わたしにも、スターが殺せる
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あらすじ
コロナ禍、SNSで不用意な発言をした2.5次元俳優・翔馬。これまで【M】と名乗り彼を「上げる」記事を書いていた平凡なこたつライター・真生は、その発言を捉えて彼を「叩く」方へ転じる。彼のファンは大反発し、【M】を炎上させる。しかし程なく流れが変わり、コロナウイルスに危機感を抱く世間が、一斉に翔馬を叩き始め、スターは“殺された”。高揚感が抑えられない真生だったが、以前から【M】の正体が真生だと知る何者かに、自宅マンションを晒されたり、脅迫のような郵便物が届けられていた。半同棲の恋人・春希と共に嫌がらせの犯人を突き止めようとする真生だったが、浮かび上がったのは意外な人物だった……!(「BOOK」データベースより)
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評判
わたしにも、スターが殺せるの評価:
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わたしにも、スターが殺せるの総合評価:
8.00/10点 レビュー 2件。
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主人公の「真生」(まい)はフリーのライターで29歳。無署名、1文字あたり1円のバイト料でネット記事を量産する仕事をして三年が経つ。テレビを見ながら、机上にペンを立て、右に倒れれば「アゲる」、すなわち褒める。左に倒れれば「サゲる」、つまり批判する。意見なんて端からないし、求められてもいない。書く方が〝こたつライター〟なら、読む方は「滑り台読者」。まさに暇つぶしで、さらっと読めれば、それでいい。
ところが、そんな法則があてはまらない読者が一部にいる。「アゲる」への賛同は、書き手にとって強力な援軍になる一方で、「サゲる」への過剰反応は取り返しのつかない炎上を招く。地雷を踏む、というやつだ。
真生は三年前、まだ駆け出し時代に、ただ一度だけ、【M】の署名入りで独自の意見を書いたことがあった。大ヒット漫画を原作にした新作舞台の主役が公開でオーディションされ、下馬評を覆して選ばれた素人同然の鈴木翔馬(当時17歳)が原作のファンから袋叩きにあって炎上した際、真生は演劇の知識なんてありもしないのに、翔馬を擁護し、将来の飛躍を予見したのだ。その後、翔馬が活躍し、2・5次元界の新星に一気に躍り出たことで、【M】の記事は「予言の書」として今なお、ファンたちの語り草になるほど。そこにはある秘密があったのだが、真生は半同棲中の恋人・春希に背中を押され、再び翔馬をアゲると決意し、【M】の名で活動を始める。
中盤、物語は2020年の2月からのコロナ禍へ突入し、大きなうねりを見せる。政府による自粛の呼びかけの下、翔馬が出演予定の舞台は延期、真生も書くネタがなくなり、休業同然。さらに二人は世間の荒波に翻弄されてゆく。読者の誰もが、マスクさえ手に入らず、息をひそめるしかなかったあの頃を、あの時の気分を、切実になぞり返すにちがいない。この仕掛けが決定的な鍵を握っている。
作家は自身、演劇関係者の一人として、当時の苦境を生き延び、舞台に「齧りついて」今があるのだと察する。そう、エンタメは必要ないのか、休業の補償は誰かしてくれるのか、という作中の翔馬の痛切な叫びは、作家の自問自答だったのではないか、と想像する。それを敢えて、批判する側の視点から描いてみせたのだ。
終盤、気分は、「正しさ」と言い換えられる。妖怪は超能力を使うから恐ろしいんじゃない。まさに〝鵺〟(ぬえ)、ころころと姿を変えつづけるから怖いのだ。