(短編集)

盗む男 ミステリ短篇選

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盗む男 ミステリ短篇選の評価:

5.00/5点 レビュー 2件。 - ランク

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全2件 1〜2 1/1ページ
No.2
(5pt)

ええ、唐来参和という男はね、酒に酔うと、他人の意見の逆を行く癖があるんですよ

『盗む男――ミステリ短篇選』(井上ひさし著、井上恒編、中公文庫)に収められている『唐来参和』は、なぜ、これまで、この井上作品に気づかなったのだろうと悔しくなるほど、魅力的な短篇小説です。

時代は蔦谷重三郎が活躍した江戸中期~後期。主人公は波瀾万丈の生涯を送った戯作者・狂歌師の唐来参和(とうらいさんわ)。登場人物たちは、蔦重の他に平賀源内、棟上高見、太田蜀山人、山東京伝、雷電為右衛門、志水燕十――という豪華な顔ぶれ。そして、語り手が、参和に二度も女郎屋に売り飛ばされた女房だっていうんだから、面白くないわけがない!

しかも、この参和、どの道でも一流になるほどの勉強家だが、酒が入るとかっっとなって、何事にも、他人から言われたことの逆をやってしまう天の邪鬼ときているのだから、面白さもここに極まれり!

「ええ、源蔵(=参和)という男はね、酒に酔うと、他人の意見の逆を行く癖があるんですよ。反対癖。あべこべ。ひっくり返し。逆立ち。とにかく、逆の方角へ行っちまうので」。

「あの参和の趣向というものはほとんどが『逆』、『天邪鬼』、『あべこべ』、『反対癖』なんですよ」。

参和の決して幸せではない晩年まで描きながら、その生き方に共感を寄せている井上ひさしの思いが伝わってきます。

本書の巻末に収められている講演録『清張文学 魅力のすべて』には、井上の松本清張愛が溢れています。井上が大好きという清張の短篇『くるま宿』を無性に読みたくなってしまいました。「清張さんの短篇の作法というか、何かが、『くるま宿』に全部入って、しかも文章は抑えた、ビシッとした文章だし、清張さんの魅力というのは全部、この『くるま宿』に入っているような気がするんです」。
盗む男-ミステリ短篇選 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 盗む男-ミステリ短篇選 (中公文庫)より
4122077400
No.1
(5pt)

ミステリ通もそうでない人も

そもそもの作家デビューから、井上ひさしの作品は「謎の提示とその種あかし」であった。それを笑いにつつみこんだ。ごくごく初期の「モッキンポット師もの」(ブラウン神父のパロディだという)の『ドラ王女の失踪』から、蔦重まで登場する大どんでんがえし『唐来参和』に至るまで、本人が楽しく書いているのがよくわかる。 
 シャーロック・ホームズやブラウン神父が好きで、その方法論から小説の書き方を学んだということだろう。二人について書いたエッセイが併録されているのがありがたい。普通のミステリに飽き足らなくなった人からミステリ初心者まで、愉しみかたはいろいろ。
盗む男-ミステリ短篇選 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 盗む男-ミステリ短篇選 (中公文庫)より
4122077400