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とかげ さんのレビュー一覧
とかげさんのページへ書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.67pt |
レビュー数9件
全9件 1~9 1/1ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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メフィスト賞を受賞した、殊能将之のデビュー作。
次の獲物である美少女の周辺を調査していた主人公は、死体となった彼女の第一発見者となる。美少女の首にはハサミが突き立てられていたのだが、これはマスコミから「ハサミ男」と呼ばれている殺人犯の手口にそっくりだ。しかしそんなはずはない。「ハサミ男」は自分なのだから―― 模倣犯自体はさほど珍しい要素ではないが、『ハサミ男』では殺人犯が主人公で、自分の手口の模倣犯を探すという設定が目新しい。 また、その主人公自身の性格もなかなか面白い。淡々とした語り口で、「医師」と呼ぶ人物と不思議な会話をし、自殺未遂を繰り返し、何事もなかったかのように仕事をこなし、そして推理を働かせながら模倣犯を探すのだ。 このシリアルキラーに共感はできないのだけれど、なぜか応援したくなってしまう。 本文では主人公視点の他、警察視点でもこの事件を追っていく。 警察側も個性のある面々で、若い刑事の目線から、事件の情報や警察の捜査状況が徐々に判明していく。 アンフェアな表現やあからさまなミスリードなど、少し引っかかる点はあるものの、模倣犯探しを純粋に楽しむことのできる作品だと思う。 ネタバレ被害に遭いやすい作品でもあるので、早めに読んでおくことをオススメする。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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探偵の経験を持つ主人公が、悪徳商法の調査を頼まれた。悪徳商法どころか、保険金殺人の可能性があるのだという。同じ頃、女性が自殺しようとしているところに鉢合わせ、彼女を救う羽目に。事件に恋愛に、自称「何でもやってやろう屋」が挑む。
一部とはいえネタバレを食らったことで、手を出せていなかった作品。 思いきって読んでみたら、エピソードも仕掛けも多く、意外と楽しめた。 大きく分けて3つのストーリーが同時に展開していく複雑な構成なので、他の本と並行して読んだり、毎日数ページずつ読んだりするよりも、時間をとってじっくり読み進めた方がいいかもしれない。 気まぐれにあっちこっち話が飛ぶような感じで、ある意味飽きずに読んでいける。 本筋の事件の他にも推理を楽しめる事件があったし、主人公の恋愛観や人生観も興味深かった。 少々アンフェアな部分があること、詰め込みすぎな印象があることから、点数をつけるとあまり高くはならないが、細かいことは気にせず、エンターテイメントとして楽しむのが良さそうだ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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休職中の刑事のもとへ、親戚の青年が失踪した婚約者を探して欲しいと訪ねてくる。彼女に自己破産経験があると判明してすぐに、家も仕事も捨てて消え去ってしまったのだ。なぜそこまで徹底的に逃げるのだろうか……
初めて読んだのは中学生の頃で、そのときも面白く感じてはいたものの、やはり登場人物の設定やそれぞれの場面での感情など、よく捉えられていなかったように思う。 ふと、結末は覚えているけれど、途中経過を忘れたなあと思って、読み返してみた。 20年以上前に書かれた話なのでピンとこない描写もあるが、それでもクレジットカードやローンの怖さをリアルに感じられる。 刑事ドラマっぽさがあるストーリーで、主人公が地道な調査と推理を重ね、少しずつ真実が明らかになっていく。派手さはなく、良くも悪くも堅実な展開と言えるだろう。ぱっと盛り上がる展開が好きな人には物足りないかもしれない。 テーマになっているのはクレジットカード、ローンなどの「消費者金融」。 この「消費者金融」については、本当は誰もがきちんと学び、正しい知識を身につけなければならないだろう。 とは言え、実際には有名なタレントがカッコよくカードを使うCMがあったり、支払いは分割が当たり前かのような売り方をしていたりと、「借金」であることが直接的に感じられない世の中になっているようにも思う。 学校の授業で取り入れるという方向にも動いているようだが、やはり勉強となると堅苦しく感じてしまうものだ。 そう考えると、この『火車』ならば、ミステリとして楽しみながら、消費者金融の闇を知る良いきっかけになるのではないだろうか。 学べるミステリとしてオススメしたい作品だ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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詐欺師の中年二人は、それぞれ暗い過去を抱えていた。ひょんなことからそこへ少女が加わり、更に増えて結局5人と1匹の不思議な生活が始まった。平穏な毎日を手に入れるため、彼らは驚きの計画を実行する。
オッサン二人にあまり惹かれず、最初だけ読んで放置してしまっていた本だった。 最近また続きを読み進めていたのだが、少女が登場してからは展開も速くなり、面白い方向に転がりそうだぞと中盤からは夢中になって読めた。 ところどころで登場する詐欺の手口もなかなか見事で、なるほどなあと感心してしまう場面もあった。 詐欺と借金が題材で、登場人物達は様々な事情を抱えているのだけれど、主人公の語り口が軽いせいか、そこまで暗い雰囲気はない。 「謎を探って推理していく」というザ・ミステリな形式ではないが、エンターテイメントとして「次はどんな展開になるのか?」とわくわくしながら読んでいける作品。 最後にはオッサン二人も好きになっていた。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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江戸川乱歩賞を受賞した、薬丸岳のデビュー作。審査員の満場一致で決まったそうだ。
生後5か月の娘の目の前で、主人公の妻は殺された。犯人は13歳の少年達だったため、何の刑も受けずに済んでしまっている。 そんな、殺してやりたいほど憎んでいた相手が、主人公の職場の近くで殺された。主人公は殺人事件の容疑者になりつつも、かつての犯人である少年達があれからどのように過ごしていたのかを調べ始める。 評判が良いのは聞いていたが、「少年犯罪」という重たいテーマに二の足を踏んでいた。実際に読んでみると確かに重たさはあったが、登場人物達の心情や言動に自然と共感できる読みやすい文章で、すっと読み切ることができた。 それでいて「少年犯罪」というテーマに対してはきちんと真正面から向き合っている。事件そのものだけでなく、被害者遺族の立場や、加害者の更生の過程といった、様々な視点から「少年犯罪」を見つめ、中途半端な精神論やありきたりな一般論に留まらない決着を見せている。 実を言うと、私は社会派ミステリがさほど好みでないのだけれど、『天使のナイフ』は社会派なテーマを扱いつつも、きちんとミステリとしての面白さも兼ね備えているところが気に入った(高野和明の『13階段』が好きな人には合いそうだ)。 堅苦しいイメージはあるが、エンターテイメントとして読むことができる小説だと思う。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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謎を解かずにはいられない男子高校生が出会ったのは、全身白ずくめで一言もしゃべらない、不思議な女子生徒。
ふとしたきっかけで彼女に触れたら、世界が暗転し、「天使」が支配する奇妙な空間へひきずりこまれた! 空間から脱出するには、天使の問う謎の「状況」を解明しなくてはいけない―― 「ウミガメのスープ」に代表される水平思考クイズとは、簡単に言えば「出題者が謎を含む問題を出題し、参加者がYES/NOで答えられる質問を重ねることで、真実を推理するゲーム」である。一発で答えを導くのではなく、質問・回答のやりとりがあるのが特徴だ。 『ラテラル』では白ずくめの謎の少女に触れると、水平思考クイズを解かなくてはいけない状況に陥るという設定になっている。作者オリジナルの水平思考クイズがいくつか登場し、本を読みながら自分でもクイズの真相を推理していくことができる。 この「ウミガメのスープ」を題材にするアイディアが面白い。ゲームの進め方や、質問の仕方など、物語の中でさりげなく説明されていくため、水平思考クイズを知らない人でもルールを確認しながら読み進めることができる。作者のウミガメ愛が伝わってくる。(作者は昔、インターネット上でウミガメのスープを遊んでいたようだ) 作中作として登場する水平思考クイズの他、もちろん物語全体を通して存在する謎も楽しめる。 ただし、文章表現やキャラクタはいまひとつ。いわゆるライトノベルっぽさがあって、苦手な人もいるだろう。 生かし切れていない設定も多く(続編を書くつもりで残している部分が多いのだろうか?)、プロットも惜しいなあという印象。 「ウミガメのスープ」に興味がある人、どんなものか知りたいと思っている人にはオススメだ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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十角形の不思議な館がある孤島へ、ミステリ研究会のメンバー7人がやってきた。半年前に殺人事件が起きたその島で、1週間を過ごすつもりだ。
一方、殺されたはずの島の主人の名前で送られた怪文書を、本土に残っていた会員が受け取り、その謎を追って調査を始める。 書かれたのが80年代ということで、時代が違うなと感じてしまう。しかし、文章自体は読みやすく、ストーリー展開も淀みないので、読み始めてしまえばすんなり最後まで読み切ってしまえるだろう。 次々に事件が起こる「島」と、謎の手紙の真相を探っていく「本土」の2つの舞台が交互に展開され、今度は何が起こるのだろうとわくわくしながら読めた。 そこに謎があり、その謎に対して解決を試みるという、昔ながらのミステリ的展開――これぞミステリ、と思わせてくれる作品だ。 登場人物の名前については、正直とっつきにくい印象を受けたが、そこでこの作品を食わず嫌いしてしまうのはとても勿体ない。 ただ、あまりに有名な作品ゆえ、ネタバレ情報が多いのが難点だ。未読の方は、もうこれ以上の情報は仕入れず、本書を読むことをオススメする。 しいて言えば、『十角館の殺人』を読む前にアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を読んでおくと、より楽しめると思う。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1939年に発表された、アガサ・クリスティの代表作。
10人の老若男女が孤島に招待されたが、招待状の送り主は姿を現さない。やがて招待客は一人、また一人と何者かに殺されていく……。 70年以上前に書かれた海外作品であるため、作中の時代背景は古く、最初はなかなかこの世界観に入り込めないかもしれない。 しかし、しばらく読んでいけば、次々と起こる殺人事件、疑心暗鬼に陥る登場人物達、テンポよく進んでいく物語にどんどん惹かれていく。 良くも悪くもシンプルなつくりなので、ミステリを読み慣れている人には物足りないかもしれないが、ミステリ初心者には安心しておすすめできる作品だ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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