祝福の園の殺人



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    初公開日(参考)1994年07月
    分類

    長編小説

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    祝福の園の殺人 (講談社文庫)

    1999年07月31日 祝福の園の殺人 (講談社文庫)

    十七世紀イタリア。侯爵モンタルト家別邸の、亡き女主人が丹精込めて造った庭園で男の死体が発見される。つづいて次々と起こる侯爵家に関わる者たちの不可解な死。渦巻く血の輪舞。“呪われた庭”に隠された真実のメッセージとは何だったのか?建築探偵シリーズで大人気の著者が贈る長編幻想ミステリ。 (「BOOK」データベースより)




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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    浪漫風少女漫画的ミステリ

    前作『琥珀の城の殺人』の時代背景が1775年のオーストリアで、今回は1670年のイタリア。またも中世ヨーロッパを舞台にしたミステリである。
    そして舞台は前作が古の塔を抱いた山奥に聳え立つ古城であったの対し、本作では僻地の村に存在する豪奢な庭園。
    登場人物は伝説の美女とまで謳われたエレオノーラの美貌を受け継ぐ美少女エルミオーネと、その婚約者である美丈夫アントーニオ。そして亡きエレオノーラに誘惑され、その妖艶かつ魔女めいた美貌に魅了されながらも、拒絶し続けた現侯爵ジューリオ。その養女で、自分の平凡な容姿と内気な性格に嫌悪を感じる、劣等感の固まりようなチェチーリア。語り手はチェチーリアの侍女で対照的に明るく奔放な娘オルテンシアが務め、探偵役はその家庭教師でありながら、一張羅の擦り切れた黒外衣と踝まであるマントを着込んだ一見風采の上がらぬ青書生グエルチーノと、なんともまあ、細い線で描かれた美麗な絵が目に浮かぶ少女マンガを読んでいるような舞台設定、登場人物設定だ。
    そして探偵役のグエルチーノは上に書いた人物描写からすぐに連想したのは横溝正史の金田一耕助。ルネッサンス文化のゴシック調の舞台設定に典型的な探偵像とこれまた本格ミステリのコードに忠実に則った作品である。

    本書で起きる殺人事件は4つとこれまた非常に多い。そのうち3つが毒殺である。その3つの毒殺で使われるのは作中アコニトゥムと呼ばれるトリカブトである。
    しかし本作では毒殺トリックで主眼になる誰がどのようにどの時に毒を盛ったのかという謎解きについてはあまり言及されない。

    本格ミステリでは殺人事件が起きたときに警察が介入しない条件としていわゆる「嵐の山荘物」と呼ばれる設定がある。つまり自然現象もしくは人為的妨害行為、もしくは関係者達の拠所なき事情によって外部との交通手段、通信手段が絶たれ、閉鎖空間で次々と事件が起き、当事者自身で犯人と殺害方法の謎を解かねばならない設定だ。
    しかし篠田氏は時代設定をまだ警察捜査が成熟していない中世、さらに警察の介入の手を容易に無視できる高貴な階級社会を舞台にしているところが他の本格ミステリと一線を画している。

    しかし逆に云えばこれは警察が行う犯罪捜査のセオリーを完全に無視できるということ。即ち現場の保存や死体の検死、鑑識による指紋やその他証拠の捜索といった一連の作業を取っ払い、当事者達は平気で事故現場を忌まわしいと云って清掃し、死体も片付けてしまう。しかしこれは作者自身が警察捜査に精通していないことを逆説的に露呈してしまっているようで、なんとも素人気分が抜けないように感じられないでもない。

    また本書では『琥珀の城の殺人』でも採られた叙述方法が用いられている。前作ではジョルジュという登場人物の手記を交えて物語が語られたが、本書でも養女の侍女オルテンシアの手記が挿入され、彼女が素人探偵役として事件の整理を行う。

    しかしこの少女マンガ的本格ミステリも2回目であったせいか、読み難さは相変わらずあるにせよ、慣れもあり、以前よりも浸れた。
    最後に明かされる祝福の庭に隠されたメッセージは殺人事件以上の謎解き妙味に満ち、作者が書きたかったテーマがこちらにある事が容易に解る。そしてそれらメッセージの数々は欧州文化の豊かさと欧州人の洒脱さの蓄積であり、こういう薀蓄が好きな私にとっては逆にこの謎解きがあることで救われた思いがした。

    物語全編に陰として存在するエレオノーラが生涯通じて真に愛した相手とはジューリオだったのだが、彼がそんなに愛情を注がれるほど魅力的な人物として描かれていないので、最後に立ち昇るエレオノーラの献身的愛情にいささか違和感を持たざるを得ないのが勿体ない。
    とはいえ、最後にドミノ倒し的に解明される庭園に秘められた彼女のメッセージには胸を打つものがあった。少女マンガ趣味といえばそれまでかもしれないが、私は敢えてこれは欧州人的愛情表現だと理解しよう。

    前作の作者あとがきでもあったが、この特異な舞台設定は単純に作者がこの時代のヨーロッパに造詣が深く、また慣れ親しんだ世界であったからとのこと。
    しかしそれは云い換えれば自分が好きな物を書き散らかしているだけとも云える。
    続く建築探偵シリーズが篠田氏が読者を意識し、寄添った作品群とすれば上に並べた不満は今後解消されていると期待したい。もうしばらくはこの作者の作品を追っていくことにしよう。


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