ことのはロジック
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しっとりとした、それでいて爽やかな気持ちのいい話です。いっぷくで読むのに良いかな。 | ||||
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少し影のある少年と好奇心旺盛なヒロインが,友人らと日常の謎に向き合う様子など, 作品から受ける印象は,米澤穂信さんの『古典部シリーズ』に似ているかもしれません. とはいえ,言葉にまつわる謎にうんちくを交え,伏線をうまく散らしては拾い上げ, いささかロジックに寄せ気味で,背景の物語の強引さが気になることもありましたが, 違和感を残しつつの解決…からの二転三転など,どの話も最後まで引っ張ってくれます. また,少年がヒロインの秘密へと迫る最終話も,踏み込みすぎたことによる後悔や, 友人の手を借りながら,過去を振り払い,彼女に言葉と想いを届けようとする姿など, 言葉を扱う物語の最大とも言える難問を,アツく盛り上げ,きれいに着地をさせており, 青春ミステリの定番の流れではありますが,その幕引きは明るく爽やかな余韻を残します. | ||||
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「やはり雨は嘘をつかない」以来となる皆藤作品。前作で「雨」にネタを絞ってよくぞここまで話を作ったものだと感心させられた事から今回は「言葉」で話をどれだけ膨らませられるかに注目して拝読。 物語は主人公の墨森肇が隣のクラスにアキ・ホワイトという金髪碧眼の転校生がやってきた事を聞き付ける場面から始まる。女友達の小野羽流からアキが日本語の収集に興味を持っている事を頼んでもいないのに聞かされる肇だったが、その実アキに一目惚れしていた事を隠せずにいた。 その日の放課後アキがラブレターと思しき手紙を下駄箱から取り出しているのを見た肇は羽流に冷やかされながらもグラウンドの隅に聳える百日紅の下へと向かうアキの後を追う事に。暫く待てど姿を見せないラブレターの差出人に苛立つ肇だったが羽流が肇の名前で出した物だというとんでもない事実を教えてくる。仕方なくアキに話し掛けた肇に帰ってきたのは意外なぐらいに流暢な日本語。しかも羽流は手紙に「肇が日本語を教えてくれる」と書いていた事まで判明して肇には日本語話者として大きな重荷が課せられる事に。更には手紙がラブレターではないかと思っていたアキは「いつか夏目漱石が残した『月が綺麗ですね』以上の告白の言葉をもらいたい」とまで言い出しハードルは文豪レベルにまで上がってしまう。 そんな状況をニヤニヤ見守っていた羽流に肇は「まだからかうつもりなのか」と呆れるが羽流も「アタシだってここに用事があった」と反発。所属する体操部が急に呼び出しを掛け、回し手紙で知らされたその集合場所が百日紅の木だという。暫く待っても誰も来ない事から肇は羽流に付き合って「本当の集合場所」を探して回る事に…… ミステリ小説というジャンルが「謎解き」と「ドラマ」という二つの要素から成り立っているのは今さら説明する必要のない事なのだろうけど、意外とそのバランスというか塩梅は難しいのだなあというのが第一印象。ミステリというジャンルから読者が期待する凝った謎解きを用意したくなるのは分かるが、あまりに謎解きにこだわり過ぎるとドラマとしては些か不自然な部分が出てきてしまう、そんな矛盾を抱えながら話を作らなきゃならないミステリ作家の大変さが滲んでいたと言うか。 物語の方は全四本から構成される連作短編形式。前作の「雨」同様に「言葉」だけに絞ってよくここまでネタを引っ掻き集めてきたな、と感心させられるぐらいに言葉一本勝負。「伝言ゲーム」による集合場所探しから新生児の命名に使えない筈の漢字に秘められた母親の意思、聾唖者と視覚障碍者のカップルが作ったミステリ小説に隠された暗号といった感じで徹底して言葉ネタで攻めている。 キャラクター的には元・天才書道少年と持て囃された事で言葉に人並外れた関心を持ちながらスランプに陥った事で言葉に対する関心を失っていた肇と興味深い日本語を収集しては分厚い手帳に書き写していく金髪碧眼のアキが中心。この主役コンビに体操部のちびっこい女子・羽流や長身の爽やか剣道部員・香澄といったクラスメイトを絡ませて学園内で日常の範囲内で起きる謎を追う……という典型的日常ミステリ。 上にも書いた通り一つのテーマにネタを絞って話を組み立てていく、という部分では作者の並々ならぬ努力が伝わってくる。特に第三章の聾唖者の少年と全盲に近い少女のカップルが作り上げたミステリに仕込まれた暗号を巡る話は手話と点字という言葉を交わす上でハンディキャップを持った人たちにとって不可欠の道具を用いて普段は喧嘩ばかりしながら互いを思い合うカップルの初々しさがよく描けていたと素直に感心させられた。 が、第一~二章の前半部分が些かネックというか、読んでいて引っ掛かりを覚えたのも否定できない。特に第一章で羽流が所属する体操部の部員が振り回される「本当の集合場所探し」の展開は謎を成立させるために強引な展開を積み重ねた様な印象が強い。特に「ぎなた読み」が原因で勘違いが発生したと説明されるくだりでは「スマホで流れてきた文章を口頭で読み上げて本当にこんな勘違いが発生するのか?」と読者に謎解きを提供せんがための無理やりな理屈付けではないか、と首を傾げたくなった。 しばしば数学の文章問題で「池の周りをグルグルと意味もなく回り続ける兄弟」やら「何故か同じ駅に向かうのに時間差を付けて出発する兄弟」の不自然さがネタになる事があるけれども、本作の不自然さもこれに似ている。数学の問題であれば出題の為という事で状況の不自然さに目を瞑る事もできるけど、小説でこれをやられるとドラマとしての不自然さばかりが目立ってしまい興醒めしてしまう事になりかねない。 同じ様な問題は第二章で出てくる新生児の母親が記憶喪失になった……という下りでも言えるわけで、これ自体は後にその不自然さには気付いていたという説明がなされるのだけど、読者に対して「ここは話の流れとして不自然かもしれないけど黙って付いてきてくれ」という感じの作者の読者に対する苦しいメッセージが透けて見える様でどうにもモヤモヤした物を感じた事を否定できない。 不自然、という意味では肇自身のキャラクターについても言えるわけで「言葉に興味を失ってしまった元天才書道少年」というキャラ付けも最終章となる第四話以外では探偵役に据える為の方便として使われていた感が強い。第四章でアキの秘密を知った際には確かにかつての情熱を取り戻そうとする書道少年の姿として用いられるのだけど……これまた微妙と言うか(アキの秘密は序盤で「なんだよまたワンパターンな金髪碧眼のハーフ美少女とか出してんのか」と思っていただけにかなり意外だったけど) 「言葉」ネタ一本で勝負しようという作者の心意気は買うのだけど「言葉にまつわる日常の謎」を作る事に拘り過ぎてドラマとしては不自然で主人公のキャラ付けも最終話以外ではあまり活かされる事が無いままに終わってしまったなあ、というバランスの悪さが読後に残ってしまった印象。ミステリにおける「謎解き」と「ドラマ」の塩梅って本当に難しいのだなと思わされた一冊であった。 | ||||
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