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ニホンブンレツ



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ニホンブンレツの評価: 2.28/5点 レビュー 61件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点2.28pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全61件 61~61 4/4ページ
No.1:
(1pt)

こんな小説みたことない(え?)

これは凄まじい作品です。ある意味小説を超えています。
日本が東西に分裂するというテーマ、仮想戦記などではありふれた題材ですが、この作者がどう料理するか興味がありました。
どうやってこのありがちだが非現実的な、日本が東西分裂するという状況に説得力を持たせるか。
まさに作者の腕の見せ所でしょう。
従来の作品は、その点に色々な工夫をこらしつつも、第二次大戦後、米ソ両国に分割占領されたといった仮想史によるパラレルワールドを扱う例が多かったように思います。
現実世界における分断国家として、朝鮮半島やドイツの実例もありますからね。
そうして設定した架空状況の下、同じ日本人同士が争いあう悲劇と、一つの民族として再統一を求める人々がドラマを生む、そんなパターンが日本人の心をひきつけるのでしょう。

さて、近年、「リアル鬼ごっこ」を始めとする話題作を次々に上梓する作者 山田 悠介はどんな設定で、東西日本を分裂させたのか。

一読して呆然。

これは新しいです。凡百の先行作品など目じゃないです。新しすぎます。
見てみましょう。

・もともと関東人は図々しい関西人が、関西人はスカした東京人が嫌いだった。
・東京都知事が関西人を馬鹿にする発言を行う。
・両者の感情が険悪になり、大阪府知事が過激派に暗殺される。

ここまでで噴き出したあなた。さあ、まだ驚いてはいけませんよ!!(笑)
ちなみにこの作者、別にギャグ小説やユーモア小説を書いているわけじゃありません。あくまで大真面目です。

・アンチ関東の機運が盛り上がり、反東京の大阪府知事当選。
・府知事は鉄道、航空機などの公共交通機関を停止。西日本の独立を宣言。
・戒厳令発令、東西にらみ合い状態に。
・万里の長城のような壁が東西の境に築かれ、分断状態は世界も追認。

すげーーー、本当に日本列島が東西分裂しちゃったよーー。なるほどねー、こりゃ分裂するよなー(棒読み)

って、小学生の妄想じゃないんだから(爆笑)
そもそも、府知事には西日本全土やJR・航空会社に対する命令権などこれっぽっちもないはずですが?
いったいどんな法律(知事だから条例か?)を根拠にそんな命令出してるの?
日本は“法治国家”なのですが。

「知事はその地方で一番偉い人だから、何でも命令できるんだぞー!」(注・できません)という作者の得意げな表情が思い浮かぶようです。
すみません、小学生の妄想はやっぱり失礼でした。
いまどき、小学生でもこんなこと考えないでしょう。小学生の皆さん、本当にすみません。

しかも東西にらみ合いって西側は反乱を起こしているのだが、その武力はどこから持ってきたというのか(笑)
日本を東西に分断する壁なんてあっさり作れるわけがないだろうに。

まあ、その後一応徴兵制に移行するための特別法みたいなのを制定しているようなんですが、それが全然リアリティを増すためには役に立ってない!
何しろ「東日本首相」が法律を公布したりしてますからね。
西に反乱独立された側の中央政府が、自分で正式名称として「東日本」を名乗るかね?
西ドイツ、東ドイツも、北朝鮮もすべて通称・他称であり、自らが全土を代表する唯一の正統政府との立場から、西・東などと名乗ることはありませんでした。
東日本と名乗った時点で、西の存在を正統なものと認めることになってしまうのですが、作者はそんなことも分からないのでしょうか。

とまあこんな穴だらけな状況設定を、この作者はネタではなく、大真面目に「小説」にしてしまいました。
さすが、1000年後の新幹線が走る王国日本で、「王様」が自分と同じ佐藤姓の国民を追いかけっこで殺させる(一体何を言っているのか皆さんよく分からないでしょうが僕にもさっぱりわかりません(笑))小説でデビューした作者だけのことはあります。

作者はある意味、無垢すぎる人で、権力者がどのように権力を行使するのかとか(「偉い人」の命令なら他人は何でも従わなければならないわけではない。公権力は法律によって行使される)、中央政府と地方政府の関係とか、まともな大人なら身につけていて然るべき常識的な社会の仕組みを知らずに大人になった人と想像します。
そんな人が、自分の考えたフィクションを商業作品として出版し、それが現実に売れてしまっている。
まさにメイク・ミラクルなのです。日本列島東西分裂なんかより、よっぽどありえない奇跡です。
日本はなんと平和で豊かな国なのでしょう。
日本人は全力を挙げて、この作品を買い支え、この天然記念物的小説家を保護するべきでしょう(笑)

面白いフィクションというのは巧みに練り上げられた虚構の上になりたつので、一般常識も知識も想像力も構成力も、ないないづくしの素人が小説家を名乗っても面白いものが作れるわけがないです。作者がデビュー以来一貫して勘違いしているように、およそあり得そうもない突拍子もない出鱈目を書くのがフィクションのあるべき姿ではありません。突拍子もない発想であっても、もっともらしい嘘として練り上げ、本当にこういうことがあるかもねと唸らせてくれるのが良質なフィクションです。

上記のとおり、この作品は、図らずも笑わせてくれるファニーな作品にはなってしまっていますが、こんなものを平然と出版する出版社と編集者には書に係わる職業人としてのプライドがないのでしょうか?
最初から洋泉社の「トンデモ本の世界」狙いなんじゃないかとさえ思えてくる作品です。
【文庫】 ニホンブンレツ (文芸社文庫)Amazon書評・レビュー:【文庫】 ニホンブンレツ (文芸社文庫)より
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