オススメ?ダメダメ? 推理小説(ミステリ)について読書管理や感想を書いていく書評サイトです。 はじめての方はこちらからどうぞ。 サイトの要望はこちらからどうぞ。
2026年度雑誌ランキング
会員機能
その他
テスト稼働中自由に遊んでみてください!
【古内一絵】
【この小説が収録されている参考書籍】
【この小説が載っている参考書籍】
キネマトグラフィカの評価:
3.75/5点 レビュー 4件。 - ランク
Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです
平均点3.75pt
絞込み:
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。 未読の方はご注意ください
映画会社の青春、または雇均法世代の女性の生き方
青春賛歌
彼らが入社した30年前の平成元年の映画界はすでに斜陽の気配が濃かったが、シネコンはまだ現れず、映画はデジタルではなく35mmフィルムの時代であった。6人は、映画好きが高じて入社した者、「なんとなく」で入った者、縁故採用の帰国子女、結婚までの腰掛就職等などと入社動機も育った環境も大きく違っていた。会社は6人を持て余し、4人を地方営業へ回した。それでも彼らは仕事に夢を抱きつつ、上司や映画館主のパワハラ、セクハラに耐えながら黙々と働き続けた。そんなある日、4人の力を集中しなければならない事件が起こる。
6人の個性が見事に描き分けられている。仕事の夢も、生き方も、性格も異なるが、直面する現実にもがき苦しむのは同じである。なりたい自分といまの仕事のギャップの大きさに打ちひしがれながらも必死で前を向く。家族との軋轢や上司との衝突もある。辛い仕事が続いても、それを補って余りある喜びが待っていた。読む人は自らの新人時代を思い出して彼らに共感するだろう。作者の古内一絵さんは大映に20年間務め、営業、配給、宣伝、買い付け、製作と担当したという。映画をめぐるディテールが詳細に記され、アンゲロプロス、エイゼンシュテイン、溝口健二、鈴木清順などの名前と作品が随所にでてくる。つまりこの小説は作者の映画人体験を群像ドラマに仕立てたのだろう。
しかし、ラスト近くでその予想が外れたのを知る。この小説の主題は「ジェンダー」だと。作者がもっとも力を入れて書く咲子は、入社30年後にようやく夢であった製作プロデューサーに就いている。しかし、50代になった彼女を待ち受けていたのは…。咲子は雇用均等法以後の総合職採用であったが、社会の意識は法律に追いついておらず、男以上に成績をあげないと女性は認めてもらえなかった。「業界初の女性営業」のプレッシャーに耐えて戦い続けた。女性が男同様に働くことで抱える痛みと苦しみ。それを受け入れて夢をかなえた時に突きつけられた選択は辛いものであった。立ちつくす彼女に手を差し伸べる同期のやさしさに涙した。
現場感覚に満ちたお仕事小説である。迷える新人が読んでも、悩めるベテランが読んでも、仕事の中に自分の夢を見る人には、考えさせられ、励まされる作品である。