火の粉

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評判

火の粉の評価:

4.19/5点 レビュー 217件。 A ランク

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平均点4.19pt

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全392件 281〜300 15/20ページ
No.112
(5pt)

一級のサスペンス小説

一言で感想を言えば、非常によく出来た面白い小説であった。

 物語り前半では、よくある嫁姑問題とか、介護、育児、妙に胡散臭い隣人と、少々スケールが小さいのではないか… 等と思いながら読み進めたのだが、所謂、日常的な、何処にでも在りそうな光景を設定する事がこの物語の大きな意味になっていると、読み終えて気づいた。

 ミステリーとしてのストーリーの組み立はよく出来いて、物語にどんどん引き込まれて行く。
 それでも私は、この物語が単なる犯人探しに終始する、謎解きだけに重点を置いた何のテーマも無い推理小説のような気がして、少々結末が不安であった。
 だが、物語の後半を超えた頃から、もはや頁をめくる手を休める事が出来無くなり、一気に読み終えた。

 テーマははっきりと存在した。

 この小説はミステリーとしても、サスペンスとしても非常に秀作だが、作者が表現したかったのは、(人を裁くとは、どういう事なのか?)、(裁判官に求められる資質とは?)それらを表現したかったのではないだろうか。

 普段から何かにつけ、ことなかれ主義(つまり最も、日本の役人に多くみられるタイプで、官僚主義とも)で、家長でありながら家庭内の事すら決断できない人間、それが判事である勲の人格像である。

 つまり、いくら難関と言われる司法試験を通り抜けた優秀な頭脳を持った判事とはいえ、勲のような、ことなかれ主義で決断力の無い人間に死刑事案に当たるような裁判で確固とした判決を決断する事が出来るのであろうか?

 これこそがこの小説のテーマであると思う。

 勲はそれが出来なかった。 彼は被告の無罪を決断したのでは無い、決断できないから、無罪にしたのであろう。

 勲は物語の終盤で自分は本当に正しかったのだろうかと、自分自身を振り返ることになるのである。
 そして、被告を無罪判決にしたことだけで無く、今まで、ことなかれ主義で生きてきた自身の決断力の無さを後悔し、反省したのであろう。

 そして、自分自身に火の粉が振りかぶり、家族の危険を目の前にした時、始めて勲は本気で決断するのである。

 家族を救うために…
 そして今まで、ことなかれ的に自身の保身だけを考えて生き、人を裁いてきた自分自身と決別するために。

 奇しくも現在、日本では裁判員制度が始まっている。
 私は興味本意から、機会があれば是非やってみたいと考えていた。 しかし、人を裁くというのは相当な決断力が要ることで、とても興味本意で出来る事ではないと、思い直すのであった。

 作中で「裁判官の資質は?」という、インタビューに対し、勲は「人が好きであること」と応えたというくだりがあるが、とても、そんな綺麗事では人を裁く事は出来ないと言うことであろう。

「火の粉」は一級のサスペンス小説ではあるが、ヒューマニズムと、我々日本人に誰にでもあてはまり得る要素と可能性を含めた極めて社会的な作品であると想う。

 評価は、そう…

 5点満点中、4.5点といったところであろうか。

 満点に至らなかったのは、武内の人格描写は非常にリアルで、此処まで極端では無いが、『こういう人格を持った人って、自分の周りにも居るよな…』と、ふと思ってしまうくらい説得力と恐怖を感じるのだが、池本夫妻の異常性と人格描写には少々無理が在りすぎるような気がして、今一つリアリティを感じる事が出来なかった事であろうか。


火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.111
(5pt)

一級のサスペンス小説

一言で感想を言えば、非常によく出来た面白い小説であった。

 物語り前半では、よくある嫁姑問題とか、介護、育児、妙に胡散臭い隣人と、少々スケールが小さいのではないか… 等と思いながら読み進めたのだが、所謂、日常的な、何処にでも在りそうな光景を設定する事がこの物語の大きな意味になっていると、読み終えて気づいた。

 ミステリーとしてのストーリーの組み立はよく出来いて、物語にどんどん引き込まれて行く。
 それでも私は、この物語が単なる犯人探しに終始する、謎解きだけに重点を置いた何のテーマも無い推理小説のような気がして、少々結末が不安であった。
 だが、物語の後半を超えた頃から、もはや頁をめくる手を休める事が出来無くなり、一気に読み終えた。

 テーマははっきりと存在した。

 この小説はミステリーとしても、サスペンスとしても非常に秀作だが、作者が表現したかったのは、(人を裁くとは、どういう事なのか?)、(裁判官に求められる資質とは?)それらを表現したかったのではないだろうか。

 普段から何かにつけ、ことなかれ主義(つまり最も、日本の役人に多くみられるタイプで、官僚主義とも)で、家長でありながら家庭内の事すら決断できない人間、それが判事である勲の人格像である。

 つまり、いくら難関と言われる司法試験を通り抜けた優秀な頭脳を持った判事とはいえ、勲のような、ことなかれ主義で決断力の無い人間に死刑事案に当たるような裁判で確固とした判決を決断する事が出来るのであろうか?

 これこそがこの小説のテーマであると思う。

 勲はそれが出来なかった。 彼は被告の無罪を決断したのでは無い、決断できないから、無罪にしたのであろう。

 勲は物語の終盤で自分は本当に正しかったのだろうかと、自分自身を振り返ることになるのである。
 そして、被告を無罪判決にしたことだけで無く、今まで、ことなかれ主義で生きてきた自身の決断力の無さを後悔し、反省したのであろう。

 そして、自分自身に火の粉が振りかぶり、家族の危険を目の前にした時、始めて勲は本気で決断するのである。

 家族を救うために…
 そして今まで、ことなかれ的に自身の保身だけを考えて生き、人を裁いてきた自分自身と決別するために。

 奇しくも現在、日本では裁判員制度が始まっている。
 私は興味本意から、機会があれば是非やってみたいと考えていた。 しかし、人を裁くというのは相当な決断力が要ることで、とても興味本意で出来る事ではないと、思い直すのであった。

 作中で「裁判官の資質は?」という、インタビューに対し、勲は「人が好きであること」と応えたというくだりがあるが、とても、そんな綺麗事では人を裁く事は出来ないと言うことであろう。

「火の粉」は一級のサスペンス小説ではあるが、ヒューマニズムと、我々日本人に誰にでもあてはまり得る要素と可能性を含めた極めて社会的な作品であると想う。

 評価は、そう…

 5点満点中、4.5点といったところであろうか。

 満点に至らなかったのは、武内の人格描写は非常にリアルで、此処まで極端では無いが、『こういう人格を持った人って、自分の周りにも居るよな…』と、ふと思ってしまうくらい説得力と恐怖を感じるのだが、池本夫妻の異常性と人格描写には少々無理が在りすぎるような気がして、今一つリアリティを感じる事が出来なかった事であろうか。
火の粉 (幻冬舎スタンダード) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎スタンダード)より
4344009096
No.110
(5pt)

一級のサスペンス小説

一言で感想を言えば、非常によく出来た面白い小説であった。

 物語り前半では、よくある嫁姑問題とか、介護、育児、妙に胡散臭い隣人と、少々スケールが小さいのではないか… 等と思いながら読み進めたのだが、所謂、日常的な、何処にでも在りそうな光景を設定する事がこの物語の大きな意味になっていると、読み終えて気づいた。

 ミステリーとしてのストーリーの組み立はよく出来いて、物語にどんどん引き込まれて行く。
 それでも私は、この物語が単なる犯人探しに終始する、謎解きだけに重点を置いた何のテーマも無い推理小説のような気がして、少々結末が不安であった。
 だが、物語の後半を超えた頃から、もはや頁をめくる手を休める事が出来無くなり、一気に読み終えた。

 テーマははっきりと存在した。

 この小説はミステリーとしても、サスペンスとしても非常に秀作だが、作者が表現したかったのは、(人を裁くとは、どういう事なのか?)、(裁判官に求められる資質とは?)それらを表現したかったのではないだろうか。

 普段から何かにつけ、ことなかれ主義(つまり最も、日本の役人に多くみられるタイプで、官僚主義とも)で、家長でありながら家庭内の事すら決断できない人間、それが判事である勲の人格像である。

 つまり、いくら難関と言われる司法試験を通り抜けた優秀な頭脳を持った判事とはいえ、勲のような、ことなかれ主義で決断力の無い人間に死刑事案に当たるような裁判で確固とした判決を決断する事が出来るのであろうか?

 これこそがこの小説のテーマであると思う。

 勲はそれが出来なかった。 彼は被告の無罪を決断したのでは無い、決断できないから、無罪にしたのであろう。

 勲は物語の終盤で自分は本当に正しかったのだろうかと、自分自身を振り返ることになるのである。
 そして、被告を無罪判決にしたことだけで無く、今まで、ことなかれ主義で生きてきた自身の決断力の無さを後悔し、反省したのであろう。

 そして、自分自身に火の粉が振りかぶり、家族の危険を目の前にした時、始めて勲は本気で決断するのである。

 家族を救うために…
 そして今まで、ことなかれ的に自身の保身だけを考えて生き、人を裁いてきた自分自身と決別するために。

 奇しくも現在、日本では裁判員制度が始まっている。
 私は興味本意から、機会があれば是非やってみたいと考えていた。 しかし、人を裁くというのは相当な決断力が要ることで、とても興味本意で出来る事ではないと、思い直すのであった。

 作中で「裁判官の資質は?」という、インタビューに対し、勲は「人が好きであること」と応えたというくだりがあるが、とても、そんな綺麗事では人を裁く事は出来ないと言うことであろう。

「火の粉」は一級のサスペンス小説ではあるが、ヒューマニズムと、我々日本人に誰にでもあてはまり得る要素と可能性を含めた極めて社会的な作品であると想う。

 評価は、そう…

 5点満点中、4.5点といったところであろうか。

 満点に至らなかったのは、武内の人格描写は非常にリアルで、此処まで極端では無いが、『こういう人格を持った人って、自分の周りにも居るよな…』と、ふと思ってしまうくらい説得力と恐怖を感じるのだが、池本夫妻の異常性と人格描写には少々無理が在りすぎるような気がして、今一つリアリティを感じる事が出来なかった事であろうか。
火の粉 Amazon書評・レビュー: 火の粉より
4344002938
No.109
(4pt)

サスペンスの傑作

退官した元裁判官宅の隣に、
かつて無罪判決を下した男が引っ越してくるという話。
それから起こる数々の不穏な事件。
隣人の魔の手から家庭を守れるのかというサスペンス。
梶間家の人々が追い詰められていく後半部分は、
迫力があって本当に怖かった。
心理的にじわじわとくる恐怖を感じました。
本のぶ厚さ分の読み応えは十分あったと思います。

火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.108
(4pt)

読み終えた後、毒が残ります。

理屈抜きで怖かった。
何が怖いって、自分なりの常識で向かってくる人程
怖いものはない。

本人はきっと、一生懸命に尽くし、一生懸命に相手が喜ぶと思って
本気で「善意」でやっていることが「過剰」だと気付かない。
受ける側に、少しずつ「負担」という重しを”これでもか”とのしかけてくる。
それを「こんなにやってるのに、何故わからないんだ」
「これだけのことをしてきたのに、裏切りだ」となって行く。

それが、隣人だったら…。
まさにタイトル通り「火の粉」です。
狙いをつけた一家に、静かに忍び寄る悪夢。
「親切で良い人」から「何だか、変な人」ということに気付き始めるあたりから
この本の醍醐味が増してくる。

不可解な出来事や、不可解な人物が登場してきて
読むスピードが早くなる。

この得体のしれない雰囲気に、自分も同化してしまって怖い。

実際、この本を読み終えた夜に、夢を観てしまいました。
まさに悪夢。
起きた時、ホントに「あ…夢か」と胸を撫で下ろしました。

それくらい、毒が心に残ります。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.107
(5pt)

鳥越の話がリアルすぎ

最初は、裁判官の勲同様、プレゼントしたネクタイを着けなかったという理由で一家惨殺するか??
と思っていました。
久しぶりに徹夜して読破してしまうほど、息をつかせぬ展開です。
怪しい奴は犯人じゃない。というミステリーの定石から、途中で竹内と池本のどちらが犯人なのか
さっぱり分からなくなりました。
その疑問は犯人の旧友・鳥越の話で晴れるのですが、その話がもう鳥肌が立つ内容。
毎年誕生日を祝ってくれるとか、関心を引くためにわざと転んで流血するとか、
程度の差こそあれ、そういう奴っているよなぁと納得させられます。
登場人物も個性豊か。2世帯家族の父と息子がだらしなく、母と嫁が聡明という設定が良く練られています。
武内の計算された謀略・・・良くもまぁこんなの考え付くよなぁという思いです。
雫井さんの小説は火の粉が初めてでしたが、これは凄くお勧めです。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.106
(4pt)

じりじりとした気持ち悪さと恐怖を感じる作品

 冤罪を生むことは避けなければならない。
 裁判官として確信を持って無罪判決をくだした男が、隣に越してくる。妙に優しく接する姿に、最初は微笑み、次第に疑念が沸いてくる。
「良い人すぎないか?」
 読み続けていくと、じりじりとした気持ち悪さと恐怖が体に入り込んでくる。
 気分が悪いのに読むのをやめることができない。
 得体のしれない生物が潜む泥水に足を突っ込んで歩き続けているよう苦しい時間が続いていき、ストンと大きな穴に落とされるかのように破裂の一瞬が訪れる。
 読後感は良くないが、良くできた一冊。
火の粉 Amazon書評・レビュー: 火の粉より
4344002938
No.105
(4pt)

じりじりとした気持ち悪さと恐怖を感じる作品

 冤罪を生むことは避けなければならない。
 裁判官として確信を持って無罪判決をくだした男が、隣に越してくる。妙に優しく接する姿に、最初は微笑み、次第に疑念が沸いてくる。
「良い人すぎないか?」
 読み続けていくと、じりじりとした気持ち悪さと恐怖が体に入り込んでくる。
 気分が悪いのに読むのをやめることができない。
 得体のしれない生物が潜む泥水に足を突っ込んで歩き続けているよう苦しい時間が続いていき、ストンと大きな穴に落とされるかのように破裂の一瞬が訪れる。
 読後感は良くないが、良くできた一冊。
火の粉 (幻冬舎スタンダード) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎スタンダード)より
4344009096
No.104
(5pt)

武内みたいな人は、いると思います。

たった一人の、過剰に親切だけれど何故か怪しげな隣人が、段々と隣の
家庭を崩壊に向かわせていくのが、妙に怖くてたまりませんでした。
どこの家庭にも、ちょっとした綻びがあったりするものだと思いますが
そこに、とにかく上手くすーっと入り込んで来てしまう武内。
こんなに怖い人がいたらたまらない・・・と思いつつ凄い勢いで読みま
したが、動機を知った時「こういう人は、いる!いるいる!」と納得して
更に恐ろしくなりました。
個人的には、「武内と付き合えるのは自分くらいだ。」と自負している
楽器屋の鳥越の回想シーンが怖いの何のって。何度も読んでしまいました。
テレビドラマ化された時に「あの鳥越さんが何故出て来ないの?」と
残念でたまりませんでした。
他の方も書いていらっしゃいますが、雫井さんは女性の心理がどうして
こんなに上手く書けるのだろう?と、驚きました。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.103
(5pt)

タイトルが響くんです。

火(面倒なこと)から逃げても、火の粉が降り掛かる。 凄く怖くて怖くて、夕方6時から夜中2時まで一気読みせずにはいられませんでした。こんなに火の粉が怖いなら、火から逃げずに立ち向かう人になろうと思う。何が怖いって、敵味方は変わらないのに、味方をちょっとしたことで疑い、自分の中で敵と確定してしまったこと。こんなことじゃ、冤罪はいくらでも起こり得る。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.102
(4pt)

読むなら休みの前日に

読んでると イライラムシャクシャしてどうにかスカッとさせてほしいから途中では止められません眠たくても絶対夢見悪くなりそうで途中で切り上げられませんあるかも…いるかも…(ここまで極端ではなくても)だからコワイ
火の粉 (幻冬舎スタンダード) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎スタンダード)より
4344009096
No.101
(4pt)

読むなら休みの前日に

読んでると イライラムシャクシャしてどうにかスカッとさせてほしいから途中では止められません眠たくても絶対夢見悪くなりそうで途中で切り上げられませんあるかも…いるかも…(ここまで極端ではなくても)だからコワイ
火の粉 Amazon書評・レビュー: 火の粉より
4344002938
No.100
(5pt)

私の隣人は大丈夫かしら・・・

友人の薦めで彼の作品をはじめて読みました。
殺人事件ものはちょっと〜・・・
なんて思いながら読み始めたら、一気に徹夜して読んでしまうハメになってしまいました。
まず、ストーリーになみがあるわけじゃなく、ジワジワっと押し寄せてくる恐怖感がすごくいい。先へ先へと読みたくなる。
そして登場人物がいいと思う。心理描写がうまいのか、キャラに好感をもてたりイラだったりして物語の中に入り込んでいきました。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.99
(5pt)

読み始めてすぐ

ああこれはテレビ朝日の土曜ワイド劇場で観た作品の原作だと判りました。主人公の雪見さんは原沙知絵さん、その義母は朝丘雪路さん、義父は愛川欣也さん、隣人の武内は村田雄吉さん、他に柳沢慎吾さんらが出演されてました。なので結末まで承知の上読んだのですが、それでも充分楽しめました。作者のほかの作品も読んでみようと思いました。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.98
(4pt)

あまりにも身近でリアル

登場人物が、裁判官を辞めて大学教授になっている一家の主とその妻、その息子は司法試験の浪人で、ある意味主人公はその浪人の嫁、その一人娘と、寝たきりの介護が必要な教授の母、その娘(教授の姉)…という感じの設定で、この一家がある人物のおかげでとんでもないことに巻き込まれ…という話なのだが、設定自体がどこにでもありそうな状態のため、ものすごくリアル。実際にそんな家庭があってそんな事が行われていても不思議ではない。
そもそも発端は、裁判官が一家惨殺の被疑者を「冤罪」だと判断し「無罪」にするシーンから始まる。その晴れて無罪になった元被疑者が偶然その裁判官(をやめて大学教授)の家の隣に引っ越してから、色々とおかしい事が起こり始める。
黒塗りの車が常に監視をしていたり、新聞社の名刺を持った男が聞き込みをしてきたり。当初は無罪だった犯人はやはり何かやっていたのか?と思ったり、一度このような形で世の中に出てしまった人は一生疑われるのです…という本人の悲しい告白があったり。
実際に教授の母親が亡くなったあたりから、変な雰囲気になり、しかしその元被疑者はどんどん過程の中に入ってきて、家族同様の付き合いになり…。
その元被疑者の高校時代からの友人の登場で一気に解決に向かうのだが、最後の最後には思わぬ人が思わぬことを…。
この元被疑者の性格が別に異常というのではなく、少し激しいだけでどこにでもいそうな感じという事で、もう話がリアルになっている。
相当分厚い本ですが、一気に読んでしまいます。それくらい読む人をひきつけれる作者の筆力に感服いたしました。ミステリーではまだ相当いい小説を書いてくれそうです。しばらく注目。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.97
(4pt)

人間の弱さ、脆さ

元裁判官・梶間が退官して購入した一軒家の隣に、
二年前に彼が無罪判決を下した男・武内が越してきた。
この男が現れてから、平和だった梶間家に異変が起きはじめる・・・。
一見、残酷な殺人事件など起こしそうにない武内。
紳士的で温厚な態度の裏には一体何が隠されているのか?
梶間家がだんだんと引き裂かれていく様の恐怖感、
次に何が起こるのかとページを捲る手が止まらない。
登場人物それぞれの心情も非常に上手く書かれており、
特に梶間の妻・尋恵が姑の介護と戦う姿、
息子の嫁・雪見が思い通りにいかない育児に悩む姿が特にリアルで
読みながらヤキモキしてしまった。
そして一番は武内のキャラクター。
彼の異常さにはゾクゾクしますが、やはりこれはありえない話ではないと思う。
人間はこんなにも、弱くて、脆い。
かなりスパイスの効いた1冊なので、日常の合間のいい現実逃避になあるが、
怖いのが苦手な方にはお勧め出来ない。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.96
(5pt)

自分と他者の人格の評価が著しく乖離している状態は一種の狂気を感じます

 人には3つの人格があるといいます。ひとつは他人が認知している人格、そして
自分が認知している人格、もうひとつは普遍的な本当の人格というものです。私
を含めて自分の認知している人格イコール本当の人格だと捕らえがちですが、
これらがクリアに一致する人などいないということも一方の事実としてあるので
はないのでしょうか。
 傍から見ていると、明らかに集団内での規範から逸脱しているにも拘らず、
正しい事をしている(感じている)と信じて行動している人に時々出会います。
また、知らず知らずに自分が逸脱行動をしている事に気付き、怖くなる事もあり
ます。人は暗黙の規範の中で生きているためその規範が曖昧になっているケース
もあるでしょう。このギャップが極端になるとそれは「狂気」といわれます。
 「狂気」は多くの作品で扱われているテーマですが、本作の「狂気」はいった
い誰が狂っているのか?自分は正常なのか?が分からなくなってしまう怖さが、
よく描かれていたと思います。誰の心の中にも狂気の芽を持っており、いつ踏み
外すか分からない。そんな不安定な中、他者と向き合って日常生活を送っている
という現実があり、何も起こらないことがむしろ奇跡に感じられます。人はもう
少し自分が認知している人格に向き合い、内省する必要があるのではないでしょ
うか。それが精神のバランスを保ち、社会的な人格を育てるのだと思います。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.95
(5pt)

女性目線

温厚で善人。人の良いお隣さん武内。しかし限りなく怪しい男。「みんなだまされないで!この人はおかしい」と叫べば叫ぶほど、「おかしいのは自分のほう」の烙印を押されてしまうであろう、もどかしさ。怖いです。
武内のキャラクターは言うまでもないが、彼のことを素直に信頼していく回りの人達の描かれ方が実に細かい。特に物語の進行を担う形となる雪見と、義母。驚くほど女性目線です。
これが私の「初・雫井」。他の作品が楽しみ!
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.94
(5pt)

動機は人それぞれ…

初めて読んだ作者の本が本作でした。正直、初めて聞く作者名でしたし、読み始めはまっったく期待してなかったのですが…読むにつれて、武内という一見良心的な人間に周囲がジワジワと疑惑を抱いていく過程に、思わず後ろを振り向いてしまう程の、恐怖というと大袈裟なくらいの、ゾクッとするものを感じ、あっという間に読み終えてしまいました。え!?それだけの理由で犯罪なんて犯すかな??という程の犯人の動機。けれど、他の登場人物の細やかな心理を描いているからこそ、意外と人間なんて、こんな単純な理由で犯罪をあっけなく犯すのかもな…と考えさせる人の心の複雑さを感じました。個人的には、雪見とその娘まどか、義母の嘉恵のシーンが、同じ女性として相容れるものがありとても好きです。解説にもありましたが、この作者さんは女性の複雑な心理描写がとてもうまいです。意外なラストではありましたが、ホロリとする終わり方で大満足です。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X
No.93
(5pt)

ハマる

通勤電車で毎朝夕読んだのだが、降車駅で栞を挟んで閉じるのを躊躇われるほどハマった。
本当、雫井作品の人物描写は素晴らしい。
それは「魅力あるキャラクターを創出する」という意味ではない。
普通の人々を深く細やかに描くことで、物語世界の魅力が高まるのだ。
また、「異常性格の隣人」というテーマは、実際にある大量殺人犯(既にこの世にはいない)が
同じマンションに住んでいて、接触した(イチャモンを付けられ一方的に恫喝されただけ
だったが)経験のある自分にとって、全く他人事とは思えないリアリティを持って迫ってきた。
他のレビュアの方々も指摘している通り、冷静な頭で考えれば作りこみの甘い部分は多々ある。
ラストがドタバタした感も否めない。
だがしかし、それすらも気にならないくらいドップリ漬かり込んでしまった。
それはやはり、登場人物たちの呼吸が聞こえるかのような、雫井氏の描写力の賜物だろう。
火の粉 (幻冬舎文庫) Amazon書評・レビュー: 火の粉 (幻冬舎文庫)より
434440551X