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快楽
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快楽の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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ロッサノ・ブラッティー が歌い、 キャサリン・ヘプバーンと共演した映画「旅情」の歌である。 『快楽』は、妻子ある中年の骨董屋店主と、独身で同じく中年のアメリカ女性 の甘いラブ・ロマンス・・・のような小説ではない。ゴンドラ、サン・マルコ広場、カフェ・フローリアンなど など、観光名所は物語のシツウェーションにはなっているが、紡ぎ出される話は、人間 の、「業」を追求している。 夏目漱石は『人生』という評論で、人間の意識は「底辺のない三角形のよう なものだ」といっている。それだけ、意識、無意識の世界は、底なしであると いうことだろう。 著者は、心の奥深いところから「業」を掬い上げ、ドロドロとした、人間の 欲望、嫉妬、羨望、食欲(登場人物で健啖家の男がいる。疎外され、ものを 深く考えない人物の象徴)などを表現しようとしている。 作品中の、美しい観光名所やレストランの食事をじっくり楽しんだ、という 読後感はない。 物語は二組の夫婦が中心で、舞台はヴェニスである。解放された「場」で あると思うが、この異国の街は四人の男女にとって、閉鎖された空間である。 中年にさしかかる「榊耀子」(34歳)、夫「慎司」(42歳)と、若い 「小谷芙祐子」(28歳)、夫「徳史」(32歳)である。耀子が物語を リードしている。 作品の冒頭に、物語の過去と暗い未来を耀子が暗示している。「・・・それは 海の奥底からひっそり洩れていく水音のようにも聞こえた」。読者は、注意 深く読み進めると、四人の人物像についてさまざまな伏線に気づき、伏線を 取り返したいように、物語の先を急がせる。 短期間の旅であるが、読者は「男」と「女」の過去の、愛の記憶から始ま り、自己分析、内省、自己嫌悪、愛欲などを「洩れ」聞くことになる。そし て、進展につれて、四人に襲い掛かる奇妙な「闖入者(たとえば、船着き場 の男や現地の少女など)」が現れ、彼らの「虚飾」が剥がされていく。 「愛」のあとに「性」がついていくのか、「性」があるから「愛」が深ま っていくのか。本当の自分とは何か。普通の自分とは何か。本物と偽物の違 いはどこなのか。ヴェニスの観光名所で、その「場」に合った、男女の会話や 心理の応酬がセットされている。 三島由紀夫は、「人は決して告白をなしうるものではない。ただ、稀に、 肉に喰い入った仮面だけがそれを成就する」と書いている。仮面の下に、見 え隠れする「男」と「女」の「業」をこれでもか、と著者は追い求めている。 重く、読み応えのある作品である。再読で「業」を味わってほしい。 | ||||
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美女と美男がそれぞれの美男でも美女でもない配偶者が一緒にイタリアの島へ旅行します。美女と美男はお似合い(だと美女の配偶者は思うの)ですが異国の湿った空気と海の気候が二人にどう作用するでしょうか。四人が類型的だとかリアリティが無いとか言ってはいけません。日常性を離れたところで四人の心と身体になにが起きるか見ようという小説なのですから。そうであっても美女と美男が既知の間という設定は頂けません。既知とする必然性がないから(美女の十九歳の体験という重要なモティフの処理に困るからかも知れませんが)。美男と配偶者の島での挿話が浮世離れしているのに美女とその配偶者の方はいかにもそれらしいのも笑わせます。美女と配偶者がこの先どうなるかは自明ですが、美男組の方はいろいろな可能性があります。続編が書かれるかも知れません。読んでみたいと思います。端正な文章で心地よく読めますが、「撫ぜる」は頂けません。 | ||||
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