赤猫異聞

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

赤猫異聞の評価:

4.53/5点 レビュー 40件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.53pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全84件 81〜84 5/5ページ
No.4
(5pt)

お見事!

初代「天切り松」の信奉者です。
あの漆黒の表紙のひんやりとした肌触りを懐かしがって
浅田ファンを自認してきました。
その道中はなかなか厳しく、途中で匙を投げたくなる作風の時期もしばしば。。。
待った甲斐あって今回の作品は待望の浅田節を満喫しました。
江戸前の語り、花ある登場人物、情あり義あり、まさに浅田氏の真骨頂ともいえる場面の連続。
最後はなかなかのどんでん返しで、お約束と知りつつ涙が止まりませんでした。
どなたかのレビューにもありましたが、三人の主人公を分けて三部作とも考えられますが
一挙に堪能する贅沢もありかとおもいます。
なまじのマンネリの危険性は「天切り松」で多少味わいましたから。
憎まれ口はさて置いて久々のお薦めです。
赤猫異聞 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 赤猫異聞 (新潮文庫)より
4101019274
No.3
(5pt)

江戸に咲いた最後の華。華麗な舞台を観終わったよう。

江戸に咲いた最後の華。
混沌とした時代に抗う心と、江戸っ子の情と粋、侍の矜持が切なく魅せる。
浅田ワールド全開の時代小説に酔った。やられた。

維新を迎えて三月。江戸の最後の大火で解き放ちとなった罪人と、不浄役人と貶められていた鍵役同心の昔語り。
それぞれの濃密な生き様と、これしかないと言えるような構成の巧さ。
哀切も華麗さも持った舞台を観終わったような気持ちになれた。
赤猫異聞 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 赤猫異聞 (新潮文庫)より
4101019274
No.2
(5pt)

魅せる、読ませる。そして、泣かせる。

「赤猫」とは江戸の火事、あるいは、火事を理由に囚人を解き放った隠語のこと。
感想はひと言でいえば「シビレました」。浅田節絶好調です。華も実もたっぷり。
おまけに舌がとろけ、目鼻につんとくる甘辛さが、ぐっと詰まっている。

自分は熱心な浅田ファンではないので、全作を読破しているわけではありません
(特に第二次大戦以降が舞台の日本の現代モノは苦手)。けれど、本作の一冊としての
姿かたちと心映えのまとまり、内容と長さのバランス、密度と枠組の程の良さは、
おそらく同じ著者の、あまたの名作・快作と比べても第一級品ではないか。

器量と度胸を兼ね備えた玄人女、偏屈だが男気溢れる博奕打ち、そして、
家も貌も腕も申し分のない旗本…とくれば、この三人もう「浅田次郎一座」に
相応しい名題の面々。愛読者であれば、過去の作の誰それを思い浮かべるはず。
その三人が、明治元年暮れの江戸で起きた火事、という恰好の舞台を得て、
魅せる、読ませる。そして、泣かせる。

一つの「物語」を、複数の登場人物が章ごとに己れの立場から語る形式は、
作家にとって腕の見せ所。もちろん、当代随一の物語作者である浅田氏に、
筆法の乱れも、構成のほころびもあるはずはない。いいやそれどころか、
江戸は小伝馬町とせいぜい浅草周辺と、大川(墨田川)を挟んだ本所界隈の
限られた舞台、ほぼ一夜の寒空の下に凝縮した濃厚華麗な筋立てによって、
浅田節は、ふだんにも増して冴えにさえまくっている。

しかも、登場人物それぞれの章を締めくくる、最後に近い口説は、
オペラのアリアのように耳に心地良い名調子ながら、中身がずしり。
すなわち幕末維新の絵空事、いや、色なき文字の書き割りをとび超えて、
平成日本の苦難、21世紀世界の破綻すら、まちがいなく見据えている。
翻れば、雑誌連載のはじめに大震災があった。物語の進行と軌を一にする
がごとき、世間の迷妄、内外の騒擾は、いよいよ深い…。

もちろん、野暮でこれみよがしな社会風刺は、浅田作品とは無縁。
知ってか知らずか、一読者の深読みを受け流し、一瞬の緊張を強いた
あと、まさに月明りそのもののような心にしみる結末まで、
一字として閑文字はなく、余韻はあっても空隙のない、大充実の傑作。
赤猫異聞 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 赤猫異聞 (新潮文庫)より
4101019274
No.1
(5pt)

控えめに見ても傑作! これぞ時代小説の役割

人気実力ともにトップクラスの大先生の本なので、文庫までジッと待つのが常なのですが、どうしたわけか、今回は単行本で平積みされているのを手に取るなり、レジに差し出してしまった。そして、積ん読本の山は言わずもがな、途中読みの本をもさしおいて読み通してしまった。
傑作です!
『歴史は繰り返す』と言うけど、その真意は『同じ過ちを繰り返さないために歴史を学ばなければならない』という意味と、『歴史を学ばないがために同じ過ちを繰り返してしまう』という二つの意味を包含していると思う。故に、時代小説の役割とは、過去を舞台に現代を、更には未来を描くことであると思う。この小説が史実に基づいているか否か、ボクは承知しておりませんが、この小説に書かれている人の生き様や心は真実だと思います。
 この小説の舞台は明治維新初年の年末。折からの大火の際に、解き放たれた囚人3人と、不浄役人と下に見られていた小役人(牢屋敷の鍵役同心)2人が主要な登場人物。大雑把に趣旨をまとめると……、この5人の目を通し、御一新の『どさくさ』に理想や職分を忘れて金儲けと保身しか考えないお偉いさんと、筋を通して死ぬことと生きることを考える庶民の対比を描いている(繰り返しますが、きわめて大雑把な要約です)。
 既得権益にからめ捕られた既成政党がすべからく信頼できない今の世に、人気を集める新党が醸し出す当世の政治状況は、まさしく「維新」。
 ボク自身は「維新」が良いとも悪いとも言う気はないし、ここがそんな場でないことなのでここは掘り下げませんが……、そんな『どさくさ』の時代だからこそ、浅田氏が今の世にこの作品を問うているような気がします。
 真の国作りとは何か?
 今の日本には何が欠けているのか? 何が必要なのか?
 大きく時代が動きそうな昨今だからこそ、この本を読んで、日本の将来に思いを馳せたいと思います。
赤猫異聞 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 赤猫異聞 (新潮文庫)より
4101019274