バイロケーション
評判
バイロケーションの評価:
3.46/5点 レビュー 26件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 21〜26 2/2ページ
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バイロケーションの評価:
3.46/5点 レビュー 26件。 B ランク
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構成上仕方の無い事なんですが秘密主義で煮え切らない主要人物に、読者であ
る私の方にフラストレーションが溜まりました。最後には、「秘密」は明かさ
れる事になるのですが、今度は主人公の「自らを滅ぼしてまでも憎い相手を葬
ろうとする」強情さに、苦いモノを感じてしまいました。しかし、これも意図
されたものであり、この話の骨子であるため欠点とは言えないかもしれません。
あくまで私の「良くなかった点」です。個人的感情として救って欲しかったな、
という思いがしました。それと、おそらく「己の不確かさ」に恐怖を感じない
人には、まったく怖くない内容ですね。
◆ 個人的に良かった点
アイデアが素晴らしいと思いましたね。
一方は、たった一つの望みすら叶えられず困窮し、鬱屈し、卑屈になってゆく
者。そして一方は、些細な幸運で困窮を抜けだし、認められ、希望を持つよう
になって行く者。
この二つの「状態」が両立している状態から崩壊するまで、そしてその微妙な
バランスを解きほぐし解決しようとする者の「策」や、解決の方法を示唆する
者達の苦悩と決着。ストーリーは非常によく練られています。
それに加えて「同じように困窮しているはずの者が、自分をさしおいて認めら
れ、幸せになって行くことに対する羨望や憎しみ」など、人である以上抑えが
たい負感情を、ストーリーにうまく噛み合わせています。
「無駄に高いプライド」という主人公の吐露のあたり、愚かさや憐れさ、悲哀
すら感じます。総じて「怖さ」を重視する日本ホラー小説大賞でなかったなら、
大賞として銘打った作品として読んでも満足できるのではないかと思います。
◆ 以下、ネタバレになります
最後、主人公が落ちて行く時「もう一人の私も、私を殺すだろう」と気付くシ
ーンがあります。それは「幸福を半分にする事に耐えられない」という内容が、
全編にわたってちょくちょく出てくるのはここに集約されていると言う事なん
でしょうが、非常に皮肉ですよね。物悲しい。
幸福を半分にする事が許せないから、幸福な自分も惨めな自分を殺すだろう。
しかしそれは「不幸な自分から見た幸福な自分」であって、物語中で出てくる
すでに『差異』になってしまっている。不幸な『私』は、幸福な『私』を理解
する事なく死んでゆく。
逆に、もう一方の『私』は、幸福を分けようとしていますもんね。穿ってみれ
ば、己自身の幸福だけでなく夫の幸福を願ったからでしょう。
『別人』になってからの、この心理的平行線。申し分なく伝わってきました。
「己主体の視野で別の己を許さない」矮小なプライドと頑固さで破滅に向かう
事と、「己以外の視野で別の己を許容」する事。同一人物の『平行線』はほん
の些細な幸運が発端ですが、バイロケーションでない「普通人」もいかように
も変われるんでは? という事も暗示しているのではないでしょうか。
飯塚が言うように。