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非澄 さんのレビュー一覧

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レビュー数1

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(9pt)
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この設定を受け入れられるか否か

(電子書籍で読んだためか、作中の固有名詞に漢字間違いと思しきところが多く見られました。原著が近くの書店にも図書館にも見つけられないため正誤確認できず。私の読んだ通りの記述でいきます)

タイトルだけ見ると凄惨な連続殺人を扱ったコッテコテの本格ミステリと思われるかもしれない。わりかしその通りなのだが、如何せんびっくりなストーリー展開である。

たったふたりのミステリ愛好会・明智恭介&葉村譲のコンビは、謎の少女・剣崎比留子の仲介もあり、映画研究会の夏合宿に参加できることになる。
大きな湖のほとりに佇むペンション・紫湛荘(しじんそう)。明智はミステリ好きならついつい行きたくなってしまうシチュエーションや、映画研究会に届いた脅迫状の謎につられて半ば強引に合宿参加を打診していた。
しかしそこでは“現実”には有り得ない連続殺人が勃発し、参加メンバーたちもペンションに閉じ込められ脱出することが不可能になってしまう。
美少女探偵・剣崎比留子、ミステリ愛好会代表・明智恭介、ふたりのワトソン・葉村譲、三人の運命と殺人事件の真相は・・・?

タイトルからも予想できるであろうし、比較的序盤でコトは起こるのでネタバレを隠す必要もないのかもしれないが、この作品の舞台・設定は現実には有り得ない。そんな理由から殺害方法(凶器? 犯人?)も予想しようがなく、リアリティを求める人には違和感も強いかもしれない。
とは言えそんな前提も一度受け入れれば、紛うことなき本格へと様変わりする。性質の分からない殺人犯ではあるが、きちんと推理に筋は通っているし、細かな伏線ひとつひとつも丁寧に回収され、無理なく作品を作り上げていると言える。なにより有り得ない世界だからこその斬新さがウリとなって活きてくる。
美少女探偵という設定も言うほど軽い印象は受けないし、終わってみるとやはり本格ミステリだなぁと満足できる。

結局は世界観を受け入れられるかどうかに尽きるだろう。ゲーム世代には親和的だが、推理しながら読むミステリファンには不向きかもしれない。ただ相性を差し引いても、読まず嫌いはもったいない完成度であることは指摘しておきたい。
屍人荘の殺人
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