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霧こそ闇の
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霧こそ闇のの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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九年少々ぶりの再読。 戦国中期、筒井順興当時の大和が舞台の和物ファンタジー。人妻ヒロインですよ、人妻ヒロイン! 異類婚姻譚がベースのオーソドックスな伝奇小説ですが、家族を愛する狭霧の心情を重視した内容なのでオカルト色やアクション色はかなり薄め。 特殊な能力を持つ人外ではあっても狭霧はそれほど強くなく、悪玉として暗躍する行者や黒幕の外法使い弘光も(呪力の厄介さは別として)扱いはとっても軽くて、退場のあっけなさに唖然茫然。まあ、巨大な悪や因縁の宿敵をやっつけてカタルシスを得るような物語ではありませんからね……。 「神と我とが善。そのほかはおしなべて悪しきもの」といい切る、弘光の論理はまことに秀逸。すると行者の方は、自分が悪いことをやっているという自覚があったのね。 本来は独立した短編だったメディアワークス文庫賞の受賞作(一章)に続きのストーリーを継ぎ足したものでして、あとがきにいわく、公式サイトで一章のみを先行公開、三ヶ月後に続きを書き加えて文庫化したのだとか。すっごいハードなスケジュールだったのではないですか? 一章ではたんなる脇役だった筒井順興の存在がどんどん大きくなっていったり、逆に義伯の存在は後半では持て余し気味だったりで、長編化の苦労がしのばれるのであります。 | ||||
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同レーベルから出ている「南都あやかし帖」、「からくさ図書館来客簿」、既読です。 こちらの作品はかなり雰囲気も毛並みも異なり、ダークさとグロさが濃いです。 表紙イラストから浮かぶイメージとはいい意味で裏切られた感じです。 典医の妻であり異能を持つ狭霧が、自分の本来の姿と力を思い出し、そこから筒井家と越智家との激しい争いに巻き込まれていく、壮大なストーリーでした。 途中、切っても切れない因縁深い行者とのいざこざもあり夫婦間に波風が立ってしまいますが、中盤から後半の展開がテンポよく、ぐいぐい引き込まれていきます。 個人的にはヒロインの夫の義伯よりも、幼少の頃より辛酸をなめながらも執念で筒井城を奪還した順興の方に魅力を感じました。(その勇ましや気概などに) お話の筋は歴史的なものとちょっとした神話がベースになっており、山神の御使いや怪しげな外法を扱う者達も戦に関わってくるので、そういうお話が好きな方にはよいのではないかと思います。 特に第4章「初瀬が原の決闘」と終章「道行き」は壮大でありながらも哀しく、そしてとても美しいです。 できれば、ヒロインが夫と出会い結婚するまでの描写とかも、もっと読んでみたかったです。 相手に後ろめたい部分を隠しつつ、それでも愛情を育んでいった夫婦のことがよく描かれていたので、幼い頃の様子とか、いろいろ読みたかったなーと・・・きっといろいろあっただろうし。 ちょっと変わった和風ファンタジーが好きな方や異類婚が好きな方にも読んでほしい、独特な描写が印象的な作品でした。 | ||||
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天文二年、西暦一五三三年。筒井順興の下に典医として仕える義伯に、ひとりの妻があった。義伯の医術と胆力は稀なものではあったが、その妻・狭霧が持つ見鬼の才は、さらに稀なものだった。普通ならば癒すことができない病であっても、それが物の怪に端を発しているものならば、狭霧はその物の怪を退けることが出来る。そして弱った身体は義伯が癒すことで、筒井順興の深い信頼を得ていた。 しかしその平穏な生活も、順興の末子・力丸が病死したことで一変してしまう。力丸が義伯に祟り、彼は酒におぼれてしまうのだ。そして、彼らの一子・鷲王も死病に罹ってしまう。だが、狭霧には力丸の力が強すぎて祓えない。そんなとき、ひとりの行者が彼女の前に現れ、ある事実を告げる。 戦国乱世のはじまり頃にあって、人間と人間の力を超えたものが、人間の歴史に及ぼしていった影響をひも解く物語。女は平穏を求めながら自らの持つ力が超常ゆえに男に隠そうとし、男はそれを知りながら女を自らの下に留め置き平穏に暮らそうとする。しかしそんな想いも、彼らの力を超えたところで起きる動乱と、それを起こす人間たちの思惑により、押し流されてしまう。 寄り添う夫婦が互いを思うがゆえに離れ離れになり、そしてまたひとつになるという物語を、しっとりと歌い上げている。 | ||||
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新人とは思えない筆力、構成力。 平安時代とか鎌倉時代とか、闇が濃かった時代って、 和風ファンタジーにピッタリだとあらためて気づく。 時代背景もちゃんと調べているのがわかる。 奈良の興福寺の寺領を治める一武将、筒井家。 たぶん、地域の歴史書などに名前が出てくるだけの存在、 そんなマイナーなところを舞台に持ってこれたのは 逆の意味ですごい。 土地勘も時代背景も読者の側にはまっさらなところに、 彼女の筆だけで、すべてが書き込まれていく。 有名な武将は最後の最後に織田信長の名前が出てくるだけ。 それなのに、最後まで飽きさせずぐいぐいと引っ張っていく。 そして、最後、ちょっぴり泣けた。 こういう作品をもっと読みたい! ぜひ、今後も独自路線を走ってほしいと思ってしまう。 とても大変だと思うけれど。 でも、坂本竜馬だって、司馬さんが書くまで世の中には 忘れられた人だったわけだから。 次回作が今から楽しみです。 応援してます。 | ||||
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戦国大名・筒井家へ仕える典医・義伯の妻・狭霧は、夫の他にはその力「物の怪を見る眼」を伏せて、義伯の医術を助けながら、一人息子との睦まじい暮らしを送る。しかし二人はやがて、避けられない宿命の淵へと引かれて行く。 乱世に彩られた筒井家の闇と、呪術を操る宿敵との戦い。明かされる異能の力の理由。淀みなく端正に綴られる物語は、人々に纏い付く因果を無限にも思わせる。 これを読んでふと、上橋菜穂子さんの「狐笛のかなた」を思い出しました。しっかりとした時代小説でありながら、日本土着のファンタジーの雰囲気をも持ち併せる、読み応えのある一冊です。 | ||||
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