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非澄 さんのレビュー一覧

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レビュー数3

全3件 1~3 1/1ページ

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No.3:
(7pt)

絶え間なき心理戦

原題は“The Man In The Moonlight”。
元祖精神科医探偵ベイジル・ウィリング博士のシリーズ第2弾が本邦初訳で登場。シリーズのメインキャストの「あの人」が今作で初登場。魅力的な容疑者のひとりのため知らずに読んだ方が(ミステリとしては)楽しめるが、知っていたら知っていたで感慨深いものがある。

フォイル次長警視正は立ち寄った大学で殺人計画の書かれたメモを拾う。なにかの悪戯かと思われたが、直後構内で行われていた奇っ怪な心理学実験の最中に拳銃が消えてしまう。気になったフォイルがその晩再び大学を訪れると、予感が的中して生化学の教授が遺体となって発見された。日中フォイルと顔を合わせていたその教授は「絶対に自殺はしない」と断言しており、また現場から逃げ去ったとされる犯人の目撃証言は悉く食い違っていた。嘘をついているのは誰か? 動機は一体なんなのか? そして謎に包まれた被害者の過去とは? ウィリングはその観察眼で次々と謎を暴いていく。

解説の鳥飼氏と言いたいことの多くが被ってしまうが、このウィリング博士ものの作品はいろいろなテイストのミステリが混じっている。特にサスペンステイストの強い作品と、正統派の本格ミステリが評価を得ることが多く、今作のベクトルはどちらかと言えば後者である。今作の一番の魅力は綿密に描かれた登場人物たちの腹の探り合い。作中延々と心理戦が続いており、ユニークな登場人物の魅力が引き立つ要因となっている。また心理学(或いは精神医学)的な何かを取り入れたとされるミステリは古今東西枚挙に遑がないが、それらには首を傾げたくなるようなものも多い。その点今作はなかなかに誠実な出来のように思われる(もちろん無理くりこじつけていて説得力がない部分もないとは言わないが)。ド派手は展開はないものの、本格の名手マクロイ、さすがの安定感である。

探偵役に個性がなさ過ぎるという指摘もあるし、事件自体も地味だったりするが、意外な手がかりに奇妙な事件、めまぐるしく変化する時代背景を色濃く受ける美しい筆致、不思議な中毒性があってまだまだ止められそうにない。
月明かりの男 (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ月明かりの男 についてのレビュー
No.2:
(7pt)

トオリヌケ キンシの感想

加納さんの作品を読むのはおそらく10年ぶり。
今回も日常の謎系ミステリではあるのですが、もうその呼び名に違和感を覚えるくらい、別の「何か」である気がします。
周りから気付いてもらえない「生きづらさ」を抱えた人々がほぼ全編を通して登場。加納さん自身の闘病経験がこの作品を作り上げたのか、それとも私が長く読んでいなかった間にこういう作風に変わったのか、それはわかりません。

相変わらずのハッピーエンド率ですが、何故だろう目が潤んで…。
トオリヌケ キンシ
加納朋子トオリヌケ キンシ についてのレビュー
No.1:
(7pt)

面白かったけれど

まったく想像しない結末で充分に楽しめました。
が、難しい石膏の解説とやたら煩雑な人間関係に惑わされていたところもあるかも。そういう意味では少し面倒ではありました。
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)
法月綸太郎生首に聞いてみろ についてのレビュー