎を解くヒントは伝統文化の常識を逆手についたものが多かったですね。「鷹は大空に舞う」がいちばん良かったですね。鷹匠の萩尾の気持ちがわからないではないですね。各短編を紹介します。「人柱はミイラと出会う」:土木工事は土地の神様との契約。土木工事中はいけにえとして人柱を差し出す。人柱として入っている曽根がいなくてミイラ化されている死体が入っている。それはなぜか?「黒衣は議場から消える」:黒衣は議員を陰ながら支援する人たちのこと。黒衣はいないものとして認識される。斉藤議員の黒衣(寺内)が姿を消した。寺内を探しているうちに、苫米地議員の黒衣(今井幸夫)が死体で発見された。「お歯黒は独身に似合わない」:お歯黒は既婚女性が歯を黒くする習慣。独身の山本がお歯黒をしているのはなぜか?「厄年は怪我に注意」:厄年になったら、一年間厄年休暇をとることになっている。厄年休暇をとっている研究員の2人が怪我をしてしまった。その怪我は何を目的にしたものか?「鷹は大空に舞う」:鷹狩りの伝統を守るために、警察に協力している。警察鷹は、犯人にあまり大怪我をさせないように訓練されているはずだが、逃走しているリーダーを殺したという。その殺した鷹はどうなるか?「ミョウガは心に効くクスリ」:嫌なことを忘れるためにミョウガを食べる習慣がある。一木議員の妻は、ひき逃げ事故を目撃してしまった。その残像を忘れるために食卓にミョウガを出した。ところが、一木家に段ボール箱いっぱいのミョウガが送られてきた。これは何のためなのか?「参勤交代は知事の務め」:知事は奇数月は地元、偶数月は東京で勤めなければならない。知事公邸のベッドに一万円札が敷き詰められている。それはなぜだろうか? | ||||
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表題作『人柱はミイラと出会う』など、7編を収録する連作ミステリ短編集。 「人柱」「お歯黒」「参勤交代」などの江戸の風習が残るパラレルワールドの日本を舞台に、それらの風習に絡んだ事件が、アメリカからの留学生・リリーの周囲で発生する。 ホームステイ先の娘・慶子に日本の風習を教わりながら、慶子の従兄で「人柱」を職業にする直海と出会ったリリーは、事件の謎を鮮やかに解いていく直海に心惹かれていく。 主人公・リリーの視点で物語が展開していくので、不思議な風習のあるパラレルワールドの日本に、違和感無く入っていける点が、良く出来ている。 また、起こる事件も、殺人事件や犯罪行為だけでなく、ちょっとした不思議や謎などもあって、日本の風習の設定と共に、なかなか面白い。 が、難を言えば、その風習の設定を良く理解していないと、事件の謎を解く鍵が見えてこない点があることである。 例えば、「人柱」にしても、私たちが知っている江戸の風習とは異なった現代的なシステムになっている点が、判っていないと、真相を先に見抜くことは難しいかも・・・。 | ||||
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苦言を呈すると、この作品中には、変な言葉が登場する。たとえば、「最高級の腕前」、「最高級の歯科医」、といった言い回しだ。他にいい言い回しが無かったものか。私も考えたのだが、思い浮かばない。これでいいのかもしれない。 この作品が有している独特のスタイルは、私にとっては新鮮だった。この作品は、SFの要素を持った推理短篇小説にして、長篇小説だ。 遠い過去、日本に存在していた、あるいは、伝説・物語・伝承として残存している慣習が、現代においてそれらとは少し形を変えて息づいている。そんな世界を舞台としている点で、この作品はSF的な要素を有している。 七つの短篇推理小説が、この作品には収められている。各作品はオムニバスとして読むことも出来るが、一つの作品ごとに、時は進んでいくため、七つの作品を続けて読むと、長篇小説としての側面も持つ。 語りは、日本の慣習になれない留学生リリーの視点に寄り添ってなされる。語りを介し、リリーに寄り添った形で読者は、この未知の作品の世界に入り込むことになる。あるいは作者は、私たち読者が、本作品に留学生として、入りこんで行く、という感覚を味わわせようとしたのかもしれない。 | ||||
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