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独り祝言
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独り祝言の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.40pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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「政次」、「しほ」の婚礼を祝って、江戸時代の女性名の呼び方や武家女性の名字について、まとめて触れてみたい。 第3話、『おみつとしほの供で政次が金座裏に戻ると、園村幾、佐々木秋代、静谷春奈の三人の女の姿があって、宗五郎が応対していた…(中略)…「私どもは、しほの母親久保田早希の姉と姪にございます。此度、政次さんとしほの祝言のために川越……」 』っての、やっぱり思ったとおりだ。 こちらの作家先生、どうやら、江戸時代のお武家さんの氏姓制度の約束を、現在のような「夫婦同姓」と取り違えておいでのご様子。 明治時代に、フランス民法に倣った現行民法の祖形にあたる法律が施行されるまで、日本も、婚姻法は東アジア世界のうちで、現在の中国、韓国、ベトナムなんかと同様、女性は結婚しても姓が変わらない「夫婦別姓」だったのを、すっかりお忘れ。 源頼朝の妻女は「北条(平)政子」、足利義政の夫人が「日野(藤原)富子」、徳川秀忠の奥方なら「浅井達子(あざいみちこ=お江の方)」って具合でしょ。 この寛政頃だと、第十一代将軍徳川家斉公の正妻(御台さま)は、お大名、薩摩・鹿児島「島津氏」の出だが、徳川将軍家と身分格式の釣合いを整えるため、摂関家「近衛氏」の養女という資格でお嫁入りして、公式には「近衛寔子」を称した。 という次第で、久保田家の子女「幾、秋代、早希」三姉妹は皆「久保田氏」を称し、「春奈」は、母親「久保田秋代」の配偶者で父親の『佐々木(利瑛=諱?)の娘です』と自称するのが通例。譲っても、せいぜい『静谷(理一郎=通名?が配偶者)の家内です』というところまでかな。 現に、本作品中でも、「しほ」の母親は、ちゃんと「久保田早希」、父親は「村上田之助」と、こっちは正確に夫婦別姓で書き分けている。 親戚うちの会話でなら、『園村(振一郎=通名?が配偶者)のお姉さま(久保田幾)』とか、『静谷のご新造さま(佐々木春奈=正しくは「奥様」のはず)』ってな言い方もしたりするけれども、表向き他人様に向かって、武家の妻女が婚家の名字を自分の名字として名乗るなんてことは、明治時代になるまで有り得ないこと。 それと、本シリーズ『鎌倉河岸捕物控』、庶民女性の名前に「お」を付ける、付けないの仕分けが総じて不可解。 会話中、『 「おまえさん、名はなんと言いなさる」、「お鈴です」(『銀のなえし』第4話)』なんて、自分で自分の名前に「お」という敬称を付けて名乗るかねえ。これでは、自分から「佐藤さんです」とか、「山田さんと申します」と、「さん付け」で言うのと一緒。まるで噴飯ものじゃないか。 『そんなわけで小夜、小太郎、子守のおいねの三人が……(『冬の蜉蝣』第2話)』など、雇い主の「永塚小夜」さんなるお武家の女性名のほうは呼び捨てなのに、そのくせ、苗字もない下女の名前には「お」を付けて、こんなの変だと思うセンスって、こちらの作家先生、持ち合わせていないのかなぁ。 これなら、自分の名をご当人が口にするとき以外、全部「お」付きで通しちまうとか。ちゃんと使い分けできないのなら、そのほうが無難だよ。 ピックアップしてみると、作中、豊島屋のお内儀は「とせ」、政次の母親は「いせ」、亮吉のお袋は「せつ」。 か、と思うと、亮吉が一目惚れした長屋娘姉妹は「お菊」「お染」、松坂屋はお姑さんが「おけい」、お上さんは「おえい」、船宿綱定の女将さんは「おふじ」、宗五郎の女房は「おみつ」って。 いったい、どういう基準で「お」という敬称の有無を使い分けているのか、まるで見当がつかない。 女性名の語尾に付く「…子」というのは、たしかに名前の一部で接尾語ではないが、まさかと思うけど、この「お」って接頭語、これも名前の一部と勘違いしてるってことなのかい? なお、大名や諸大夫クラスの高禄旗本の「お姫様」でもない町家のお嫁さんが、「白無垢に綿帽子」なんてあり得ないというイチャモンは、この調子だとキリがなくなりそうなので止めておく。 上つ方でもない庶民の婚礼に、白無垢、綿帽子スタイルが流行りだしたのは、筆者の記憶では、たぶん、昭和の天才少女歌手「美空ひばり」の結婚式からではないかと思う。それまでは裾模様のある黒の振袖に角隠し、凝っても総模様の内掛けを羽織るくらいまでだった。お爺さん、お婆さんなんかの結婚アルバムを見てご覧なさい。 おまけに、本書表紙カバーのイラストときたら、本文中では「綿帽子」とあるのに、「角隠し」姿じゃないか。思わず眼が点になっちゃったよ。 この取っ違えって、作家さんの、それともイラストレーターさんの、どちらさんのチョンボなの? これだから楽しくって止められない『鎌倉河岸捕物控』のアラ探し。 『鎌倉河岸捕物控(14)隠居宗五郎』に続く。 | ||||
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