嘘に抱かれた女
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
嘘に抱かれた女の評価:
8.00/10点 レビュー 1件。 B ランク
嘘に抱かれた女の総合評価:
7.50/10点 レビュー 4件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
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作品の舞台は1990年。1989年ベルリンの壁が崩壊、1990年に東西ドイツが統一されNATOへの加入が承認されます。この1年間のソ連側の危機感と統一に向かう西ドイツ政府の動きが背景になっています。
ワルシャワ条約機構という名前が出てきて、そういえばそんなものもあったなという記憶がよみがえってきました。現在、ロシアのウクライナ侵攻が問題になっていますが、旧ソ連=ロシアが今も昔も変わらず、常に自分たちの勢力圏が侵襲されることを恐れていたことが伺われます。
ゴルバチョフが西側との融和を推進し、互いの兵器削減が進みつつある状況で、それを良しとしない軍やKGBが、アメリカが西ドイツ内に配備しているミサイルを強化しようとしているかどうか、西ドイツ側はそれに対してどのような考えを持っているかなどを探るため、それらに深く関わっている官僚の秘書であるエルケにスパイを差し向けることを決定します。
商品説明ではその方が売れると思ったのか、扇情的にセックス・スパイと書いていますが、主人公のオットー・ライマンはむしろ人の心をつかむプロと言った方がいいでしょう。
原題の「Little Grey Mice」はドイツ語では「グラウエン・モイゼ」、文字通り灰色ネズミですが、エスピオナージュの世界では知られた隠語で”政府機関に勤める孤独な独身女性”を指すそうです。
エルケは若い時、妊娠がわかったとたん恋人に捨てられ、その時さずかった自閉症の娘を施設に預けながら、ずっと独身で公務員として地道に働いてきました。その働きが認められ、首相府で最高機密閲覧の権利を得て閣僚たちと連日顔をあわせるような重要な地位に出世します。
物語のはじめには彼女の容姿に関する描写がほとんどなく、なんとなくギスギスした年配女性を思い浮かべていたのですが、あとになるに従って、まだ38歳でむしろ美しいと言っていいほどなのがわかってきます。過去のトラウマと未婚の母というコンプレックスからどこかおどおどした女性、そしてその自信のなさゆえにか、自分の美しさに気づかず優秀さを鼻にかけることもなく、物柔らかな性格なのが好感が持てます。
エリケにつけ入ろうとするライマン、エリケの姉一家やライマンの妻ユッタ、そしてソ連側幹部の様子が淡々と描かれていきます。このままどうなるのかと思っているところ、物語が急展開するのは最後の100ページくらいになってからです。ネタばれするのであまり書けませんが。
旧ソ連の体制や全体主義国家で生きてきた人たちの心情がよくわからないのですが、ライマンはロシア人ではなく元は東ドイツ諜報機関に所属していたスパイでした。東ドイツが消滅したと同時にそのまま引き続きいわば親玉であるKGBの傘下に入るわけですが、どうしてドイツ人である彼がそのままソ連に忠実に働き続けたのか?
話の流れでは、本人はそのことに疑問を持つわけでもなく、つまりはソ連で受けたスパイ教育の影響があり、そして組織内での成功しか考えていなかったということでしょうか。末端のスパイなど上層部からしたらものの数にも入っていないと思うのですが、どうしてこんな非人間的な仕事につこうと思ったのか・・。
30年も前の時代が背景なのでややわかりにくいですが、スパイ小説はやはり東西冷戦テーマの方が生き生きとしているような気がします。久々に読み応えのあるエスピオナージュものでした。