バベル オックスフォード翻訳家革命秘史
評判
バベル オックスフォード翻訳家革命秘史の評価:
3.70/5点 レビュー 10件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1〜7 1/1ページ
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3.70/5点 レビュー 10件。 C ランク
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ただ、この美点は、同時にこの物語の弱点にも繋がっているのではないか。つまり、作品のメインテーマである帝国主義批判のメッセージが、あまりにも直接的すぎるのだ。物語の芸術性よりもプロパガンダ性が勝っている。だから、小説というより著者の論文を読まされているような気分になってくる。もし、メッセージを、もっと物語の寓意性による展開に委ねていたら、作品世界に、さらに深みが加わったのではないだろうか。
・キャラクターの造形では、4人の若い主人公たちの友情と成長、苦悩の物語がすこぶる魅力的だ。4人の心の動きも生き生きと描かれていて、深く感情移入しながら読んでいた。
帝国主義の不平等に基づくシステムの中で、4人はマイノリティ(人種的マイノリティや女性)であり、圧倒的な現実の力と、それに抗うか体制に順応するかという個人の葛藤が丁寧に描かれる。彼らとは対照的に、支配階級の白人男性は、ひとり残らず極端に醜悪な存在として描かれていて、善悪の対比がやや平板な気もするが、これはおそらく作者の演出意図によるものなのだろう。
・この作品のもうひとつの魅力は、作品全編から立ち上る言語と知性への深い愛情だろう。膨大な脚注や複数言語の引用、語源学や翻訳論の蘊蓄が散りばめられた学術的なディテールに知的好奇心が刺激される。しかし、だからと言って、決して難解な物語ではなく、一気読みしてしまうほどのエンターテインメントに仕上げた作者の力量には驚かされる。
・終盤から結末への展開は、邦題で省略された「暴力の必要性(Necessity of Violence)」という副題を、読者がどのように判断するかで評価が分かれるのかもしれない。著者は、革命に暴力は必然だと考えているようだが、私は、基本的には、非暴力的な手段による変革を支持する。しかし、ある体制そのものが、人々にとって恒常的な苦しみや抑圧を与えている場合、そうした「構造的暴力」に抗するために、物理的な暴力が使われることもやむを得ないとも思う。
・この作品は、19世紀の産業革命の時代を舞台にしているが、現代も、AIによる産業革命への移行期と言えるだろう。これから、AIに職を奪われる人々がたくさん出てくるだろうし、資本主義は行き詰まり、未来は全く見通せない時代だ。その意味で、この作品は、決して過去を舞台にした架空の物語ではなく、まさしく今を描いた物語だと言えると思う。
・一言で評価するなら、『バベル』は、21世紀のポストコロニアル・ファンタジーの傑作だと感じた。
(以上)