六花落々
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「六花(りっか)」とは雪のこと。雪の結晶が六方対称であることにちなむもの。なかなかしゃれた名称ですね。 じっさい雪の結晶の写真を見ると、その多彩さに驚くほかありません。自然の生みだす美の、なんと見事なものか。 雪の研究といえば、中谷宇吉郎(一九〇〇―一九六二)を思い出します。彼は低温実験室のなかで初めて雪の結晶を作ることに成功しました。千変万化する結晶の形は、気温と水蒸気の過飽和度によるそうです。つまり結晶の形は、上空の気象状況を示している。彼が「雪は天からの手紙である」と語ったことは有名です。 『六花落々(ふるふる)』に登場する中心人物は三人です。下総古河藩主・土井利位(としつら)、家老・鷹見忠常、そして藩主の後学問相手・小松尚七。雪の結晶に魅せられた彼らが『雪華図説』という書物を著すにいたる。これが物語の骨子です。 のどかなドラマに見えますが、しかしながら時は幕末。怒涛の世情から無縁であるわけにはまいりません。物語には、歴史上の有名人も相次ぎ登場いたします。大槻玄沢、大黒屋光太夫、渡辺崋山、シーボルト、間宮林蔵、大塩平八郎……。全七話それぞれが独立した短編小説の味わいで、読み手をあきさせないのです。 「何故なに尚七」とのふたつ名で呼ばれる尚七は、自然の不思議を目にすると「なぜ?」「どうして?」との疑問をおさえきれず、観察・考究に没頭してしまいます。とりわけ彼をとりこにしたのが六花。オランダ渡りの蘭鏡(顕微鏡)で雪の欠片を覗き、結晶の形を写しとろうとする。でも、なかなかうまくいきません。すぐに溶けてしまうからです。 藩主の利位も、家老の忠常も、雪の美にぞっこんです。しかし、政治の世界に生きる彼らは何かといそがしい。尚七ほどにはひたれない。 作者は、利位を「情の人」、忠常を「理の人」に描いています。たとえば、シーボルト事件にかかわったとして尚七の親族が捕縛される。「一日も早く助け出さねばならぬ」とうろたえる利位を、忠常は「なりませぬ!」と諌めます。下手に手出しをすれば、こちらまで痛くもない腹を探られるからです。 凶作に苦しむ民を救わんと蜂起した大塩平八郎にたいしても、忠常はきびしく取り締まる。尚七は、救民のために立ち上がった平八郎の志に胸打たれ、「どうか温情あるお裁きを」と訴えますが、忠常は聞き入れない。 この三人の人物像にふれて、わたしは「経営における意思決定のクオリティは『アート』『サイエンス』『クラフト』の三つの要素のバランスと組み合わせ方によって大きく変わる」(山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』光文社新書)との指摘を思い出しました。 企業経営のみならず、この三つの要素は人間の創造的な営みにおいて欠かせない。 アートとは、美的センスを大切にする心。でも、これのみだと盲目的なナルシストになってしまいます。 サイエンスとは、道理・合理性を尊ぶ精神。でも、これを貫徹しすぎると、冷酷非情にも見えかねません。 クラフトとは、両者をつなぎながら、互いの思いをかたちにすること。でも、その作業にこだわりすぎると、どうしても視野がせばまります。 いずれにもかたよることなく、この三つをバランスよくダイナミックに連携させていけば、創造性をいかんなく発揮できるという。まさに利位はアート、忠常はサイエンス、尚七はクラフトであるといえるでしょう。 アートとサイエンスが議論をすると、アートはなかなか勝てません。理屈を駆使する能力は、サイエンスのほうがたくみです。 サイエンスとクラフトが協力すれば、建設的な展望が開ける。サイエンスの理論的考察とクラフトの経験が結びついて、新たな価値が生まれる。 結論を申しますと、アートが主導し、サイエンスとクラフトが脇を固める体制が、理想的なのだそうです。まさに利位、忠常、尚七のきずなです。 作者の西條奈加さんが、アート+サイエンス+クラフトの妙をご存知であったかどうかはわかりませんが、このような作品が生まれたということは、作者じしんがアート感覚、サイエンス能力、クラフト技巧をともにそなえていることの証しではないでしょうか。 | ||||
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私はとても面白く読めました。 戦が好きなら他のをお勧めします。 まず血が無理な主人公なので、戦国時代の激動とかはありません。笑笑 この時代の平和な日々を覗き見って思えば面白いです。 特に私は雪が好きで、雪の降らない地域に住んでいるので本当に楽しめました。 こてこての歴史小説とかを普段読まれる方にも、こういう時代物もたまにはいいんじゃないでしょうか、お勧めします。 | ||||
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最近こういう邪心の欠片もないような主人公と誠実さを絵に描いたような周辺人物が「殿にお仕えしてよかった」とか「 あなたに嫁いでよかった」とか互いに褒めあってる気持ち悪い時代小説が多くてうんざりです。 | ||||
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楽しめました。万物への「何故?」に捕われた下碌武士が、実直さ故にとても恵まれた道へと淡々と進んで行った。…本来なら触れずに済んだ「大道」へ触れてしまった故の葛藤には遭ったが、概ね恵まれた人生でした…、のお話だと思ってましたが、あとがき読むと作者さんが描きたかったのはその「上司」だったらしい。が、「上司」の方はとても「賢明かつ冷静、深慮の人」で凄い人物だと思いましたが、そっちの「心情」は推して知るべし、だったので、単純に語りの主だった尚七の物語だと思って最後まで読んでましたw | ||||
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