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聖者は口を閉ざす
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聖者は口を閉ざすの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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物語の舞台は、NY郊外の低所得者向け団地。ドッラグに暴力に貧困。このどうしようもなく荒んだ街でも子供たちは暮らしている。父親は、ドラッグ中毒で暴力をふるう。母親は、アル中で夕方まで起き出してこない。ただの貧乏とは違う。多くの子供たちが、この社会の最下層に閉じ込められ、もがいているうちに人生の谷底に落ちていく。 主人公レイは、LAでシナリオライターとして成功し、エミー賞の候補にまでなり、故郷の貧民街に戻って来る。一見、凱旋帰国のようだが、レイの心は病んでいる。シナリオライターとしての成功は偶然の産物で、レイには教師をくびになり、堕落して麻薬中毒になり、妻に離婚され、娘を取られ、ほとんど廃人同然の生活をしていたという過去を持つ。 原題の"Samaritan"とは、聖書にでてくる『困っている人に親切な人々』サマリタンのことで、エピグラフ(題辞)にはマタイ福音書にある『人に認められたくてした善行の戒め』の句が描かれている。レイは、自分の心の傷の癒しを求め、現時点での見返りを求め、周りの人々に次々に施しをしていくが、自分のアパートで鈍器で頭を殴られ脳挫傷するという事件に巻き込まれる。 物語の展開自体は、『誰がレイの頭を殴ったのか?』というスリラー小説仕立てで、鈍器で殴られるまでのレイの視点(過去)とそれを捜査する旧友の視点(現在)が章ごとに交差しながら謎が解き明かされていく。しかし、一般の推理小説のように手に汗握るような感覚はない。なぜなら、物語の中心は、レイの心の中の葛藤なのだから。 人物描写は、脇役の人物も含め、心の襞まで微に細にわたり描き込まれている。これにより、アメリカ社会の下層で生きる人々の閉塞感を肌で感じることができる。その一方でストーリー展開の面白さが損なわれている。エンターテメントが読みたいのか、心の叫びが聞きたいのか、どちらが好きかで、この本の評価は分かれるだろう。 欧米社会では『強い自我』を持つことが人間の基本としてあるが、レイの心の弱さぶり(アンチ・ヒーロー)には時として歯がゆさを感じる。 | ||||
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