愛と幻想のファシズム

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

愛と幻想のファシズムの評価:

4.13/5点 レビュー 107件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.13pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全120件 61〜80 4/6ページ
No.60
(5pt)

弱者こそ

重厚。
伊坂幸太郎「魔王」のレビューで本作を知り、初めて読んだ。
圧巻だった。

村上春樹、伊坂といったベストセラーが今ひとつ心に響かず、自分に問題があるのかと落胆していた。が、村上龍に出会い「自分はこちら側の人間だ!」と感じた。救われた思いである。

暴力的にヒューマニズムを否定する主人公達が、弱者を「淘汰されるべきもの」として切り捨て、独裁へと突き進む物語。
主人公の忌み嫌う「システム」、その象徴として「農耕」が名指しされる。
農耕により食糧の大量かつ安定供給が可能になった結果、ホモサピエンスの大繁栄がもたらされた。これは生ぬるい「弱者をも内包し得る社会」でもある。
農業に限らず、現状維持的な企業、団体、民主主義国家というシステム。これに無自覚・思考停止状態で「安住」する大多数の「弱者」。これらに対する「狩人」の嫌悪感。
そして立ちはだかる、さらに巨大な「狩人」。

思うに「弱者」を「大衆」という言葉に言い換えると、分かりやすいのではないか。

未熟児だったこともあり「弱者」側の視線で生きてきた私は、「自分は淘汰されるべき存在なのではないか」ということを考えていた。小学生の頃の話だ。
そんな自分が40歳を過ぎた今、はっきり言えるのは、
「弱者こそ危機感を持ち、思慮深くなければならない。それでこそ生きる価値がある」
ということ。
逆説的ではあるが、危機意識を持った本当の「弱者」は、意外に強い。

一方で、自らの弱さが見えていない盲目的な「大衆」は、集団で溺死させられたネズミのようになり得る。
本作で筆者は、そんなことを言いたかったのではないか?

二十余年の時を経た今も、全く色あせない渾身の一作。ぜひ、若い人にも読んでもらいたい。
愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)より
4061847406
No.59
(4pt)

良い本でした。

前編に比べて後半はスピード感は上がりながらも淡々と読了。ラストはあぁそこで終わるのねと思いながら、納得しました。最後には破綻してしまうのでしょうが、おそらくこの小説のテーマからは逸れてしまいそうなので。

個人的には、狩猟と農耕を反義語として、また小説の中でも文字通りに受け取り読んでしまうと、主題からは逸れてしまうように感じます。あくまで分かりやすい例えであり、農耕批判をしているのではなく、システム、プライド、自身での決断(本質的な意味で)の有無ではないかと。

システムがシステムを荒廃させてしまう一面もあり、それも人故のこと。機械的なシステムは常に正確ですが、変化に応じて新しいシステムを生み出すのはやはり人間なのでしょう。あくまでツールであるのに、そのツールを使う事や利権、手段と目的を混同していく事は多いモノです。

戦後の日本は、誰もそのシステムについて責任を負うこともなく、またそのシステムになれてしまい、人は考える事さえ放棄してしまう...。もしくは、システムの一部になっていることにさえ、気がつかなくなってしまうのでしょう。

コインロッカーベイビーズは読んだ事はありませんが、あとがきからすると一連の流れがあるようなので読んでみようと思います。
愛と幻想のファシズム(下) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下)より
4062014327
No.58
(4pt)

良い本でした。

前編に比べて後半はスピード感は上がりながらも淡々と読了。ラストはあぁそこで終わるのねと思いながら、納得しました。最後には破綻してしまうのでしょうが、おそらくこの小説のテーマからは逸れてしまいそうなので。

個人的には、狩猟と農耕を反義語として、また小説の中でも文字通りに受け取り読んでしまうと、主題からは逸れてしまうように感じます。あくまで分かりやすい例えであり、農耕批判をしているのではなく、システム、プライド、自身での決断(本質的な意味で)の有無ではないかと。

システムがシステムを荒廃させてしまう一面もあり、それも人故のこと。機械的なシステムは常に正確ですが、変化に応じて新しいシステムを生み出すのはやはり人間なのでしょう。あくまでツールであるのに、そのツールを使う事や利権、手段と目的を混同していく事は多いモノです。

戦後の日本は、誰もそのシステムについて責任を負うこともなく、またそのシステムになれてしまい、人は考える事さえ放棄してしまう...。もしくは、システムの一部になっていることにさえ、気がつかなくなってしまうのでしょう。

コインロッカーベイビーズは読んだ事はありませんが、あとがきからすると一連の流れがあるようなので読んでみようと思います。
愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)より
4061847406
No.57
(4pt)

トウジには憧れる、けれど

政治や経済に関しては無知なので、ウィキを使いながら何とか読破しました。(でも別に細かい知識は無くとも読めます。)読みながら思ったことは、村上龍さんは私(達?)が漠然と考えていて、でも形にできないものを実にうまく表現してくれるな、ということでした。体制への不満、アメリカ追従という日本、流されるだけの国民、プライドの無い人々、彼らへの侮蔑と憎しみ、そして苛立ちが文面から伝わってきました。それらは日本に生きる私が日頃感じていたことでした。反面、感情移入できないのはこの物語が強者(トウジ)の視点で書かれていることです。私の祖父母は農家です。両親も私自身ものその恩恵に与って安らかな人生を歩んできました。トウジ等はその農民を徹底的に軽蔑し攻撃します。それは自分自身を否定されたように感じました。でも、それを差し置いてもこの物語は一読の価値はあると思います。弱者でない方には痛快な読み物となるでしょう。
愛と幻想のファシズム(下) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下)より
4062014327
No.56
(4pt)

トウジには憧れる、けれど

政治や経済に関しては無知なので、ウィキを使いながら何とか読破しました。(でも別に細かい知識は無くとも読めます。)読みながら思ったことは、村上龍さんは私(達?)が漠然と考えていて、でも形にできないものを実にうまく表現してくれるな、ということでした。体制への不満、アメリカ追従という日本、流されるだけの国民、プライドの無い人々、彼らへの侮蔑と憎しみ、そして苛立ちが文面から伝わってきました。それらは日本に生きる私が日頃感じていたことでした。反面、感情移入できないのはこの物語が強者(トウジ)の視点で書かれていることです。私の祖父母は農家です。両親も私自身ものその恩恵に与って安らかな人生を歩んできました。トウジ等はその農民を徹底的に軽蔑し攻撃します。それは自分自身を否定されたように感じました。でも、それを差し置いてもこの物語は一読の価値はあると思います。弱者でない方には痛快な読み物となるでしょう。
愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)より
4061847406
No.55
(5pt)

最高の作品だが・・・

10年以上前、大学生の時代に読みました。
村上龍は『希望の国のエクソダス』をはじめ、予言的な小説を書く事で話題となりましたが、
その先駆けが本作であったと思います。

感想は、「とにかく疲れた」。
情報量が豊富で正確なうえ、それらが物語に乗ることで魅惑的になり、
中だるみすることなく、一気に読むことを強いるような力が本作に宿るため、
読了する頃にはヘトヘトになっていました。
今でももう一度読んでみたいのですが、あの疲労感を思い出すと、
気力・体力が充実した時でないと無理だなと思います。

ちなみに庵野秀明の「エヴァンゲリオン」を好きな方にはお勧めです。
この作品の主人公二人の名前は、エヴァ中のあるキャラの名前にも使われています。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.54
(5pt)

文庫のわりにボリュームはありますが一気に読んでしまいました

上巻以上にスリリングで臨場感もあって
作品のスピードさながらに猛スピードで読みきってしまいました。

職場の人に薦めてもらい読んだのですが、

「コインロッカーベイビーズ」と、なんか雰囲気が似ていて好き

読んでいる途中、職場の人にそんな感想をもらしたところ、
筆者が書くあとがきに驚きのコメントが載っており、思わず、
「コインロッカーベイビーズ」をAmazonで購入してしまいました(苦笑)

他のかたも書かれていらっしゃいますが、
バブル崩壊前に、まるで世界経済の未来を
予想するかのような想像力と取材力には頭があがりません。

現代にも通ずる一冊と推奨させていただきます!!
愛と幻想のファシズム(下) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下)より
4062014327
No.53
(5pt)

文庫のわりにボリュームはありますが一気に読んでしまいました

上巻以上にスリリングで臨場感もあって
作品のスピードさながらに猛スピードで読みきってしまいました。

職場の人に薦めてもらい読んだのですが、

「コインロッカーベイビーズ」と、なんか雰囲気が似ていて好き

読んでいる途中、職場の人にそんな感想をもらしたところ、
筆者が書くあとがきに驚きのコメントが載っており、思わず、
「コインロッカーベイビーズ」をAmazonで購入してしまいました(苦笑)

他のかたも書かれていらっしゃいますが、
バブル崩壊前に、まるで世界経済の未来を
予想するかのような想像力と取材力には頭があがりません。

現代にも通ずる一冊と推奨させていただきます!!
愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)より
4061847406
No.52
(4pt)

下巻への準備は完了!!

如何にも上巻という内容だった。

登場人物の紹介に徹しつつ、
下巻へのお楽しみの種を多数蒔く。

若い人から老人まで
年齢はバラバラだけれども
共通しているのは理想と信念を持ち若々しいこと。

しかし、若さは思わぬつまずきを招くことも・・・。

下巻も、楽しみに読みたいと思います^0^
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.51
(5pt)

最高のエンターテインメント小説

ご都合主義的にストーリーが進行してゆき、ただのハンターがカリスマになるのを不自然に思わせないのはさすがの筆力。
 コミック的な経済小説だが、細部が村上氏のおベンキョーによって強力に補完されているため、すんなりと現実感を感じて読める。
 現実と虚構を入り交じらせてリアリティーを醸しだす手法は海外小説では「ジャッカルの日」などに見られたが、この手のジャンルとしては日本では嚆矢の部類に入るのではないだろうか?
 ありえたかも知れない過去、ありうるかも知れない未来を氏は好んで描く傾向にあるが、その意味でもこの作品は氏にとっても最初の作品であり、また転機でもあったと思う。
 前期作品においてはやはり「ブルー」や「コインロッカー」を引きずっていて、ご本人も自らを「詩人」だと思っていたらしいが、今や「長編作家」であるとし、おベンキョーしては吐き出す大江健三郎的作家になってしまった感がある。
 そして、氏にとってそういったタイプの最初の作品がこれだと思う。
 それは村上氏が、大江氏と同じく社会経験なしに作家になってしまったが故の必然であり、今となっては殊更不自然でもないのだが、そのバイアスが作品にも大いに反映されている。
 この作品でも氏の権力やシステムに対するある種のルサンチマンを嗅ぎとることは容易だが、その独特の英雄待望的傾向や反民主主義思想に対する興味深さをひとまず置くとしてもエンターテインメントとして秀逸であり、とても楽しめる作品である。
 最も作者の分身に近いと思われる副主人公がファシズム体制について行けずに最後に自殺を遂げるところを見ると、案外作者も「民主的」かと安心させられるところもある。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.50
(5pt)

経済人としてのスタート地点となった名作

主人公が、いかにカリスマとなっていったか。そしてどのように日本を、さらに世界のシステムを再編しようとするかを描いている。スケールが大きくて、疾走感があり、わくわくする作品だ。
 主人公の一人称で書かれているのだが、そのために主人公の個性をあまり感じないことが不思議だった。語り手である、ハンターを自認する主人公の描写が乏しくなるのは当然だが、そこに本人が新たなシステムの部品に過ぎないという一種の傀儡性を感じて、皮肉などんでん返しを予想してしまった。だから、平地から駆け上がって休まずに上り詰め、頂上が見えた瞬間で終わってしまうような終わり方に賛否はあるだろうが、私はこの結び方は正解だったと思う。
 「半島を出よ」「ヒュウガ・ウイルス」「五分後の世界」と遡って読んできたのだが、一連のテーマの原点とも言える、既存の社会やそのシステムに対する作者の苛立ちとそれに甘んじている国民への怒りが感じられる、良く研究されて書かれた経済シミュレーション小説だ。
 あとがきにも触れられているが、これこそ村上龍の作家としての転換点にあたる作品なのだろう。経済番組のホストとなる対外的な看板を掲げた明確な第一歩だったのではないだろうか。
 なお、文庫版のあとがきにある、主人公たち3人が「コインロッカー・ベイビーズ」の主人公たちの生まれ変わりである、という言葉もファンとしては嬉しかった。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.49
(4pt)

破廉恥な小説、しかし・・・

内容はまさに”幻想”のファシズムについてです。
およそ30年前に書かれた小説とのことで当たり前ですが
現在と時代背景は異なります。

驚くべきは弱者への差別、ファシズムという命題に堂々と挑んでいることです。
人間という生き物の弱さを鋭く指摘した上で狩猟を至上とし農耕を弱者と
定義しています。システムに拠らなければ生きていけない大衆を
嘲り、容易く操ります。作者は他民族に犯されることを知らず、危機感をもたず
見下されていることにすら気がつかない日本人(=農耕民族)に苛立っているようにも感じました。

はるか上から自分たちを見下し操ろうとする”システム(ザ=セブン)”
を情報操作で自分らと同じ土俵に引きずり下ろす様はまさに現在の
システムの脆弱性を示しているようです。

発想が突拍子も無いこと、物事がうまく行き過ぎること
最も興味のわく政権をとった後の狩猟社の記述がないことが
残念な点かと思います。一方で鈴原冬二は強いリーダーのいないこの国で
(生まれてはいけないが)望まれている存在なのかなと感じました。

正直この小説は読者を選ぶと思います。この本は少数派である
有識層かつ強者の視点から描かれており、(自分も含まれますが)
システムに拠らなければ生きていけない多数派の弱者を卑下する
内容であるからです。しかし抗い難い魅力があることも事実です。
現在我々に落としがたい垢としてつきまとうシステムを破壊し
原始の時代に回帰したいという曖昧な願望が心の奥底に確実に
存在するからです。
愛と幻想のファシズム(下) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下)より
4062014327
No.48
(4pt)

破廉恥な小説、しかし・・・

内容はまさに”幻想”のファシズムについてです。
およそ30年前に書かれた小説とのことで当たり前ですが
現在と時代背景は異なります。

驚くべきは弱者への差別、ファシズムという命題に堂々と挑んでいることです。
人間という生き物の弱さを鋭く指摘した上で狩猟を至上とし農耕を弱者と
定義しています。システムに拠らなければ生きていけない大衆を
嘲り、容易く操ります。作者は他民族に犯されることを知らず、危機感をもたず
見下されていることにすら気がつかない日本人(=農耕民族)に苛立っているようにも感じました。

はるか上から自分たちを見下し操ろうとする”システム(ザ=セブン)”
を情報操作で自分らと同じ土俵に引きずり下ろす様はまさに現在の
システムの脆弱性を示しているようです。

発想が突拍子も無いこと、物事がうまく行き過ぎること
最も興味のわく政権をとった後の狩猟社の記述がないことが
残念な点かと思います。一方で鈴原冬二は強いリーダーのいないこの国で
(生まれてはいけないが)望まれている存在なのかなと感じました。

正直この小説は読者を選ぶと思います。この本は少数派である
有識層かつ強者の視点から描かれており、(自分も含まれますが)
システムに拠らなければ生きていけない多数派の弱者を卑下する
内容であるからです。しかし抗い難い魅力があることも事実です。
現在我々に落としがたい垢としてつきまとうシステムを破壊し
原始の時代に回帰したいという曖昧な願望が心の奥底に確実に
存在するからです。
愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)より
4061847406
No.47
(4pt)

20年前に書かれた30年先の予言

久し振りにダンボールから取り出して目を通してみた。
南米発のデフォルトで米ソが手を取り合い、日本にカリスマが登場する
物語。

書かれたのが1987年だが、現実の歴史は、1991年バブル崩壊、1997年に
アジア金融危機と山一破綻、2002年にITバブル崩壊、2007年にサブプ
ライム問題、というように「システム」の本質的課題を先送りにする
毎に起こる問題の深刻さが増して来るようだ。

主役の鈴原トウジはハンターだ。でも「ハンター」は、今、本家アメ
リカでは、発達障害の文脈で語られることが圧倒的に多いようである。
行きどころは、CIAかNASAくらいなのだろうか。
日本ではどうか。アメリカに追いつく前に「アメリカという巨大な
システム」の崩壊に直面することになるのではないだろうか?

村上龍の勉強量の凄さにはこの作品を読むたびに今でも圧倒される。
でも、彼の本当の凄さは30年先を見通す独特の直観力にこそある
だろう。10年先、いや早くて5年先を見通す手がかりとして、
20年前に書かれたこの本を今一度手に取ってみることを多くの人
にお勧めしたい。

蛇足ながら最後に。「固定客」のいる作家の作品にレビューをつける
のは、小心者の自分には結構勇気が要りました(笑)。
的外れな意見と思うなら、どうか看過下さい。
愛と幻想のファシズム(下) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下)より
4062014327
No.46
(4pt)

20年前に書かれた30年先の予言

久し振りにダンボールから取り出して目を通してみた。
南米発のデフォルトで米ソが手を取り合い、日本にカリスマが登場する
物語。

書かれたのが1987年だが、現実の歴史は、1991年バブル崩壊、1997年に
アジア金融危機と山一破綻、2002年にITバブル崩壊、2007年にサブプ
ライム問題、というように「システム」の本質的課題を先送りにする
毎に起こる問題の深刻さが増して来るようだ。

主役の鈴原トウジはハンターだ。でも「ハンター」は、今、本家アメ
リカでは、発達障害の文脈で語られることが圧倒的に多いようである。
行きどころは、CIAかNASAくらいなのだろうか。
日本ではどうか。アメリカに追いつく前に「アメリカという巨大な
システム」の崩壊に直面することになるのではないだろうか?

村上龍の勉強量の凄さにはこの作品を読むたびに今でも圧倒される。
でも、彼の本当の凄さは30年先を見通す独特の直観力にこそある
だろう。10年先、いや早くて5年先を見通す手がかりとして、
20年前に書かれたこの本を今一度手に取ってみることを多くの人
にお勧めしたい。

蛇足ながら最後に。「固定客」のいる作家の作品にレビューをつける
のは、小心者の自分には結構勇気が要りました(笑)。
的外れな意見と思うなら、どうか看過下さい。
愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)より
4061847406
No.45
(5pt)

恐るべき文学の勝利

久しぶりに本棚にあったこの本を読んでみて,
作者が当時,そして現在も抱えている危機感を,
20年遅れてようやく共有できた気がした。

 いまだにこの小説が80年代前半に書かれたこ
とが信じられない。まるで今の日本を20年後の
歴史家が,当時を思い起こして描いたかのよう
である。

 例えば「グローバリゼーション」というコト
バを使わずに,この現象が正確に描かれるので,
逆に本質がよくわかる気がする。

 「現在」を映し出すように描かれた小説はい
くらでもあるが,誰もみたことのない「未来」
を見てきたように正確に描いたこの小説は恐る
べき文学である。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.44
(5pt)

傑作!お薦めします。

村上龍氏の最高傑作だと思う。
これ程時代を切り取り、日本という国を切り取り、エンターテインメントとしても最高の
文章に落とし込んだ作品は珍しい。
「今」読めば、「今」でしか感じられないモノを感じます。
一度読み始めれば、一気に読み切ってしまう。

兎に角、ご一読をお薦めします。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.43
(5pt)

預言書的な。

ハードカバーが1987年に刊行されていて、何かの雑誌の連載小説だったらしいので、書き始めたのは1985年、プラザ合意の頃であろうか?1990年代を舞台とした近未来小説として書かれているが、時間軸で言うとその先に来てしまった現在にいる今読んでもなんら色あせておらず、それどころかある種の預言書なのではないかと思われるほどのリアリティを持つ。

この小説には現在起こっていること、起こりつつあること、起こるはずも無いけど起こってほしいことなど、さまざまなことが書かれている。実世界と比較するとインターネットや携帯電話などの社会インフラの発展により加速した部分や割愛された部分が多々あるのだが、米国によるグローバルスタンダードなど本質的な部分が言い当てられていることを考えると、バブル崩壊以前にこの小説が書かれていたというのはすごいことだ。

僕が小学生だった1985年と35歳になった2008年で比べると世の中はえらく殺伐として無機質なものになっているように感じている。1985 年当時、うちの両親の世代も、彼らの幼少期と1985年を比べて同じようなことを言っていた記憶がある。経済発展、技術発展の先にあるもの、それらが必要とする合理化の先にあるものは、圧倒的に無機質でつるんとしたものなのではないだろうか。人間が地球の表面にこびりついたつぶつぶのようなものだとすれば、無機質でつるんとした地球には人の存在する余地は無い。つるつるにしていく行為は自分たちに対する排斥行為に当たることになる。深読みすればこの小説は、そんな人の世の向かう先すら示唆してしまっているのではないかと感じられる。

長いですがお時間があればぜひ読んでみて頂きたい。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.42
(5pt)

夢中で読んだ

中学生の頃、夢中で読みました。
バブル期、バブル崩壊の頃の様相を反映しているようですが、今読んでも全く古さを感じません。
古い価値観を破壊して、新しい価値を創造していく事とはこんなにもすさまじいものなのかと、興奮を覚えました。

できれば、自分もこういう改革の当事者であればなぁと淡い夢を抱いたのを覚えています。
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)より
4061847392
No.41
(5pt)

スターリニスト

二週間掛かった。長い。

トウジになるのか
ゼロになるのか

スケールの大きい話。バブル崩壊手前で書かれた作品。

極限状態で、同じ人間関係が保てるか。そういう判断基準もあるんだなぁと思った。

読み方次第で、犯罪者を作り出してしまう作品だと思う。
また数百冊の経済関連書籍を読んだ著者。細かい部分まで徹底して書いている気がする。知識不足でよくわからない。

システムへの反抗というテーマは難しすぎる。わからない。

引き込み度が高い作品。
愛と幻想のファシズム(下) Amazon書評・レビュー: 愛と幻想のファシズム(下)より
4062014327