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(短編集)
大奥づとめ
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大奥づとめの評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.48pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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| 「大奥」と言えば徳川将軍の寵愛を受ける女たちの華やかさとその裏にあるドロドロした女の足の引っ張り合いみたいな非日常的な側面ばかりが強調される世界だけれども、当然ながらその世界を営むのが人間である以上「日常生活」というのは切り離せない部分。 本作は時代劇や大河ドラマを通じて世に流布する大奥の光が当たっている部分から視点をずらし、これまであまり描かれる事の無かった大奥の日常を支える為に額に汗して働く女性たちにスポットライトを当てた、いわば「お仕事小説」なのである。 舞台は化政年間、一橋家をバックとする将軍・家斉が政敵を退け我が世の春を謳歌し、後世にも有名な「子作り政治」に力を入れていた=大奥という組織が膨れ上がっていった時代。当然ながら大奥が肥大すれば肥大するほど、求められる労働力も増え大奥へ上がる女性も増えるのが道理。本作は様々な身分からそれぞれの理由を抱えて女だけの世界に飛び込んできた女性の群像を連作短編形式で描いている。 上で「お仕事小説」と申し上げたが作中に登場するお仕事は実に多岐に渡っている。祐筆(文書係)、呉服の間(衣装係)、御半下(清掃や力仕事など雑用係)、表使(幕府役人相手の交渉役)、御仲居(炊事係)と頭脳労働から肉体労働まで何でもあり。 当然ながら各章で主役を務める女性たちの出自も様々。実務担当だけにお姫様育ちの女性は少なく、役の無い旗本や御家人=御目見以下(将軍様に謁見できない身分)、中には多摩の富農であったり、踊りのお師匠さんまでいらっしゃる。そんな彼女たちに共通しているのは「生きづらさ」を抱えている点かと。 男勝りの性格なのに男尊女卑丸出しな許嫁を紹介されたり、母親に対する姑のいびりの煽りでファッションセンスを身に着ける事が出来なかったり、人一倍身体が大きく揶揄いのタネにされたり、容姿の美醜で生き方を左右されたりと今の日本社会でも同じ様な悩みを抱えている女性が幾らでもいそうな「女性ならではのしんどさ」が彼女たちには圧し掛かっている。 女は男性の後ろを黙って歩くべきだ、女性であれば着飾るセンスぐらい身に着けて当たり前だ、男と見紛う様なデカい図体など恥ずかしい、男に言い寄られても隙を見せる方が悪い、醜女が男にモテようなど浅ましい……などと意味も無く押し付けられる物の多さに窒息しそうになっている女性が多いのは今も昔も大して変わらない。 そんな彼女たちが望むのは女が才覚でもって一人でも生きていける道、ただそれだけなのである。当然ながら同じ女性であってもそんな彼女たちの抱えた苦悩をすぐに理解してくれる相手はそう多い筈も無く、彼女たちは孤独に陥ってるのだが、それでも大奥という場にはチャンスが転がっている。それは用意されたポジションの多様性であったり、ロールモデルとなる先輩女性の存在だったりする。 外の世界で押し付けられる「女らしさ」に潰されそうになっていた女性たちが、自分の適職といえる仕事に巡り合ったり、あるいは大奥という独特な世界で長く働き続けてきた先輩女中たちの導きによって「自分の生きる道」を見出す……まさに女性の自立を描いた物語であり現代人である読者にも十分に共感可能な物語として読める仕立てになっている。 ただ、文章の方にもう一工夫欲しかったというのが正直な所。物語の方は基本的に「私」の一人語りで進行するのだけど、女性をリアルに描いているせいか語り口調が丁寧で物静かなのは良いけど逆にそれが単調さを感じさせる要因にもなっている。 要するに「キャラ付け」が弱いのである。もちろん極端なキャラ付けに走り過ぎるとライトノベルみたいになっちゃうので注意が必要なのだけど、各章で主役を務める女性に明確な見分けが付く様なひと工夫が欲しかった。語り口調が似すぎているものだから読んでいる間しばしば「あれ?今読んでる章主役はなんて名前だったっけ?」となったのは頂けない。 各章で彼女たちが就いている仕事の中身やストーリー展開で見分けが付くだろうという意見もあるかもしれないが、読者としては登場人物を見分けられるだけのキャラ付けが欲しいというのが正直な所。 「女性の生きづらさ」「仕事を通じての自己発見と自己実現」といった現代的なテーマを大奥を舞台に掘り下げようという意欲的な試みは非常に良いのだけど、大衆娯楽小説として読ませるのであれば読者が楽ちんに読めるひと工夫が欲しいと願うのは贅沢な事なんだろうか? | ||||
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